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43 思いもよらない助っ人、アンク

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 ――何時からは解からないけれど、シャーロット町に神父が多く配置されることになった。
 流石に俺の住んでいるログハウス周辺は町から遠い為配置はされていないようだし、マリシアとヘロスが言うには二日に一度しか見回りに来ていないらしく、時間もキッカリ4時に1回きりらしい。
 この事をモリミアに連絡した所、暫くして返答があった。
 なんでも国王陛下のお言葉を聞いたテリサバース教会は【聖女】を探しているらしく、その為に配属されたのだろうという事だった。
 また、その聖女が誰なのかシャルロットしか知らない為、国王陛下も知らないトップシークレットとして扱われているらしい。


「聖女探し?」
「聖女探しねぇ……でも、シャルロットは知ってる相手だろう? 女性ならミルキィが妥当だろうけど違う気がするね」
「そうですね……。そもそも聖女とは何を指して聖女なのか」
「哲学的~」
「いえ、解ってますよ? テリサバース教会の教えでは【テリサバース女神は世界樹に降り立ち、民を導く】と言う…………あ」
「「あ」」
「「あら?」」


 その時全員の目が俺を見ました。
 世界樹を持っているのは俺です。
 まぎれもなく俺です。
 では……聖女は?


「見つからないだろうねぇ……。聖女じゃなくて、聖者じゃん」
「あ――……確かにそうじゃのう」
「男とは誰も思わないんじゃないかしら」
「民を導くことはしませんよ?」
「ほっとけ。テリサバース教会が勝手に言ってる事だろ?」
「まぁ、マリシアの言う通りですが」
「そもそも、トーマは国が所有するスキルボードは触ったことは無かろう?」
「ええ、無いですね」
「触ったら聖者って出てるのかしら?」
「でも、あれって古代文明の石板ですよね? そんなものどこで触れます?」
「ダーリンに聞いてみたらどうかしら? 色々がらくたがあるって聞いたわ」
「石板がガラクタ……」
「人形にとってはガラクタかもしれないね。だってスキル関係ないし」
「なら持ってない可能性もあるじゃないですか」
「聞くだけタダよ。マスターの事詳しく知りたいわ♡」
「あらヘロスったら、夫を口説かないで? 私知りたいわ♡」


 と、愛しの妻に言われては仕方ない。
 一応スキルボードを持っているかどうかだけ確認のお手紙を書いて出した所、達筆な手紙が届き、書いているのは山茶花さんだと理解しました。
 どうやらスキルボードはあるらしい。
 アニマやデュオの為に用意してたものらしく、それならばと箱庭経由で全員移動して向かう事になりました。


「大勢で来てすみません。今のシャーロック村の現状もお話しつつになるのですが」
「構いませんよ。シャルロットも呼んできましょうか? あの石板はシャルロットが貰ったものですから」
「お願いします」


 こうして、俺の箱庭にて研究中のシャルロットに話しをしに行ったダーリンさん。
 暫くすると二人一緒に戻ってきて「部屋から持ってきますわ」とダーリンさんと消えて行ったけれど、俺達はと言うと山茶花さんに案内されて何時もの大部屋へと向かう。


「もしや、外が騒がしくなった……と言うことではあるまいか?」
「ええ、少々騒がしくなっていますね」
「ふむ……。障りが無ければよいが」
「障りが出ると大変なので。俺、国が10歳になったらすると言うスキルチェックしてないんですよ」
「なるほど、それで自分の身を守る為にも必要になった……と言うことじゃな?」
「ええ」
「難儀な事よな。スキル依存するなとは言わぬが、人間は何かとスキルだなんだと騒ぎたがる……。巻き込まれる身としては堪ったものではないと言った所かのう?」
「申し訳ありません。まぁ、俺も自分で分かる範囲では【アイテムボックス】持ちである事と、【箱庭師】であること、それと【人形師】であることくらいなんです」
「うむ、まずは我が身を守らねば妻も守れまい。謝罪することは無い。妻を守る為ならば男は何者にでもなれる」
「山茶花さん……」


 カッコイイな……。
 凄く中性的な美形なのに、なんというか、俺と同じ黒髪だけど、ラピスラズリのような綺麗な青い瞳が正に彼の正しい色合いのようにも思えた。
 それに白の袴に帯刀……何というかカッコイイ。

 そんな事を思いつつ大部屋に入って皆さんに事情を説明し、「またややこしい事になってんな!」と苦笑いするコウさんに俺も苦笑いし、アンクさんとピリポさんはダーリンさんが持ってきたスキルボードを俺の前に置かせると、早速手を当てて自分のスキルを映し出してみる。
 すると、暫くチカチカとした光がした瞬間、パッとスキルが書かれた映像が映し出され、思わず「おおお」と声を上げてしまったけれど、中身を読んでいくと面白い事が書いてあった。


【トーマ・シャーロック(男性)称号:聖者:苦労人】
『スキル:箱庭師(世界樹):古代人形師(バグ有):古代文字翻訳:生活魔法レベル8:調理レベル:8:危険感知:4:悪意感知:4:お人よし:9:メンタルの強さ:10』


「あら、あらあら、この石板優秀ですわね」
「俺とピリポが弄ったからな。他のでは此処まで出てこない」
「出たとして、名前、現代で分かるスキルだけでしょうね。トーマさんで言えば『箱庭師』だけで表示されるでしょうし、『古代人形師』は『人形師(バグ有)』として出て来るでしょう」
「しかし『苦労人』とは……しかも『メンタルの強さ:10』と言うのがなんとも、トーマ殿を表しておりますな」
「そうでしょうか?」
「確かにまぁ……苦労人……よね?」
「ミルキィを嫁にした時点でのう……」
「え? 苦労してるトーマ君……」
「してませんよ? ドンドン可愛くドジして下さい」
「ありがとう!」


 笑顔で言ってのけた俺にミルキィの可愛い笑顔が光る。
 その様子を見ていた皆さんは「納得した」と言っていたので何に納得したのだろうか。
 不思議ですね。


「さて、これで分かった通りだと思いますけど、トーマ?」
「はい」
「貴方こそが、テリサバース教会が躍起になって探している聖なる者ですわ」
「納得しました。それで箱庭に世界樹が生えてたんですね」
「そうですわね」
「何と言われても黙秘しようと思います。そもそも見つけようとしているのは【聖女】ですから女性をまず探すでしょうし」
「そうですわね……」
「なので、今のところは注意をしつつ、普通に過ごします」
「よござんす。何かあれば直ぐ連絡下さいませ? わたくしの脳内が火を噴きますわ」
「その時は俺も手伝ってやろう」
「アンク、珍しいですわね」


 まさかここでアンクさんから助けてくれるとは思っておらず驚いてると――。


「妻を助けてくれた礼がまだ終わってない。俺は礼には礼で返す主義だ」
「あ、ありがとう御座います」


 こうして、俺は力強い味方を更に得たのでした――。

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