上 下
7 / 66
第一章 異世界人現る!!

第7話 頑張って貰いたい気持ちを込めて……

しおりを挟む
 ――明日マリリンが一度異世界に戻ると言う事で、僕はマリリンにちょっとした物をプレゼントしようと大型ショッピングセンターに来ていた。
 この田舎では、バイクや車で来ることが出来る数少ないお店だったりもする。
 僕は気にする様子もなく女性が好みそうな店に入ってはプレゼントになりそうなものを探していた。


「プレゼントには胃袋に消えるものが良い……って母さん言ってたけど」


 最初のプレゼントに形に残るものはあまり宜しくないらしい。
 それらを踏まえ、マリリンの好きなものを購入するとしたらコレとコレだろうか?
 自分の財布でも買える可愛らしいソレ等にカズマは満足して頷いたその時だった。


「あら、斎藤君じゃない」
「あぁ……立花さん」


 近所ではある種有名なお宅の一人娘――立花リツコが長い髪を靡かせ歩み寄ってきた。立花の実家は近所でも有名な大地主であり、彼女はその家の跡取り娘。
 その上、見た目も華やかで美しい女性ではあったが、僕的にはどうにも苦手なタイプだった。


「あら? そんな可愛らしい趣味があったなんて……斎藤君はそっちの趣味でもあるの?」


 クスクスと笑う彼女に僕は小さく溜息を吐くと「いや、プレゼント」と小さく返した。
 だが、その一言は立花リツカにとって青天の霹靂であったようだ。


「え? は? プレゼント? それってお母さんへのよね? 絶対そうよね???」
「そうじゃないんだけど、暫く実家に帰るらしくってね。砂糖菓子が好きらしいからお土産にと思って」
「あぁ、もしかして従姉妹でも遊びにきてるとか?」
「まぁ、そんなところかな?」


 ――従姉妹でもなんでもないんだが。
 だが、立花的には相手が実家に帰ると言うワードで安心したようで、いつもの調子を取り戻した。


「相手の好きなものをチョイスするなんて、男としてはある程度の合格ラインかしら?」
「あ――……そうだといいんだけどね」
「それで? その従姉妹さんの見た目はどんな感じ? 年齢は? 女性らしいとかあるでしょ? 好みとか?」
「年齢は確か20歳だったかな。見た目は背が高くて綺麗なショートカットで……性格は大らかで明るいかな」


 確かにマリリンは2メートル有にある高身長であり綺麗な角刈りのようなショートヘアーである。そして性格は大体あっている。


「と言う事は……お母さんの家系の従姉妹さん?」
「遠い親戚なのかなぁ……」
「性格は好ましいとか?」
「確かに可愛いとは思うよ」
「恋愛に発展する可能性は?」
「何で立花さんがそこまで心配するのさ」


 プレゼントするのならシッカリと選びたいのに、選んでいる最中にアレコレ質問されると少しだけムッとする。
 それを察したのか立花は「まぁまぁ」と笑顔で流し、その後も買い物についてきた。


「だって斎藤君って女性と全く接点がないのに、こういう店で女性用にプレゼント買ってるのとか見るとついね」
「ふーん」
「それに、こういう店に入るなら女の子と一緒の方が場に浮かないっていうか?」
「あぁ、それはあるかも」
「でしょ? 見つけてあげた私に感謝してよね」
「それとこれとは話は別かな」


 僕は、一般的な女性が少し苦手だった。
 それも仕方ないのである。
 一番身近にいる母親が、所謂オタクなのだから。
 しかも二次元の方でのオタクな為、世間で言われている芸能人等の会話は皆無である。


「取り敢えず、可愛いプレゼントが選べて良かったよ。絶対気に入ると思う」
「良かったわね」
「後は渡した後に、絞殺されないかを祈るだけかな」
「え?」
「家に帰って生き残れるあらゆるシュミレーションしたいから帰るよ。またね」
「え? 生き残るって何?」


 困惑する立花をそのままに、僕はバイクに乗って走り出した。
 どの角度からどう避けるかを脳内で何度も再生しつつ、あらゆる対策を練りながら帰宅すると、庭ではマリリンが両手剣だと思われる剣を二刀流し、何度も素振りをしていた。

 飛び散る汗が凄い。ついでに風圧も凄い。
 バイクを止めマリリンに声を掛けると、両手剣を二本とも収納し、滝のように流れる汗をタオルで乱暴に拭いながら歩み寄ってきた。


「無事に帰ってこれてホッとしたぞ!」
「ああ、心配かけてすまない。本当はもう少し早く帰ってこれる予定だったんだけどね」
「ほう……んん!?」
「なに?」


 マリリンは険しい表情を浮かべると僕の体を念入りに嗅ぎだした。
 それは最早、獰猛なクマに臭われているかのような、鬼気迫るライオンに臭われているかのような恐怖を感じたが、僕は心を無にして耐えきった。


「カズマァ……貴様……どこの女にマウンティングされてきたのだ!!」
「マウンティング……?」
「そう、マウンティングだ! 動物で言うと自分のものだと周囲に解らせるために臭いをつけるあのマウンティングだ!! あぁ……我と言う者がありながらっ!! 何て不埒な!! この浮気者!! 乙女心を踏みにじって……うぅぅううう!」


 行き成り座り込んで号泣し始めたマリリンに僕はショックを受けた。
 マリリンが泣いていることに関してもだが、何時何処で自分はマウンティングされたのか全く見当がつかない。


「ちょっと待ってマリリン、僕の体から女性の香りでもしてるの?」
「そこまでハッキリとマウンティングされて起きながら何と図々しい!!」
「いや、僕としてもショックだよ……。そもそも僕はマリリンの為に出かけてたんだから」
「……えっ!?」
「マウンティングの臭いってお風呂で落ちるのかなぁ。お風呂に入っても臭いが取れないのは嫌だけど、とりあえず先に風呂に入って臭い落してくるよ」


 それだけを言うとさっさと家に入り、念入りに身体を隅々まで洗った。
 きっと女性に人気のお店に入った事でキツイ香水がついてしまったのだろう。異世界人にとってそういう匂いは嫌なものに違いない。
 明日の朝にはマリリンは異世界へと一旦戻る。
 その時には、またこっちの世界に来たいと思えるように、僕なりに気を使ったつもりだ。

 長めのお風呂に入りパジャマに着替えて出てくると、マリリンは居間で正座し僕に何かを言いたそうにモジモジしていた。
 きっと悪い事を言ってしまったと思っているのだろう。
 そんなマリリンに僕は笑顔で「お風呂あいてるから入っておいで」と優しく告げると、マリリンは少しだけ頬を染めて恥ずかし気に風呂場へと消えていった。

 見た目はゴッツイ筋肉の覇王。
 けれど、性別的にもマリリンは女性だ。
 これまで一緒に生活してきて分かった事だが、マリリンは豪快だけど傷つきやすい繊細な女性であることも分かってきた。
 故に、見た目に惑わされず、ちゃんと一人の女性として扱う事を決めた僕だったが――。


「はぁ! はぁ!! カズマの入った風呂の水!! これは最早聖水に違いない!!」


 風呂場にて、湯気とは違う別の熱を発しながら僕の入った風呂を仁王立ちで見つめるマリリンが居たことに……幸いにして僕が気づくことは無かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

異世界から来た皇太子をヒモとして飼うことになりました。

おのまとぺ
恋愛
ある日玄関の前に倒れていた白タイツコスプレ男を助けた森永メイは、そのまま流れで一緒に暮らすことになってしまう。ロイ・グーテンベルクと名乗る男は実は異世界から来た本物の王子で、その破天荒な行動は徐々にメイの生活を脅かしはじめーーーー 「この俺の周りをウロつくとは大層な度胸だな」 「殿下、それは回転寿司です」 ◆設定ゆるゆる逆転移ラブコメ(予定) ◆ヒーローにときめくようになったら疲れている証拠 ◆作者の息抜き用に書いてるので進展は遅いです 更新時間は変動します 7:20

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸
ファンタジー
鍵を手に入れる…………それは獲得候補者の使命である。 これは、自身の未来と世界の未来を知り、信じる道を進んでいく男の物語。 そして、これはあらゆる時の中で行われた、付喪人と呼ばれる“付喪神の能力を操り戦う者”達の戦いの記録の1つである……。 ★女神によって異世界?へ送られた主人公。 着いた先は異世界要素と現実世界要素の入り交じり、ついでに付喪神もいる世界であった!! この物語は彼が憑依することになった明山平死郎(あきやまへいしろう)がお贈りする。 個性豊かなバイト仲間や市民と共に送る、異世界?付喪人ライフ。 そして、さらに個性のある魔王軍との闘い。 今、付喪人のシリーズの第1弾が幕を開ける!!! なろうノベプラ

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。 そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。 そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。 人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。 容赦なく迫ってくるフラグさん。 康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。 なるべく間隔を空けず更新しようと思います! よかったら、読んでください

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...