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第二章 女王陛下からの依頼で、獣人の避難所を好き勝手してやります!!

43 女王陛下からの依頼。獣人避難所を見て対策せよ!

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 こうして馬車に乗り込み、俺達はノスタルミア王国の女王陛下に会う事になった。
 時間は10時に謁見。
 果して、どう出てくるか――。


 ノスタルミア王国の女王陛下の手腕は有名で、オスカール王でさえ言葉でも雰囲気で、閉口してしまうとさえ言われていた。
 実際の女王陛下はどんな感じかと二人に聞くと、「会ってみれば分かる」と言われたのでそれ以上は聞けなかった。
 それでも謁見の時間の10時。
 謁見の間が開き、一組の親子が出てきた。


「ん? そなた、アツシではありませんか!?」
「ほう?」


 なんと現れたのはシズリー辺境伯と娘のディア様!!
 何でこんな所に!?


「これも運命の導き? それとも赤い糸!?」
「先生! 次は先生と私たちの謁見ですよ!」
「むう。そなた冷たいですわ!」
「妻の座を狙う不届き者とみてます」
「まぁ!」
「ヒュー、先生モテる~! うらやましー!」
「揶揄うな。地獄を見るぞ」
「うっす」
「まぁまぁ、ディア様もシズリー辺境伯もまた後ほど」
「うむ、また後で会おう」
「今ボルドーナ商会に泊まっているのです。また会えますわね?」
「時間が合えば、ですね」
「ふふふ。逃がしませんわ」
「「こわっ!」」


 不味い、正に獲物を狙うジャガー! もしくは何か取り敢えず肉食系動物で凶悪なの!!
 俺は女王との対峙の前に冷や汗が流れた。


「では失礼致しますわ」
「怖いっすっ! 正にメヒョウって感じっす!」
「くうう。あの気迫、負けないんだから!」
「取り敢えず落ち着け、今から謁見だぞ」
「「そうですね!」」


 こうして謁見の間に入り、ゆっくりと歩いて片膝をついてしゃがむと、女王陛下の声が上から注いでくる。
 歩いてくる時も目線を上げてはならないと言われていたので下を向いていたが――。


「宜しい。顔を上げなさい。先に伝えておくが、これから話すことには自由に答えて構わない。」


 その言葉に顔を上げると、銀の髪を靡かせ、金のドレスを着た美しい月の女神のような女性が座っていた。
 年齢は不詳らしいというのは、ボルドさんから唯一得た情報だ。


「赤銅の髪の男、そなたがアツシか?」
「はい、そうで御座います」
「隣二人は、そなたの弟子と聞いている」
「はい」
「ふむ……悪いオーラは出ておらぬ。寧ろ清らかだな」


 その言葉に鑑定をしているのかと思ったが、それに似たレアスキルがあるのかも知れない。
 油断は禁物だ。



「時にアツシ。そなたのスキル今見せて貰ったが、街を作れるそうだな」
「はい、スキル的にはその様です」
「よいよい、そう固くならぬとも。そして、そなたが手に入れた奴隷は奴隷として扱わず、給金も払い、衣食住に困らせず、週に二日も休みを与えているそうだな」
「その通りです」
「ふむ……。少し早いが、そなたは見込みがありそうだ。今まで見てきた誰よりもな。それこそ、先のシズリー辺境伯より……おぬしの方が格が上だな」


 あの威圧バリバリのおじさんよりもか!?
 流石にそれはないだろう??
 そう焦ったが、クスクスと笑われ女王陛下は更に口にする。


「シズリー辺境伯の領地の近くに獣人たちの避難所がある。ソコを視察して貰い状況を見て欲しい。私の千里眼だけでは足りそうになくてな」
「千里眼ですか」
「その場の空気が知りたい。諍いは毎日起きている。炊き出しはしているが、まだ貧困に喘いでいる。何とかしてやりたいが……何とか出来ないのが辛い所だ」
「……住居は建っているのですか?」
「うむ」
「では孤児は?」
「多くの孤児は教会が面倒を見ている。安心するがいい」
「問題としましては、仕事があり、雇用があり、給金があり、衣食住が整えられ、更に言えば娯楽があれば尚よし……と言う所ですか」
「その通りだ。農業でも何でもよい。そなたが導けるなら、そなたに導いて貰いたい」
「少しずつ獣人との距離を縮めつつ、その上で、になりますので時間は掛かります」
「それで良い。今のままでは、いずれ奴隷落ちする者も出てくるであろう。時間は掛かるだろうが、お主が獣人達を束ねて街を作るが良い。好きにしていいぞ?」
「本当に好きにして宜しいのですね?」
「構わん。どうせ次から次にこの国に獣人は逃げてくるのだ。どちらかが動けば大国が動くが、中々どちらも睨みあいをしている。それが落ち着けば本国に帰る者も出てくるだろうが、残る者もいるだろう。導いてやってはくれまいか」
「お言葉、確かに賜りました。数年掛かるかとは思いますが、徐々に安定させていきましょう。その代わり、街の為の文官等を派遣して頂ければと思います」
「必要になったら言うが良い。まずはお主の目で確かめてこい」
「分かりました。出来るだけ早く、そして穏便に進めたいと思います」
「うむ、よろしく頼むぞ」


 こうして謁見は終わり、俺達は謁見の間を出てホッと息を吐く。
 本当に胃に悪い……。
 しかし、このタイミングで菊池が来て良かった……。
 俺が居ない間、菊池とカナエで店を回せる。


「は――……とんでもない事になりましたね」
「先生、街のボスになっちゃうんですか?」
「そうなるなぁ」
「いや――、あのシズリー辺境伯を抑えて抜擢されるとは」
「驚きですなぁ」
「胃が痛いですが、避難所に行く為の準備を進めようと思います……」
「それが宜しいかと」
「カナエはこの後俺の相談に乗ってくれ」
「はい」
「菊池はスキルを使って在庫の管理に走れ」
「ええええ!?」
「やれるな?」
「はいいい!!」


 こうして一路拠点に帰り、着替えを全員済ませてからカナエと話し合いとなった。
 この国は常春だから食べ物には苦労していない。
 だが、それ故に輸出が凄いのだ。
 そこに獣人の村で取れた野菜を乗っけると言う手も悪くない。
 生産を安定させるにはハウス栽培と言った方法もある。
 果物は中々育たないかもしれないが、やってみるだけの価値はある。
 此方の世界にはイチゴと言う食べ物がないのは、お菓子屋で把握済みだ。
 イチゴならばハウス栽培が出来る。
 そしてワインがあるから葡萄はある。が、数が少ない。
 アチラの世界では当たり前にあった大粒の葡萄等は無いのだ。
 作れれば御の字だが、そこは一つレアスキル持ちに任せてみようと思っている。

 テリーとテリアナが持つレアスキル【緑の手】だ。

 これには植物を育てやすくする力がある。いるだけで植物が育ちやすくなると言うレアスキルの中でも上位に入る。
 テリーとテリアナには基本的に獣人の村で作業をして貰う事になる。
 その際二人が奴隷でいる方が安全なのか、奴隷ではない方が安全なのか判断が難しい。二人が奴隷のままの場合、獣人の俺への当たりがキツそうだし、二人を奴隷から解放した場合、力のない二人がスキル目当てに無理矢理連れ去られ、また奴隷にされてしまうかもしれない。
 国が支援している避難所でも悪い事を考えるヤツは何処にでもあらわれる。
 たしかキャンピングカーの中は襲われる心配はなかったが、拠点はどうなんだ?街だとどうなるんだ?
 後は二人の抜けた穴を補う為にココの従業員も増やさなければ……。


「まずは野菜農家とイチゴ農家。他にも売れる果物をみつけて育てるのね」
「そう言う事だな。行ってみないと分からないが土の状態も鑑定して状態チェックも必要になる」
「なるほど」
「ホームセンターで色々買えるし、ネットスーパーでも色々買えるだろうが、まずは行って状態把握、現地調査は必要だ。さらに言えばダグラスに向こうでの護衛を頼みたいから、こっちの作業は菊池とロスターナを連れて回って欲しい」
「いいの?」
「本人に確認しないとだが、菊池にはネットスーパーのレベルをあげて欲しいし、ロスターナは料理に間に合う時間までに戻ってくればいいと思う」
「分かったわ」
「キャンピングカーで一日掛からない距離だ。拠点を作ったら扉を此方に繋げる。そうすれば行き来は何時でも可能になる」
「そうね」
「まぁ、キャンピングカーも行き来は自由な訳だが」
「あはははは!」


 そう言うと固くなっていたカナエの表情は柔らかくなり、俺もホッと安堵した。
 やはりカナエは笑顔が似合う。


「さて早速出かけたい。あのお嬢さんが突撃してくる前にな。でもその前にテリア姉弟に今後の事を説明しようと思う。カナエは菊池にはまだ出せない商品もあるしそっちを頼む。店の補充に行く前に、ゼリーとお茶だけ出して袋に入れて置いておいてくれ」
「分かったわ」


 そう言うとテリア姉弟を呼び、俺が今後獣人の避難所に関わっていく事、向こうで農業をしようと思っている事、その手伝いをテリーとテリアナにお願いしたい事を伝えた。
 テリアが一緒ではない事に二人は少し不安がっていたが、毎晩こっちに戻って皆と食事をしたり部屋で眠る事が出来ると話したら、俺や困っている同じ獣人のお手伝いをしたいと言ってくれたので安心した。
 本当ならシュウ達のように奴隷の印を消してやりたいが、避難所で二人の安全が守られるまでは待って欲しい事も伝えた。

 3人に説明をおえた後は、飲むゼリーとお茶を取り「ダグラスに後で護衛を頼むと伝言しといてくれ」と頼むとキャンピングカーに乗り込みエンジンを掛ける。
 サングラスをしていざ出発だ。
 まずは何事もなく首都の門を抜けて、目的地に到着すればいいが――。


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