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第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!
第26話 やってきたマリリンの弟と、怒りで火柱を上げるマリリンと
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2週間と言う貴重な休みの最後の日、マリリンと一緒に眠っていた僕はジャックの怒声で目が覚めた。
時計を見れば朝の8時……少々寝過ごしてしまったようだ。
外から聞こえるジャックの怒声と共に、違う怒声も聞こえてくる。
どうやらジャックとマリリンの弟――アスランがやってきたようだ。
マギラーニ宰相の声も聞こえるところからして、アスランが我儘を言って連れて来て貰ったのだろうが、一体どうしたと言うのか。
「マリリン、マリリン」
「ンン?」
「外からジャックさんの怒声とアスランの怒声と、狼狽えているマギラーニ宰相の声が聞こえるんだけど」
そう伝えるとマリリンは大きく溜息を吐きながら起き上がった。
何とも覇王らしい色気漂う起き方だったが、眠そうな顔のまま窓へ二人で向かうと、そこからは確かにジャックがアスランを叱りつける声が聞こえてくる。
「カズマはあの怪物より、マルシェリティを妻にするべきだ!!」
「何を言うか! マリリンこそがカズマに相応しいのが何故わからん!」
「解りたくもないね!! マルシェリティの美貌を持ってすれば、我が家は更に栄えるじゃないか! お前たちは追い出された不要者だ! だからカズマを寄こせ!」
「やめないかアスラン! 確かにカズマが次期宰相になればとは言ったが、お前がカズマのレベルまで上がれば、」
「宰相なんてつまらない役職なんてヤダね! ボクは一生遊んで暮らすんだ!」
「「この大バカ者が!!」」
――と言ったやり取りが聞こえてくる。
アスランは現在10歳。マリリン達が追放されてから生まれた子供らしいが、元々の性格も相まって、中々最低な性格をしている。
また、宰相には絶対向かないレベルの人間性で、父親であるマギラーニ宰相は何時も愚痴を零していた。
(あの子も追放されるのかな)
なんて思っていたのは内緒にしておこうと思った。
それにしても、先ほどから名前が出ている【マルシェリティ】とは一体誰の事か。
頭を捻らせていると隣のマリリンが掴んでいた窓の縁がメシリと音をたてて粉々になった。
「マリリン、僕はマリリン以外の妻を持つ気はないよ」
「ああ……分かっている。わかっているとも……だがマルシェリティを出してくるとは、最早これは戦争だな」
「戦争……」
それだけを言うとマリリンは怒りの覇気を出したままピンクのパジャマの上にマントを羽織り、部屋を出て行った。
きっと血の雨が降るだろうと予想される。
取り敢えず、マルシェリティとは誰だと聞きたいのを呑み込んで、僕は慌てて着替えてマリリンの後を追った。
「朝から威勢だけは良いな小僧」
「出たな化け物!」
「お姉様と呼べ!」
「嫌だ!!」
最初のやり取りがコレである。
年の離れた可愛い弟に、未だに「姉」と認識して貰えないとマリリンが小さくボヤいていたのを思い出しつつ様子を伺った。
「ボクは今日、カズマに新しい女を紹介する為にやってきたんだ! 貴様はさっさとカズマと離婚しろ!」
「黙り為さいアスラン! 命が惜しくないのか!」
マギラーニ宰相も必死である。
どうすれば此処まで子育てを間違えられるのか、非常に不思議ではあったが物陰から様子を伺うことにした。
「マルシェリティは僕の従姉だ! その従姉がカズマの為に養女に来ても良いと言っているんだぞ! 化け物はさっさと身を引いてカズマを寄こせ!」
「ふむ……アスランよ、貴様の命我が握っていることは言うまでも無いが……マギラーニ宰相よ。どういう事か説明できるかね?」
「それは」
「お父様がマルシェリティに言ったんだ! カズマの第二夫人、もしくは次期宰相の妻になる気はないかって! そしたらマルシェリティは花が咲き誇らんばかりの笑顔で了承してくれた! だから化け物は邪魔なんだ! わかったか化け物!!」
これは、確かに戦争だな。
僕は他の冒険者達と隠れながら様子を伺った。
暫しの沈黙……そして木々が、そしてアジトが揺れる程の怒気を発しながら、マリリンは顔を上げた。
「良かろう……お前たち二人とマルシェリティは処刑だ」
「マリリン落ち着け!!」
「ムギーラ王国でも屈指の溺愛夫婦、最高の夫婦仲と呼ばれる我とカズマを引き離そうと言うのならば……。そちらが権力を使って引き離そうと言うのであれば!!! 力を持って貴様たちを屠る!!!」
ドゴオオオオオオオ!!!
マリリンに火柱が上がった!!!
熱気で転がるアスランとマギラーニ宰相、そして二人が乗っていたであろう馬車は一気に燃え上がり、馬は嘶きを上げて走り出した。
地獄絵図だった……。
「カズマと私の赤い糸はミスリルにも負けず、超合金にも負けず、ダイヤモンドよりも硬く、オリハルコンすらも一刀両断するものだ!! それを権力程度でねじ伏せられるとでも思ったか!! この戯け共が!!」
「ヒェ!!」
「お父さん!! ボクの髪がチリチリに……っ」
「愛するカズマの為ならば、血の繋がりすら鬱陶しいわ!! 命乞いは済んだだろうなぁ? 今から貴様らの処刑時間だ!!」
「ちょっと待った――!!!」
燃え上がるマリリンの拳が二人に伸びようとしたその時、僕は燃え盛るマリリンに抱き着いた!
こんな時の為の炎耐性付与効果のアクセサリーや服は本当に助かるっ!
「カズマ!」
「止めるんだマリリン!! 君の手が汚い血で染まる事は許さない!」
「カ……カズマッ!」
「愛してるんだマリリン! 愛しているんだ!!!」
マリリンの頬に手を当てながら叫ぶ僕に、マリリンの火柱は徐々に落ち着き……複雑骨折させない様に、優しく抱きしめるマリリン……。
僕もまた、マリリンを強く抱きしめ、その様子を見ていた町の住民やレディー・マッスルの冒険者達は息を呑んだ。
「僕だけのマリリン……君は化け物なんかじゃない……。愛しい僕だけの妻なんだよ」
「カズマ……ッ」
「愛してる……。さぁ、笑って? 僕は君の笑顔が何よりも大好きだ」
その声に、周囲の人々は涙を流し、マリリンもまた男泣きしながらも世紀末覇者の笑みを浮かべた。
そして――僕はそんな世紀末覇者のマリリンの頬にキスを落とす。
途端。
「ファァァァァァアアアアアアアアアアアア!! カズマからの頬っぺたチュー頂きましたぁぁぁあああ!!!」
「おめでとうマリリン!! おめでとう!!!」
一斉に拍手喝采である。
呆然と佇むチリチリになった髪とのアスランと、チリチリになった髪と髭をそのままに呆然とするマギラーニ宰相を放って、周囲は拍手喝采の嵐である!!
鳴りやまない拍手にマリリンは僕を片手で抱き上げ、手を振って周囲の人々からの喝采を受け取っている。
そんな異様なまでの様子を見て、アスランはお漏らしをし、マギラーニ宰相は助かった命に感謝したと同時に、アスランを最悪廃嫡するしかないだろうと決意した。
「この通り、カズマは我に夢中! 切っても切れぬ赤い糸、切れるものなら切ってみるがいい!!」
「クッ」
「安心しなさいマリリン……イイ感じに私は理解出来たよ。いや、理解せねばならなかったのに理解したくなかっただけなのだ……マルシェリティの事はすまなかった。無かった事にする」
「お父さん!?」
「全ては私が間違っていたのだな……。アスラン帰るぞ、お前の今後も決めねばならない」
そう言うとマギラーニ宰相は立ち上がり、アスランの首根っこを掴んで歩き出した。
もう、後ろを振り返る事もない。
きっと腹を括ったのだろう、命の危機を感じてやっと……。
こうして、その日は【カズマに初めてほっぺにチューされた記念日】と称し、レディー・マッスルの所有する店では盛大な祝い事が行われたのは、言う迄もない。
時計を見れば朝の8時……少々寝過ごしてしまったようだ。
外から聞こえるジャックの怒声と共に、違う怒声も聞こえてくる。
どうやらジャックとマリリンの弟――アスランがやってきたようだ。
マギラーニ宰相の声も聞こえるところからして、アスランが我儘を言って連れて来て貰ったのだろうが、一体どうしたと言うのか。
「マリリン、マリリン」
「ンン?」
「外からジャックさんの怒声とアスランの怒声と、狼狽えているマギラーニ宰相の声が聞こえるんだけど」
そう伝えるとマリリンは大きく溜息を吐きながら起き上がった。
何とも覇王らしい色気漂う起き方だったが、眠そうな顔のまま窓へ二人で向かうと、そこからは確かにジャックがアスランを叱りつける声が聞こえてくる。
「カズマはあの怪物より、マルシェリティを妻にするべきだ!!」
「何を言うか! マリリンこそがカズマに相応しいのが何故わからん!」
「解りたくもないね!! マルシェリティの美貌を持ってすれば、我が家は更に栄えるじゃないか! お前たちは追い出された不要者だ! だからカズマを寄こせ!」
「やめないかアスラン! 確かにカズマが次期宰相になればとは言ったが、お前がカズマのレベルまで上がれば、」
「宰相なんてつまらない役職なんてヤダね! ボクは一生遊んで暮らすんだ!」
「「この大バカ者が!!」」
――と言ったやり取りが聞こえてくる。
アスランは現在10歳。マリリン達が追放されてから生まれた子供らしいが、元々の性格も相まって、中々最低な性格をしている。
また、宰相には絶対向かないレベルの人間性で、父親であるマギラーニ宰相は何時も愚痴を零していた。
(あの子も追放されるのかな)
なんて思っていたのは内緒にしておこうと思った。
それにしても、先ほどから名前が出ている【マルシェリティ】とは一体誰の事か。
頭を捻らせていると隣のマリリンが掴んでいた窓の縁がメシリと音をたてて粉々になった。
「マリリン、僕はマリリン以外の妻を持つ気はないよ」
「ああ……分かっている。わかっているとも……だがマルシェリティを出してくるとは、最早これは戦争だな」
「戦争……」
それだけを言うとマリリンは怒りの覇気を出したままピンクのパジャマの上にマントを羽織り、部屋を出て行った。
きっと血の雨が降るだろうと予想される。
取り敢えず、マルシェリティとは誰だと聞きたいのを呑み込んで、僕は慌てて着替えてマリリンの後を追った。
「朝から威勢だけは良いな小僧」
「出たな化け物!」
「お姉様と呼べ!」
「嫌だ!!」
最初のやり取りがコレである。
年の離れた可愛い弟に、未だに「姉」と認識して貰えないとマリリンが小さくボヤいていたのを思い出しつつ様子を伺った。
「ボクは今日、カズマに新しい女を紹介する為にやってきたんだ! 貴様はさっさとカズマと離婚しろ!」
「黙り為さいアスラン! 命が惜しくないのか!」
マギラーニ宰相も必死である。
どうすれば此処まで子育てを間違えられるのか、非常に不思議ではあったが物陰から様子を伺うことにした。
「マルシェリティは僕の従姉だ! その従姉がカズマの為に養女に来ても良いと言っているんだぞ! 化け物はさっさと身を引いてカズマを寄こせ!」
「ふむ……アスランよ、貴様の命我が握っていることは言うまでも無いが……マギラーニ宰相よ。どういう事か説明できるかね?」
「それは」
「お父様がマルシェリティに言ったんだ! カズマの第二夫人、もしくは次期宰相の妻になる気はないかって! そしたらマルシェリティは花が咲き誇らんばかりの笑顔で了承してくれた! だから化け物は邪魔なんだ! わかったか化け物!!」
これは、確かに戦争だな。
僕は他の冒険者達と隠れながら様子を伺った。
暫しの沈黙……そして木々が、そしてアジトが揺れる程の怒気を発しながら、マリリンは顔を上げた。
「良かろう……お前たち二人とマルシェリティは処刑だ」
「マリリン落ち着け!!」
「ムギーラ王国でも屈指の溺愛夫婦、最高の夫婦仲と呼ばれる我とカズマを引き離そうと言うのならば……。そちらが権力を使って引き離そうと言うのであれば!!! 力を持って貴様たちを屠る!!!」
ドゴオオオオオオオ!!!
マリリンに火柱が上がった!!!
熱気で転がるアスランとマギラーニ宰相、そして二人が乗っていたであろう馬車は一気に燃え上がり、馬は嘶きを上げて走り出した。
地獄絵図だった……。
「カズマと私の赤い糸はミスリルにも負けず、超合金にも負けず、ダイヤモンドよりも硬く、オリハルコンすらも一刀両断するものだ!! それを権力程度でねじ伏せられるとでも思ったか!! この戯け共が!!」
「ヒェ!!」
「お父さん!! ボクの髪がチリチリに……っ」
「愛するカズマの為ならば、血の繋がりすら鬱陶しいわ!! 命乞いは済んだだろうなぁ? 今から貴様らの処刑時間だ!!」
「ちょっと待った――!!!」
燃え上がるマリリンの拳が二人に伸びようとしたその時、僕は燃え盛るマリリンに抱き着いた!
こんな時の為の炎耐性付与効果のアクセサリーや服は本当に助かるっ!
「カズマ!」
「止めるんだマリリン!! 君の手が汚い血で染まる事は許さない!」
「カ……カズマッ!」
「愛してるんだマリリン! 愛しているんだ!!!」
マリリンの頬に手を当てながら叫ぶ僕に、マリリンの火柱は徐々に落ち着き……複雑骨折させない様に、優しく抱きしめるマリリン……。
僕もまた、マリリンを強く抱きしめ、その様子を見ていた町の住民やレディー・マッスルの冒険者達は息を呑んだ。
「僕だけのマリリン……君は化け物なんかじゃない……。愛しい僕だけの妻なんだよ」
「カズマ……ッ」
「愛してる……。さぁ、笑って? 僕は君の笑顔が何よりも大好きだ」
その声に、周囲の人々は涙を流し、マリリンもまた男泣きしながらも世紀末覇者の笑みを浮かべた。
そして――僕はそんな世紀末覇者のマリリンの頬にキスを落とす。
途端。
「ファァァァァァアアアアアアアアアアアア!! カズマからの頬っぺたチュー頂きましたぁぁぁあああ!!!」
「おめでとうマリリン!! おめでとう!!!」
一斉に拍手喝采である。
呆然と佇むチリチリになった髪とのアスランと、チリチリになった髪と髭をそのままに呆然とするマギラーニ宰相を放って、周囲は拍手喝采の嵐である!!
鳴りやまない拍手にマリリンは僕を片手で抱き上げ、手を振って周囲の人々からの喝采を受け取っている。
そんな異様なまでの様子を見て、アスランはお漏らしをし、マギラーニ宰相は助かった命に感謝したと同時に、アスランを最悪廃嫡するしかないだろうと決意した。
「この通り、カズマは我に夢中! 切っても切れぬ赤い糸、切れるものなら切ってみるがいい!!」
「クッ」
「安心しなさいマリリン……イイ感じに私は理解出来たよ。いや、理解せねばならなかったのに理解したくなかっただけなのだ……マルシェリティの事はすまなかった。無かった事にする」
「お父さん!?」
「全ては私が間違っていたのだな……。アスラン帰るぞ、お前の今後も決めねばならない」
そう言うとマギラーニ宰相は立ち上がり、アスランの首根っこを掴んで歩き出した。
もう、後ろを振り返る事もない。
きっと腹を括ったのだろう、命の危機を感じてやっと……。
こうして、その日は【カズマに初めてほっぺにチューされた記念日】と称し、レディー・マッスルの所有する店では盛大な祝い事が行われたのは、言う迄もない。
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