上 下
31 / 66
第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!

第32話 王位継承最下位の、ダリュシアーンと

しおりを挟む
 跡継ぎ問題とはどこでも火花になる問題のようで、マリリンたちの実家もそうだが、ムギーラ王国の国王の座すらそうだった。
 ダリュシアーンは王位継承者の序列は低いが、今のムギーラ王に近い考えを持ち、野心家ではない。

 他の王位継承者は野心家が多く、城であっても相談役である僕を軽視する者が多かった。

 それどころか、僕のやってきた政策改革を、さも自分の功績のように語る愚か者も多く、城の者たちは僕のしてきた改革と言うのを知っている為、話半分にしか聞いていない。

 そんな中で、ダリュシアーンは唯一「今の理想郷と言われるようになったムギーラ王国は、相談役であるカズマがいてこそ……。感謝さえすれど、悪く言う輩がいるのが恥ずかしい」と言ってのける相手でもあった。
 王位継承者の中では、僕が推すのはその低姿勢ながらも、しっかりと周りを見る目を持っているという事も大きかった。


「非公式出会うのは良いとして、別の王位継承者も黙ってはいないでしょうね」
「全く、ややこしい事だな」
「とはいえ、俺は王になるつもりはありませんし。相談役ならいくらでも」
「その、我を優先する為……だろう?」
「勿論です」


 そう笑顔で言ってのけた僕にマリリンは世紀末覇者の顔を赤らめつつ照れていた。


「国王になれば、第一に優先すべきは国民になります。俺は第一に優先すべきはマリリンであり続けたい」
「カ、カズマッ!」
「とはいえ、非公式でダリュシアーン様に会うのは楽しみですよ。俺が推しているという事は、序列が低かろうが、次期国王として期待しているという結果でもありますから、ムギーラ王も無碍には出来ないでしょう」


 そうなのだ。
 王位継承の序列が低かろうが、国の相談役か推しているというのは大きい。
 それだけで序列が変わってしまう大きなことでもあった。
 これは少々城で荒れそうだと溜息を吐きつつ、今後の諸々の対策も考えないとなと、僕は心で溜息を吐いた。


 そして、ある日城へ向かった際、ムギーラ王に呼ばれて向かった部屋にはダリュシアーンが待っており、深々と頭を下げた。
 マギラーニ宰相も立っており、どうやら伝えていた通り「非公式の会談」をすることになりそうだ。


「こうして話すのは初めてですね。初めましてカズマ、私の名はダリュシアーンと言う」
「初めましてダリュシアーン様」
「うむ、マギラーニ宰相がな。カズマがダリュシアーンを推しているという話を聞いて、王位継承で足の引っ張り合いをしている馬鹿どもが多い中、余りパッとしていなかったダリュシアーンを選んだ理由を聞きたくてのう」


 そう語るムギーラ王に、素直に「下町の様子までシッカリ見られているのはダリュシアーン様くらいでしょう?」と伝えると、ムギーラ王は小さく頷いた。

 その、下々にまで気に掛ける。少しでも、僅かな変化にも敏感に、そして身軽に様子を見に行く様は大事だと思ったことと、「貴族だけではなく、その貴族や国を支える国民を見る、と言うのはとても大きなことです」と伝えると、王は小さく頷いた。


「それもそうじゃな。他の王位継承者は自分の派閥を盤石なモノにする為に、貴族だけのパーティーを開いているばかりで情けない。国民あってのムギーラ王国と言う事を理解しておらんのだ」
「でしょうね、特にナラシュラン様はその気がとても強い」


 ナラシュランと言うのは、王継承第一位で貴族を中心に人気を得ている王位継承者だが、国民は税金を納めるだけの金蔓としか見ておらず……。
 ましてや【レディー・マッスル】から入る金をもっと増やそうと暗躍していることも有名で、カズマは好きでなかったし、浅慮な相手は疲れるとさえ思っていた。


「その点、ダリュシアーン様は貴族、国民とバランスがいい。上手くバランスを取ってうまく立ち回っていると思っています。俺としては好感度が高いですね」
「ふむ……カズマがそこまで言うのなら、ダリュシアーンにはこれから先、更にしっかりとした王位継承の勉強や体験をして貰わねばならないか? ダリュシアーン相手ならば、国の相談役はしてくれるのだろう?」
「恐らくは」


 絶対にするとは言わないのが僕である。
 その可能性はあるというだけでも全く違うのだが、ムギーラ王はダリュシアーンに向き合い「今後、ワシの隣に立ち、そしてワシの仕事を手伝うといい」と、まさに第一王位継承者と言う立場にこの場でしたのだ。
 無論、ダリュシアーンは驚いていたが――。


「今この国でカズマと言う相談役を失うのは何よりの痛手だ。他の継承者がダメだというのなら、少しでも可能性のあるダリュシアーンを、次の王位継承者に持っていくのは必然」
「それは私もそう思います。正式に王位継承者と言う通達を出しますか」
「うむ、カズマ殿もダリュシアーンを支えてやって欲しい」


 そう言うと、僕とほぼ同じ年であるダリュシアーンに向き合い、少々困惑気味だったが、覚悟を決めて「拝命致します」と最大の礼をしたダリュシアーンに、僕もまた、ダリュシアーンをシッカリと見極めようと決めたのだった。

 それから暫くして、ムギーラ王は「次期国王は、ダリュシアーンとする」と明確に伝えたことにより、城の中は更に混乱していく事となる。
 何故ならば――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下と私の攻防戦

えっちゃん
恋愛
彼氏だと思っていた相手にフラれた最悪な日、傷心の佳穂は考古学者の叔父の部屋で不思議な本を見付けた。 開いた本のページに浮き出てきた文字を口にした瞬間、突然背後に現れた男によって襲われてしまう。 恐怖で震える佳穂へ男は告げる。 「どうやら、お前と俺の心臓が繋がってしまったようだ」とー。 不思議な本の力により、異世界から召喚された冷酷無比な竜帝陛下と心臓が繋がってしまい、不本意ながら共に暮らすことになった佳穂。 運命共同体となった、物騒な思考をする見目麗しい竜帝陛下といたって平凡な女子学生。 相反する二人は、徐々に心を通わせていく。 ✱話によって視点が変わります。 ✱以前、掲載していた作品を改稿加筆しました。違う展開になっています。 ✱表紙絵は洋菓子様作です。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

異世界で突然国王さまの伴侶に選ばれて溺愛されています

波木真帆
BL
美しい宝石のついた指輪を握りしめ生まれてくる次代の王は必ずその指輪がぴったりと嵌まる者を伴侶に選ばなければ国に災いが起こる。それがリスティア王国で大切に守られ続けているしきたりだ。 リスティア王国の王子・ルーファスも色鮮やかでこの世に二つとない美しい宝石のついた指輪を握りしめ生まれたが30になった今も生涯の伴侶は現れない。ルーファスの伴侶はいつになったら見つかるのか? 生涯の伴侶を待ち続ける美形な国王さまと突然異世界に連れてこられてしまった美少年大学生のイチャラブハッピーエンド小説です。 R18には※つけます。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

【R18】翡翠の鎖

環名
ファンタジー
ここは異階。六皇家の一角――翠一族、その本流であるウィリデコルヌ家のリーファは、【翠の疫病神】という異名を持つようになった。嫁した相手が不幸に見舞われ続け、ついには命を落としたからだ。だが、その葬儀の夜、喧嘩別れしたと思っていた翠一族当主・ヴェルドライトがリーファを迎えに来た。「貴女は【幸運の運び手】だよ」と言って――…。 ※R18描写あり→*

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない

かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。 女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。 設定ゆるいです。 出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。 ちょいR18には※を付けます。 本番R18には☆つけます。 ※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。 苦手な方はお戻りください。 基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...