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37 シャルロット・フィズリーによる断罪劇

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「古代人形、シャルロット・フィズリー様、並びにダーリン・エゾイフ様。護衛人形のヘロス様の入場です!!」


 ――その声にザワリと会場が揺れ、わたくし達が優雅に入ってくるとブクブクに太った国王は王冠をズルリと下げながら身を乗り出して見ている。
 それはそうでしょうね。
 シャルロット・フィズリーと言えば絶世の美女でもあり、大悪女。
 ニッコリと微笑めばほら、見てごらんなさい?


「おおおおおお!! アレが人形か!? 古代人形と言う奴か!?」
「陛下、お体に障ります」
「ええい黙れ! ほうほう……古代人形よ。ワシの近くに寄れ!」
「嫌ですわ、気持ち悪い」
「なっ!」
「お身体が悪いと聞いてましたけど、随分と元気そうですのねぇ? 心臓病を患っておいでなのに」


 そう微笑んで口にすると、「側妃のお陰で……なぁ?」と隣に座っていた側妃に声を掛けておられましたけれど、側妃はわたくしを睨みつけてそんな段ではないようですわね。
 確かにお綺麗だとは思いますわ。お綺麗だとは。そう、年齢の割には……が付きますけれど。
 方や古代人形……永遠の若さを持つわたくしと張り合おうと言う方が可笑しくてよ?


「この度は素敵なパーティーを開いて下さってありがとう御座いますわ。王弟殿下? 王妃様?」
「うむ、これからも良き隣人でありたいと思っていてな」
「良き隣人……素敵な言葉ですわね。王弟殿下の良き隣人でしたら考えますわ」
「ははは」
「こ、なっ! ぶ、無礼であろう!! ワシは、」
「ああ、役立たずの国王は側妃と自室に引き篭もりでしたっけ? この前視察に行っても挨拶は無いし、贅沢三昧で仕事もしてないとか」
「「――!?」」
「仕事は全て王妃に丸投げ。国王の印が必要な書類は山の様。で? 王妃にやらせろ、でしたかしら? 貴方この国のトップとは言えませんわね。礼儀を欠くなと申されましても、役立たずに使う礼儀なんてありませんもの」


 わたくしの言葉に周囲の貴族や大臣からはクスクスと笑いが木霊し、陛下は顔を真っ赤にしておられますわね。


「しかも食べ散らかしの飲み散らかしでしたっけ? 皆様には贅沢をするなと言っている割には自分たちは贅沢三昧。……ちぐはぐでは?」
「そっなっ、何故、いや、違う!」
「貴方がそれは違うと言っても、裏は取れてますのよ。ここにいる貴族も大臣たちも全員知ってましてよ? そんな貴族が貴方に頭を下げまして?」


 その言葉にようやく自分に挨拶に来なかった貴族たちに気づいたようで、顔面真っ青になりつつ周囲を見渡してますわね。
 愚かですわ。そして遅いですわ。けれど――色欲はまだ健在のようで。



「そんな出鱈目を言おうとも、なんと美しい!! これが古代人形と言う奴か!? ほれ、我が元に近こう寄れ!」


 鼻息荒く口にする国王陛下に貴族たちは更に騒めきましたわ。
 誰からも聞いていないのかしら?


「ほほほほ! 面白い事を仰るのね! 絶対嫌ですわ」
「なっ!! 俺はこの国の国王だぞ!! 国王のいう事は絶対であろう!!」
「知った事ではありませんわね。わたくし達は【王弟殿下に招かれた客】でしてよ? その王弟殿下に泥を塗るおつもりかしら? 一国の国王が? 笑ってしまいますわね!!」
「っ!!」
「それに、心臓病と聞いておりましたけれど随分とお元気な様子……もしかして、仮病でしたの?」


 そう軽く挑発すると少しだけ慌てた素振りを見せたものの、気を取り直してドカリと椅子に座り「人形風情が俺に口答えする気か!?」と言ってきたので更にお答えしましたわ。


「あら? あらあら? このパーティーは王弟殿下がわたくし達の為に開いたパーティーだというのに、ご自分が主役とでも思ってますの?」
「なっ!!」
「嫌だわ、なんて図々しいのかしら。その上全く情報が行ってないじゃありませんの。このブタ何をしてましたの? 嗚呼、豚に失礼でしたわね。このゴミに誰か説明しましたの?」
「ゴ……一国の王をゴミ扱いだと!?」
「ええ、寄生虫と呼んだ方がよろしくて? わたくし色々とお耳に挟んでおりますわ。側妃と一緒に部屋に閉じこもって政務も行わず贅沢三昧だったそうですわね? それって引き篭もり? 古代の言葉で言えばニートと言う奴かしら? それで国王? 笑わせないで頂けるかしら?」
「ここここここ!!!!」
「あらあら、今度は鶏? ほほほほほほ!! ここの国王は面白いですわね!!」
「この無礼者を今すぐひっとらえよ!! 破壊しても構わん! 所詮人形だ!!」
「触れるものならどうぞ? 言っておきますけれど、わたくしの夫とその弟子ヘロスは強いですわよ?」


 そう扇で口元を隠しながら口にするも、兵たちは一歩も動かない。
 これに焦った国王はプギープギーと鳴きながら文句を喚き散らしていますわ。


「あらあら、大変。心臓がお悪いのにそんなにブタが殺される時みたいに雄叫びを上げていては心臓に負担が掛かって死ぬんじゃなくて? ああ、そう言えば貴族たちは貴方に挨拶を為さらなかったそうね? それもそうよね。 だって貴方、貴族や国民が国王に非ずって落第印押されてますもの! ほほほほ!! そこにいるだけで滑稽ですわ!!」
「こ、滑稽だと!?」
「政務を全て女王と王弟殿下に丸投げして、ご自分がしなくてはならない仕事は一切やらない。溜まって行く一方で国は衰退するばかり。国を衰退させる国王を誰が支持致しますの? 脳内の国民かしら? 脳内に国民がいらっしゃるのかしら? それともおとぎ話の世界で生きている人種だったりするのかしら? 本当に馬鹿ね。貴方のような人間って、ゴミ屑、税金の無駄喰らい野郎って言いますのよ? 一つ賢くなりましたかしら?」
「~~~~!!」
「貴族の皆様はどう思いまして!? こんな国王を支持できますの? 支持が出来る方は是非拍手をしてさしあげてくださいな!」


 そうわたくしが貴族面々に踊るように扇を持った手で示すと、拍手は一切起きませんでしたわ。
 それどころか顔を真っ赤にして今にもぶっ倒れそうな国王を睨んでいる始末。
 まさかこんな事になるとは思っていなかったのか、国王は次第に赤い顔から青い顔に変わり「何故誰も拍手しないのだ!」と訴えているけれど……拍手する筈ありませんものね?

 その為にわたくし、種は撒いてきたつもりですもの。
 貴族も国の重鎮達も国王から離れるのは当たり前。
 まぁ、重鎮達はギリギリになりましたけれど、終わりよければ全てよしですわ。


「それとも」
「!!」
「王弟殿下こそこのハルバルディス王国の国王に相応しいと思っている方々は、盛大なる拍手をお願い致しますわ!!」


 途端会場が割れんばかりの拍手が鳴り響き、陛下は狼狽えながら椅子に尻もちをつきましたわ。
 さぁ、あなた方の断罪はもう少し続きましてよ?


「役に立たない贅沢し放題で税金の無駄喰らいの国王と側妃を幽閉に賛成の方は盛大な拍手をそのままお願いしますわ!!」


 最早雄叫びを上げながら拍手する方々だらけ!
 兵士の方々も武器を脇に拍手してらっしゃいますわ!


「今夜、現ハルバルディス国王を幽閉するに良い日だと思いませんこと!」


 そう叫ぶと大きな雄叫びと「その通りだ――!!」「幽閉だ――!!」「俺達を騙しやがって!!」と言う声が現国王に投げつけられますわ。
 こうなれば止まらない。
 貴族の鬱憤の叫び声と罵声は大きくなる一方で拍手も大きくなる一方。
 狼狽えた国王と側妃は逃げようとしましたけれど、それを止めたのは王弟殿下でしたわ。


「兄上、何処へ逃げようというのです。まだパーティーは終わっていませんよ」
「うううう……煩い!! 俺達は部屋に」
「そうですか、誰か! 用意した部屋にこの二人をお連れしろ!」
「よ、用意した部屋ですって!?」
「何を考えておるのだ!!」
「兄上、非常に残念ですよ」
「モシュダール!?」
「連れていけ!!」


 こうして拍手が鳴り止まない中、兵士たちは二人に縄をかけ玉座から引きずり降ろし、王弟殿下が用意したという庶民用の地下牢に案内されていいますわ。
 そこでまずは半年過ごして貰い、それから幽閉と言う事になりましたの。
 まずは国王と言えど、罪を償わねば……ねぇ?


「さぁさぁ! ポンコツの使えない税金泥棒達の退場ですわよ! 盛大な拍手で送りだして差し上げて!」


 そう声を上げて笑顔を見せると、まるで悪魔を見るかのような顔でこちらを見てましたわ。
 ――嗚呼、懐かしい顔です事。
 ウイルスを作った時の周囲の顔にとてもよく似ていますわ。
 あの時誰だったか言いましたわね。


『貴女は悪魔なの?』――と。


 ふふ、もしかしたら本当に悪魔かもしれませんわね?
 だって、一国の王を引きずり落としたんですもの。

 鳴り止まない拍手の中退場していった国王と側妃がいなくなると、王弟殿下はマントを翻し「静まれ――!!」と声を上げた。
 さぁ、断罪は終わり。
 後は王弟殿下……解っておりますわよね?
 大事な〆は王弟殿下と王妃無くてできません事よ?
 しっかり貴族や大臣たちの前で我こそが国王だと言って差し上げなさいませ!!

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