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第一章 要らないと言うのなら旅立ちます。探さないで下さい。

39 オーバーワークのカナエの為に、新しい奴隷で素晴らしい人を仲間に入れたが……。

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 土日は戦争とはよく言ったものだなと思いつつ、ヘロヘロになりながら戻るとお弁当が用意されていて、それを各所に届けて置き、そして戻ってご飯を食べて、少しだけ珈琲タイムを楽しんでから、また補充に走り回った土日の結果――!!


「売り上げが……」
「凄いですね……」


 皆が寝静まった夜――、俺とカナエは呆然と売り上げを見つめていた。
 何と売り上げがボルドーナ商会を抜いたのだ。
 金額は恐ろしくて言えないが……とんでもない売り上げだった。
 これならもういっそ土地を借りるより買った方が早い。
 そう決断した俺達は、それぞれの土地を購入することを決めた。
 それでも有り余るほどの金額だ、給料を払ってもまだまだ十分にある。


「ん――、此れだけ売れると、驚きを通り越して溜息が出るな」
「そうですね、先生レベル上がったんじゃないですか? 私も上がりました」
「そうだな、確かにレベルが上がった」


 そう、3店舗の売り上げが凄かったのと『慈善事業ボーナス』と言うのが入ったのだ。
 とは言っても、レベルは上がりにくく成っているようで、ポイントは殆ど入らなかった。
 そこで、お互いにスキルチェックをする事にしたのだが――。
 俺は前回店を作った後更に何故か店を作るが増えた。

『三つのスキルをこの中から選びます。一つ、拠点を増やす(3)。一つ、拠点を更に大きくする(宿屋大並み)(追加:温泉宿)一つ、店を作る(5)一つ、町を作る(村からレベルアップしています)』

 この際、俺は何も選ばなかった。
 そして現在どうなっているかと言うと……。

【五つのスキルをこの中から選びます。一つ、拠点を増やす(4)。一つ、拠点を更に大きくする(宿屋大並み)(追加:温泉宿★露天風呂付)一つ、店を作る(6)一つ、街を作る(町からレベルアップしています)】

 う――ん。
 町を作るが街を作るに変化したぞ?
 それだけ発展させられるということだろうか?
 要確認で今は余り手を出したくないな。


「俺は今直ぐ何かできるのは無いな」
「私もです、アレから特に変わってません」
「そうなのか」
「ホームセンターを大きく出来るようになったくらいです」
「今回も手付かずだな……何れ使うんだろうか?」
「どうなんでしょう。獣人の避難所がどうなるかに寄りますね」
「そうだな」


 とはいえ、まだ約束の半年まで時間はある。いや、五か月か。
 その間に仕事は軌道に乗せたいし、出来ればやりたいこともある……。


「カナエ、テリアはどれ位君の料理を覚えた」
「凄いのよ!! もう殆どマスターした感じなの! 料理用の本を買ってあげてるんだけど、ドンドン吸収してて、お弁当はテリアちゃんが担当してるわ」
「そうだったのか。じゃあテリアに今後はお弁当を任せるとして、料理が出来る人が一人欲しいな。カナエがオーバーワークだ」
「そうだけど」
「もし菊池が来ても暫く寝るところはキャンピングカーを使って貰う予定だ。あと一人、料理が出来て生活魔法が使える人を一人雇おう。奴隷でもいい」
「先生……」
「無論君の料理が食べたくないと言う訳じゃない。君の料理は無論食べたい。だがこれ以上オーバーワークはさせたくない」
「……」
「だから、俺は休みの日はカナエの料理を思い切り食べるぞ?」
「はい!」


 こうして、明日の夜皆に給料を渡す事は必須だが、同時に朝の間に奴隷市場に行く予定だ。
 部屋は後一つ空いている。
 もし男性で雇えたなら、菊池と同じ部屋にしよう。
 女性なら菊池はキャンピングカー暮らしだ。
 そして翌朝。食事も終え各所周りを終えた俺は奴隷市場へと向かっていた。
 カナエも無論同行している。
 二人で生活魔法が使えて料理が出来る人を探すのだ。
 そうなるとどうしても女性に目が行きがちだが――。


「あ、先生居ます」
「ん?」


 そこには、獣人の女性……だろうか? 男性だろうか? 一人蹲っていた。
 鑑定してみると――。

【ロスターナ:生活魔法6・料理スキル6・器用さ8・素早さ4】

 正に理想的。
 奴隷商人の元に行き声を掛けると、なんでも彼は元料理人らしい。
 人間の国であるこのノスタルミア王国に逃げてきた獣人の一人で、何故売られているのかと言うと――。


「こいつはな、貴重な香辛料を沢山使っちまって、店の主人がブチ切れて奴隷市場に売られたんだよ」
「貴重な香辛料ですか」
「まぁ、料理の腕はあるらしいが、どうにも扱いにくいってぼやいてたな」
「一度話をしてみても?」


 こうして俺達はロスターナの元へとやってきた。


「おはようございます! 料理は好きですか!?」
「大好き……でも味が薄いのはもう嫌」
「素晴らしい、君は生活魔法と料理が出来る。もし、料理の本を沢山見て覚える気があるなら俺が連れて帰ってあげよう」
「!?」
「無論、君には年下の先生がつくが、それでもいいなら君を雇おう。ハウスキーパーと言う奴だ」
「ハウスキーパー……」
「家の事を色々してくれ。洗濯も多い、人数も多いから料理も沢山しなくてはならない。お弁当システムと言って俺達の店の従業員用の弁当も作らねばならない! 出来るか?」
「やります!! 覚えたいです!! やらせてください!」


 こうして俺達は何時ものやり方でジュッとして貰い、ロスターナと言う獣人の青年を迎え入れることになった。
 家の仕事を一手に任せられるとなればかなり楽だ。
 拠点に到着すると何時もの如く驚いていたが、彼に声を掛けて家の中に入って貰い、家の中では靴を脱ぐように伝え、まずはお風呂へ案内する。
 俺が使い方を教えると理解した様で、その間にカナエに服一式とタオル系を用意して貰った。
 これで菊池が来てもキャンピングカーで寝泊まりは無くなったな。
 男性で良かった。
 お風呂から上がって耳の掃除等済ませてやってきたロスターナは、拠点の中を見てキョロキョロとしていたが、台所を見て目を輝かせていた。
 そしてカナエがテリアを呼んでくると、テリアは小さくお辞儀し、ロスターナも小さくお辞儀した。


「ロスターナ、君に料理を教える先生のテリアだ」
「テリアです。よろしくお願いします!」
「こちらこそ、色々教えてください」
「はい! ではまずこの本を読んでおいてください!」


 そう言って手渡したのはアッチの世界の料理の本数冊。
 一般的な家庭料理から、鍋料理、スープ料理の三冊のようだ。


「まずはそれが基本になります」
「なんて素晴らしい……香辛料がこんなに!」
「うちでは香辛料は気にしなくていいぞ」
「沢山ありますからね」
「天国ですか!?」
「お昼に驚いてみてください!」
「楽しみにしてます!!」
「テリア、洗濯の方法も教えてやってくれ」
「分かりました」


 そう言うと、後はテリアに任せて俺達はその間に各所に移動しながら補充したりしつつ、時計が11時を指してから直ぐに拠点に帰ったのだが――。


「お洗濯楽しいいいい!!」
「泡で汚れがドンドン落ちますよね!!」
「こんな快感初めてぇ――!!」


 と、若干言動に問題がありそうだが、ロスターナは幸せそうだ。
 俺達の存在に気付いたのか、頬を赤らめつつ「お帰りなさいませ、先生とカナエさん」と挨拶してくれた。


「本当にこんな洗剤と言う物があるなんて驚きです。しかも柔軟剤と言うのを使った後のふんわり具合……」
「家の事まで中々手が回らなくてな、ロスターナには苦労を掛けるが」
「いえいえ、天職です。料理洗濯掃除に庭いじり、何でも致します」
「それは有難い」
「掃除用具の場所も教えておきました」
「ありがとうテリア」
「まずは料理を作る時はテリアちゃんと一緒にお願いしますね」
「分かりました。テリア先生、手取り足取り、お願いしますね?」
「はい、手取り足取り鞭とり頑張ります!」
「「鞭」」
「まぁ! 大人のジョークが通用するなんて! 素敵なレディだわ!」
「うふふ」
「あの、ロスターナさんは男性ですか? 女性ですか?」
「男性よ? 喋り方と仕草が女性なだけで」
「そ、そうですか」


 ――扱いづらいっていうのはこういう事か!
 通りで納得した!!


「いけない、お弁当作らなきゃ! ロスターナさんは見学していてくださいね? まずは見る事からです!」
「はいテリア先生!」


 こうして二人が厨房に立ち、28人分のお弁当を作る事になるのだが、具沢山サンドイッチは今日も豪勢に作っているようで、腹持ちはきっといいだろう。
 胡椒もふんだんに使っている様で、ロスターナさんは感動している。
 最早涙を流している。
 更にコーンスープでも感動し……情緒が大変そうだ。


「28人分出来ました!」
「これを配達ですか?」
「そうですね。ロスターナさんにお願いしたいんですが、配達先と数を教えますのでついて来てください」
「はい。シッカリと覚えるわ!」


 こうして28人分の弁当セットを手にすると、意外とロスターナさんは力持ちのようで、細マッチョかもしれない……獣人だからだろうか。
 まず第一号店である化粧品店に到着すると「お弁当でーす」と声を掛け5人分机に置く。
 次に二号店の銭湯に行きこれまた「お弁当でーす」と声を掛け3人分を机に置く。
 三号店はお菓子屋で、戦争が凄いので一応声だけ掛けて弁当10人分を机に置く。
 四号店は紳士の集まりなのか、静かだがダンディーだ。そこで「お弁当でーす」と声を掛けて机に10人分を置いて本拠地に戻る。


「この後、俺たちの昼食が終わる頃に空容器を取りに行けば大丈夫です。お店の従業員は数人ずつ交代で食べると思うので、食べ終わっていない人の分は急かしたりしないで次にお弁当を配達に行く時に回収して下さい。」
「なるほど、分かったわ。これなら私にも出来そう」
「その後私と一緒に私達のお昼ご飯作り手伝って下さいね」
「分かったわ、テリア先生!」


 うん、菊池が混乱する姿が見える。
 だが、いい刺激になるだろう。
 こうして夕方になるまで各自色々と動き回り、夕方5時、最初に締まる化粧品店にて給料を手渡すことになるのだが――。

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