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第一章 要らないと言うのなら旅立ちます。探さないで下さい。

01 召喚されたけどスキルが文字化けして読めなかったそうで雑魚扱いされたが?

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 ――それは突然起こった修学旅行中のバスの事故。
 世界は暗転し、大きな光の中を通る感覚に死んだことを悟ったのだが「先生」と言う声にハッと目が覚めた。
 そこは見た事もないような広場で、俺と生徒四人が座り込んでいた。
 いや、見た事はある。
 寧ろそっち系のアニメをよく見ていたので何となくわかる。
 これは――異世界転移だ!


「おお。お目覚めになりましたかな?」


 そう言ってデップリと太った王冠を付けた男、多分国王だろうと思われる男が口にする。
 俺達は立ち上がり、周囲を見渡しても俺を含めて教え子の五人。
 どうせ「勇者様世界をお救い下さい」とか言う王道パターンだろうかと思っていると――。


「あなた方を召喚したのは、我が国の危機なのです。近隣の国々から攻め落とされようとしている。どうか力を貸して頂きたい。その為には大きな力を持つ異世界の者が必要でした……。あなた方は選ばし者たちなのです!」


 と、芝居掛った口調で口にする国王陛下を見ても、なんとなく危機感しか感じなかった。
 コイツの言っていることは事実か? それとも虚言か?
 ただ、コイツの言う事を聞くのは危険な気がする……少なくとも俺はそう感じていた。


「元の世界に戻る方法は?」
「申し訳ありませんが……」
「そうか」


 つまり、この世界に来たからにはこちらの世界で生きていくしかない。
 俺一人で生徒たちを守れるだろうか……そう思っていると、クラスの男子の中心であった井上が拳を振り上げて雄叫びを上げた。

「来た来た来た――!! 異世界転移!! スキルとか色々あるんだろ!? もったいぶらずに教えてくれよ!!」
「もう井上君ったら」
「でも異世界転移したなら血が騒ぐよな!! もう将来の不安とかないし勝ち組だろ!?」


 そう口にするのは井上と水野と菊池。
 三人は良く学校でも一緒にいて、所謂学年カーストの上位にいつもいる面子だった。
 それに対して、俺の傍で震えあがっている姫島は学校でも目立たないタイプではあったが、何にでも真摯に頑張る素直な生徒だった。


「姫島、大丈夫だから」
「先生……」
「では、スキルチェックを行います」


 そう言うと、大きな石板を二人の神官が持ってくると、一人ずつ鑑定していく。
 案の定と言うか、想定内だったが三人は優れた力があったようで、「国の為に頑張ります!」と乗り気だ。
 そして俺と姫島の番になると――。


「あ――……この二人はハズレですな」
「ハズレとは?」
「我々が望んでる力を持っていらっしゃらない。王様、これでは使い物になりませんぞ」


 俺と姫島を見て神官がそう嘆くと、国王は「三人もいれば十分だ」と俺達を召喚しておきながらゴミを見る目をして溜息を吐いた。


「一応聞こう、どんなゴミスキルがあったんだ?」
「ゴミスキルってっ」
「ウケルんだけど」


 そう語る生徒達には溜息しか出ないが、神官はそれが――……と口にすると。


「文字が読めないのです」
「文字が読めないとは?」
「所謂ハズレと言われる異世界人は、皆さん揃って此方から文字が読めない。そうなっているんです」
「ああ、確かにそうであったな……。ならばその二人は城から出て行って貰うしかないが、召喚したのに放り出す訳にもいくまい。金だけでも渡してやるからサッサと去れ」
「しかし、井上、水野、菊池、お前たちは大丈夫なのか?」
「ハズレの先生達よりはこの世界で有利に過ごせそうですし?」
「ハズレの先生よりはね」
「ハズレ二人で仲良く異世界でも堪能したらどうですかー?」


 そう言って馬鹿にした目でクスクスと笑い、姫島は今にも泣きだしそうだ。
 その姫島の肩に手をあてると、俺は笑顔で三人を見た。


「そうか! ならば俺たちの事は気にせず存分に楽しむといい! 姫島の事は先生が面倒を見よう。君たちはこの異世界で死なない程度に頑張ってくれ!」
「は? 死ぬわけねーし?」
「そっちこそ直ぐ死ぬんじゃないですかー?」
「でも、中園先生と離れるのは私嫌だな~。折角のイケメン枠が無くなるっていうかー?」
「俺達でも十分だろう?」
「ま、異世界で素敵な男性をみつければいっか!」


 そう語る三人を他所に、布袋を一人につき一つ用意され俺と姫島の前に出される。
 持ってみると結構重く、ジャリッと言う音が聞こえてお金だと分かった。


「一人に付き金貨50も出してやったんだ。さっさと城から出て行け雑魚めが」
「ざーこざーこ!」
「「あははははは!」」
「先生に対してそんな言い方っ!!」


 ここにきて初めて姫島がそう叫んだが、俺は彼女の肩に手を置くと首を振って溜息を吐き、彼女と共に城を後にした。
 異世界だと言うのが嫌でも分かる空気に風景。
 問題は色々あるが……取り敢えずやるべきことは三つほどある。


「姫島」
「はい」
「自分のスキルを見る方法分かるか? こう、ステータスとか言えば開くとか」
「私には分からないです……」
「スキルボードが文字化けしてたって事だよな?」
「そうですね……」
「取り敢えず意識して自分を調べてみたいが……『鑑定』してみるか」


 そう言った途端、ブオン! と言う音と共に何かが出てきた。
 どうやら自分にカーソルを合わせて『鑑定』と言えばスキルが視れる……のだろうか?
 カーソルを合わせるというのも言い方がアレだが。
 行き成り出てきたスキルボードに姫島も驚き固まっている。


「姫島、自分を調べたいと思いながら『鑑定』と言ってみろ」
「はい! えっと……『鑑定』! ……わ! 何か出ました!」
「お互い見せあえるか?」
「そうですね、情報を共有するのは大事かと」


 こうしてお互いのスキルを見ることになったのだが――俺のスキルは以下の通り。
【拠点(キャンピングカーアリ)】【危険察知】【鑑定】【空間収納】【剣術10】……剣術10は多分、俺が長年やってきた剣道のスキルだろう。戦闘に向いているのか分からないし、最大何十まであるのか分からない。
 しかし【拠点】って中々良いんじゃないか?
【拠点】を『鑑定』すると以下の事が書かれていた。

【拠点の中にいる間はどんな敵でも一切入ってこれない。拠点レベルが上がれば色々選べるようになる。複数の拠点を選ぶことも可能だが、まだレベルが足りません】

 なるほど……?
 では、拠点レベルが足りないを鑑定すると、以下の通りが出た。

【拠点レベルを上げるには、戦闘して経験値を溜めるか、商売をして経験値を溜めるかのどちらかを選べます。冒険者の道を選ぶか、商人の道を選ぶかは自由ですし、両方取っても構いません】

 つまり――冒険者ギルドに登録するか、商人ギルドに登録するかが必要と言う事だ。
 確かに身分証明代わりには使えるし、何とかなりそうだ。


「この鑑定って便利だな」
「ほんとに便利ですね」
「もう少し自分のスキルを調べよう」
「そうですね」


 そう言って物陰に隠れながら俺達は自分のスキルを調べていくのであった――。



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