上 下
21 / 66
第二章 新天地、ムギーラ王国にて!!

第21話 異世界での忙しい日々と、マリリンの怒りと

しおりを挟む
 半年間の間に起きた事を大まかに話そう。

 その一、異世界と現実世界の二拠点にて活動は相変わらず。
 そのニ、レディー・マッスルでの功績により、異世界でムギーラ国王の相談役に任命される。
 その三、マリリンの実家がレディー・マッスルに襲来。義弟と出会った。
 その四、カズマは異世界での就職と言う事で落ち着いた。近所には海外に仕事に行っているという事にして貰った。
 その五、異世界で猛烈イチャラブ夫婦として名を馳せている。


 まず、異世界と現実世界での二拠点生活は相変わらずで、基本的には異世界にいることが多いけれど、現実世界にもたびたび帰省しては両親と会話したり、必要な物を買ったりしている。

 更に、レディー・マッスルで行っている業務等がムギーラ王国に革命を起こしたとして、国王から相談役に任命され、マリリンの実の親である宰相様と会う事も多くなった。
 そうなると、必然的にマリリンの実家とも会う事となり、まだ幼い弟さんは僕へ対し、ライバル宣言をしているのは生暖かく見守ろうと思う。

 また、元の世界で就職活動していたけれど、異世界に居る事が多い事と相談役に抜擢されたことで、異世界での就職を決意した。
 近所の人には、海外を回っていると言う事にしている。

 最後に、マリリンとの仲は良好だ。
 ギルドの面子たちからも「夫婦仲が本当に良い」と断言される程である。


 そんな二拠点生活をしながらの日々は、正直忙しい。
 マリリンと共同で始めた食事処兼宿屋は大盛況。
 庶民用の店もオープンさせ、ある程度、低価格で食べれるものを用意している。

 一言でいうなら、お湯で温めるだけの料理最強ってことである。
 湯煎料理はパスタやカレー以外にも結構豊富にある。
 魚だって湯煎料理は豊富だったりするけれど、こちらは値段を高く設定している。
 それでも人気の高い料理であることには変わりはないけれど、お陰様で潤った財源はムギーラ国王と話し合い、国の一部に使われる事となっている。
 無論、レディー・マッスルが全額を出すわけでもなく、本当に一部ではあるが。

 その結果、国民の中で、文字や数字を勉強することが義務付けられ、国としての知識的財産は一気に伸びた。
 伸び悩んでいる地域、特に田舎の部分に関しては、週1必ず勉強する法律が義務付けられたこともあるが、農繁期に限ってはお休みとなっている。

 また、新たな雇用も生み出した。
 勉強意識が高い人物には教師として働いて貰っている。
 更に保育園を作り、雇用を上げることで働くママさんたちを増やした。
 保育園では、既に子育てなどから引退した女性や、一部の若いママさんたちを雇用したが、働けば家の家事、主に洗濯ものが出来ないと言う声に、洗濯物は園に通う子供たちが遊び感覚で覚えてもらい、広い園庭には洗濯物がはためいている。

 また、法整備も新しくした。
 女性とは男性に虐げられても文句が言えない者。
 と言う観点をぶち壊し、暴力などから逃げられるための国のシェルターを作り、保護と離婚に関する法律を作った。
 また、保護や離婚となった女性が危険な目にあわない為の法整備も進み、立場の弱い女性や子供が苦しまない様に法を整えたのはここ最近のことだ。

 怒涛の日々が終わり、やっとゆっくりすることが出来る時間を確保できた僕は、久しぶりに戻るレディー・マッスルの拠点を前にホッと息をつくことが出来た。
 これで暫くは拠点でユックリと過ごしていいとのお達しが出た為、マリリンとの時間が作れると思うと少しだけ気持ちも上向きになる。


「ただいま戻りました」
「「「「「カズマ様逃げて――!!」」」」


 戻ってきたばかりなのに、逃げろとはどういう事か。
 隈のできたショボショボの目をこすり、前を見ると、両手に両手剣を持ったマリリンが鬼の形相で待ち構えていた。
 一瞬、口から魂がでそうになるよね。仕方ないよね。


「カズマ――!!」
「ただいまマリリン!」
「いくら忙しくとも……妻である我を長らく放置したことは許し難い! 覚悟はできているだろうなぁ!!」


 怒髪天である。
 マリリンの雄叫びで、ギルドの窓が全て割れたが、そんなことは些末な事だ。
 僕はフラフラした様子でマリリンの元に歩み寄り、一瞬狼狽えた隙を逃さずマリリンを抱きしめた。
 嗚呼――久しぶりのマリリンだ。


「あぁ……マリリン……やっと君に触れられる……」
「カ……カズマッ?」
「この国の虐げられていた女性と、罪のない子供達を守ることがやっとできたよ……。子供たちが一番の被害者だ……。子供の泣き顔なんて見たくない……。けれど、マリリンを悲しませたことは何よりの罪だ」
「――!!」
「マリリン、愛してる。僕を叱ってくれ……」


 途端、カズマの顔面に大量の血が飛んできた。
 マリリンが鼻血を出したのである。
 慌てふためいた治癒師たちは急ぎマリリンに回復魔法を掛け始めたが、余り効果は無さそうだ。


「おお……罪なき子供たちの涙を止める為に……その為に頑張っていたのだな!! 我はなんて心の狭い妻なのだ!! よくよく見れば目の隈が酷い!! そこまで身体を酷使してまで……おおおおおおおお!! 我が夫よぉぉおおおおお!!!!」


 今度は洪水のような涙がカズマの顔面に降り注ぎ、血は綺麗に流れた。
 取り敢えず命の危機は脱したようだとカズマは安堵の息を吐いてマリリンに抱き着いた。


「今日は君を抱きしめて眠りたい……僕の我儘を聞いてくれるかい?」
「無論! 無論だとも!!」
「じゃあ一緒に行こう……。二人でベッドへ入り、マリリンに包まれたまま眠りたい……」


 そう言うとマリリンは米俵を担ぐように僕を抱え、ギルドの内部へと消えていった。
 後に残ったのは静寂……。
 そして、命の危険すらあったにもかかわらず、マリリンへの愛を通した僕への称賛の嵐が始まった事に気づくことは無かったが――。


 ◆◆◆


 割れたガラスを皆で片付けながら、「俺だったら殺されてたな」とか「流石カズマ様はマリリン様を愛していらっしゃる」等、ギルド面子が言いたい放題言っていることに関しては、最早放置である。


「しかし、あの若さでムギーラ王国の相談役だろう?」
「ああ、レディー・マッスルがこの国の法律を変えているのは、カズマ様のお力だと聞いたことがある」
「マリリン様の旦那様は素晴らしい人だったんだな!」
「マリリン様! カズマ様! 万歳!!!」
「「「「万歳!!」」」」


 こうして、彼らは隣にある宿屋兼食事処に行って、カズマとマリリンへ対する身内の宴を行い、お金を落としていってくれるのであった。


 一方、マリリンとカズマの部屋では――……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

奴隷落ち予定の令嬢は公爵家に飼われました

茗裡
恋愛
此処は乙女ゲームに似た世界。 婚約破棄されて平民に落とされる悪役令嬢のルナリア。 生粋のお嬢様であるルナリアは平民として生きていけるわけもなく人買いに捕まり奴隷として売られる。 ゲームのシナリオはそうなるはずだった。だが、婚約破棄されたルナリアの前に現れたのは攻略対象の姉。転生者だという攻略対象の姉に飼われることになったルナリアだが、彼女が仕える主人は攻略対象だった。 侍女侍従を育成する育成科に通う為、通っていた学園に戻る事となってしまう。 元婚約者やヒロインとは違う学科に通うことになるが、同じ学園内の為、目の敵にされてしまう。 それもこれも、ヒロインの本命はルナリアの元婚約者では無かったから。ヒロインの本命はルナリアの主人だった!? 本命キャラを攻略せんと色仕掛けで迫るヒロイン(ヒドイン)だが……?(第一章) 夏休みが明けたら物語は第二部へと移行する。 隣国からの恋の障壁として現れる予定だった留学生達。 生徒会役員も変わり心機一転。 ルナリアに対する害意は沈静化したものの、ルナリアとディオンの間に新たなる問題が発生する。留学生達も加わり刺激的な日々が二人を待ち受ける(第二章) !注意! 見切り発車且つ殴り書きです。 矛盾や隙間をなるべく埋めるようにはしてますが、設定が緩く甘い部分もあるかもしれません。 息抜きで思い立った内容を殴り書いた作品です。 読み手を選ぶ作品かもしれませんので、以上を了承の上ご高覧ください。 ※いじめの表現がありますのでご注意下さい。 ※小さな布石がパラパラと落ちているので後から回収されたり回収され無かったり、一つ一つの言動に意味を持たせてたり持たせてなかったり……書いている時は本人布石になると思ってないので分からんぞって思ったら聞いて下さい。"気紛れ"で答えるかも?

見捨てられた令嬢は、王宮でかえり咲く

堂夏千聖
ファンタジー
年の差のある夫に嫁がされ、捨て置かれていたエレオノーラ。 ある日、夫を尾行したところ、馬車の事故にあい、記憶喪失に。 記憶喪失のまま、隣国の王宮に引き取られることになったものの、だんだんと記憶が戻り、夫がいたことを思い出す。 幼かった少女が成長し、見向きもしてくれなかった夫に復讐したいと近づくが・・・?

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

転生しました。

さきくさゆり
ファンタジー
転生しました。 生きるために必死に頑張りました。 結果、家族からは見放され、友人はできなかったけど、学園に入れました。楽しい異世界生活をおくろうとおもいます。 なろうでも書いてます。 読みやすい方でお楽しみください。 http://ncode.syosetu.com/n1839dj/

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...