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第四章 国民の為の諸々も終わり、自分の引き際を知る。
54 シュライの亡命。
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「こっちの大陸のテリサバース教会の事はよ――く分かった。金貨を脅して貰って、更に貰った上で異端審問に国王だから掛けられないが、国自体を【異端者の国】と言う差別用語で広めるというのも良く分かった」
「――あり得ません!! なんですかその馬鹿げた話は!! 兄上は何も悪い事は無さっていない! 国を富ませる為に、国民が飢えない為にどれだけ頑張ってきたと思っているのです!!」
「シュライ……」
「シュライ兄さま」
そう語る皆には悪いが、俺の心はもう決まっていた。
「シュリウス」
「はい兄上」
「これより先のシュノベザール王国は、シュリウスが国王となれ」
「なっ!! 本気で言っているのですか!?」
「この国を今異端の国にする訳には行かない。それにシュリウスならファルナと一緒にバランドス王国も治めることは可能だろう?」
「確かに私も国を治める為に色々と勉強しましたが……」
「お互いに想い合っているというのなら、子を多く設けて片方ずつ治めさせればいい」
「兄上……」
「シュライ兄さま……」
「ただ、国民と周辺国には俺が何故亡命する事になったのかは広めてくれ。流石に幾つかの国からテリサバース教会に文句の書簡なり届けば少しは焦るだろう。だがその頃には俺は既に亡命していない。探そうにも探すことが出来なくなる」
「確かに、バランドス王国、ネバリ王国、ハルバルディス王国の三つから怒りの手紙が届けば……」
「テリサバース教会を国から追い出す等の脅しは掛ける事は可能だろうな。だが肝心の俺はアツシ兄上のいる神々の島に亡命していて戻る事は出来ない。と言う表向きだ」
「確かに拠点があれば通い放題だしな」
「ロスターニャには申し訳ないが俺と一緒にいて貰う。アイテムボックスも使えるし、俺の代わりに氷を運んで貰う事も可能だからな」
「確かに氷は兄上にしか作れませんからね」
そう言うと俺は頷き、今度はアツシ兄上をみた。
アツシ兄上は無論怒りの形相ではあったが、大きく溜息を吐くと「OK! シュライは俺が引き受けよう」と口にし、苦笑いしている。
「シュライは今まで頑張ってきたんだし、ジュノリス大陸のリゾート地に家を一軒と、ジュノリス大国にも一軒プレゼントしてやるよ。そこで暫くエンジョイだな」
「ありがとう御座います」
「金貨はそっちの金貨と同じだし問題はないだろう。だが1000枚もの金貨どうやって払ったんだ?」
「他国の気候を安定させている為に定期的に収入として入るのと、魔道具のマージン等ですかね」
「なるほど、定期収入はデカいな」
「ええ、まだ半分以上は残ってますよ」
「そりゃデカい。一生遊んで暮らせるだけの金貨はあるってことか」
「ええ」
「取り敢えずジュノリス大国に家を建ててやるから、暫くはそっちでの生活に慣れてくれな? その用意が終わるまでは諸々話し合いも必要だろうからこの国の拠点にいるといい」
「分かりました」
「緑の魔石は3年分は作ってあるから大丈夫よ」
「リゼル姉上……」
こうして話が纏まると、俺は頭に巻いていた王だけが巻く事を許されるターバンを外し、シュリウスに手渡す。
シュリウスは涙をホロホロと流しながらも、俺が国の為に犠牲になる事を悲しんでいるのだろう。
「俺は国の為にやるべき事をやった。最後の仕事は――俺がいなくなることだ」
「あに……うえ……っ」
「なに、ほとぼりが冷めたらまた国にひょっこり戻ってきて何だかんだと動くんだ。その為にテリサバースの動きには注意しておいてくれよ」
「……はい」
「よし、んじゃ拠点で後は話すか」
「そうですね。その前に、俺がシュリウスに王を譲るという書面を書いて行っていいですか?」
「無論」
そう言うと俺は羊皮紙にその文面を書いて判子を押し、俺の愛用した机に別れを告げると、ロスターニャが「必要な洋服類はアタシが二人分持ってくるわ」と言って俺達の部屋に向かった為、先にアツシ兄上の拠点へと向かう。
無論此処にも遠隔用の魔道具は置いてある為、今回のテリサバース教会からのやり取りはネバリ王国とハルバルディス王国に通達した。
今後の国王はシュリウスにする事も、今後の市場を作る事やリゾート地を作るのもシュリウスに任せる事も記載した。
亡命の事は敢えて書かなかった。
アツシ兄上は俺とリゼルに珈琲を出してくれて、「大変な事になったな」と小さくぼやいたアツシ兄上に苦笑いしながら「ある意味、いい最後とも言えますがね」と口にする。
「俺はやるべき事はやり終えて、まだまだこれからの所もありましたが……出来れば最後まで見ておきたい事ばかりですが、大事な国民を飢えさせない、民を富ませるという意味では俺の目標は達成している訳です」
「……そうだな」
「その上で、テリサバース教会に目を付けられ、俺がいては先に進めないというのなら、ここが引き際なのでしょう」
「引き際ねぇ……確かに争うにしても分が悪いか」
「ええ。国民に迷惑を掛けられないというのが俺の考えです」
「実に国王らしい考えだ。国民の為にすんなり国王を諦め切れると事もなんともまたアッサリしてるというべきか否か」
「国民を思うが故に出来る事ですよ」
「そうか……」
「リゼル、結婚式まではしてやれなくてすまないな」
「気にしないで? これまで頑張ってきたんだもの。少しお互いゆっくりしましょう?」
「そうだな」
そう話していると俺宛にハルバルディス王国からとネバリ王国からの手紙が届き、今すぐに国からテリサバース教会を追い出す内容と、テリサバース教会へ対しての怒りの手紙を送る事になったらしい。
今後二つの国ではテリサバース教会を入れることは無いとさえ記載されており、二国が如何に怒っているのかがよく分かる。
――それから暫くはシュノベザール王国にあるアツシ兄上の拠点での生活が始まり、ロスターニャが料理が出来た事で助かったが、食事の面も洗濯などの面も助かっている。
無論氷や砂糖を届けてくれるのもロスターニャだ。
外の事は気になるが、ロスターニャ曰く国民は大激怒中らしく、アツシ兄上が連れてきたテリサバース教会に「どうすれば国王を元に戻して貰えるのか」と聞きに行っているようで、その事も含めてテリサバース教会に手紙を送っては返事が来ない日々を過ごしてるらしい。
テリサバース教会も此処まで反発があるとは思っていなかったらしく、急ぎ大司教たちが訪れたらしいが、既にその頃には俺の姿は国には表向きには無く――。
「兄上でしたら亡命なさいましたよ。あなた方の所為でね」
とシュリウスの冷たい一言で焦った大司教たちは何処に亡命したのかを聞いていたらしいが――神々の島に既に亡命したことを知ると、急ぎ連れ戻しに行こうとしたものの、天候は既に荒れており船を出すことも出来なくなってしまっていた事で、諦めるしかなかった様だ。
「全く持っていい気味ですよ!! 大司教たちは外を歩けば石を投げつけられてましたよ」
「ははは! 国民の怒りが爆発した訳か」
「ザマァないな!!」
そう語る俺達。
その間にロスターニャにはもう一度城に扉を付けて貰い、何時でも帰れるようにした訳だが、暫くは帰らない方が身の為だろうという事で、ついにジュノリス大国への引っ越しが始まったのであった――。
「――あり得ません!! なんですかその馬鹿げた話は!! 兄上は何も悪い事は無さっていない! 国を富ませる為に、国民が飢えない為にどれだけ頑張ってきたと思っているのです!!」
「シュライ……」
「シュライ兄さま」
そう語る皆には悪いが、俺の心はもう決まっていた。
「シュリウス」
「はい兄上」
「これより先のシュノベザール王国は、シュリウスが国王となれ」
「なっ!! 本気で言っているのですか!?」
「この国を今異端の国にする訳には行かない。それにシュリウスならファルナと一緒にバランドス王国も治めることは可能だろう?」
「確かに私も国を治める為に色々と勉強しましたが……」
「お互いに想い合っているというのなら、子を多く設けて片方ずつ治めさせればいい」
「兄上……」
「シュライ兄さま……」
「ただ、国民と周辺国には俺が何故亡命する事になったのかは広めてくれ。流石に幾つかの国からテリサバース教会に文句の書簡なり届けば少しは焦るだろう。だがその頃には俺は既に亡命していない。探そうにも探すことが出来なくなる」
「確かに、バランドス王国、ネバリ王国、ハルバルディス王国の三つから怒りの手紙が届けば……」
「テリサバース教会を国から追い出す等の脅しは掛ける事は可能だろうな。だが肝心の俺はアツシ兄上のいる神々の島に亡命していて戻る事は出来ない。と言う表向きだ」
「確かに拠点があれば通い放題だしな」
「ロスターニャには申し訳ないが俺と一緒にいて貰う。アイテムボックスも使えるし、俺の代わりに氷を運んで貰う事も可能だからな」
「確かに氷は兄上にしか作れませんからね」
そう言うと俺は頷き、今度はアツシ兄上をみた。
アツシ兄上は無論怒りの形相ではあったが、大きく溜息を吐くと「OK! シュライは俺が引き受けよう」と口にし、苦笑いしている。
「シュライは今まで頑張ってきたんだし、ジュノリス大陸のリゾート地に家を一軒と、ジュノリス大国にも一軒プレゼントしてやるよ。そこで暫くエンジョイだな」
「ありがとう御座います」
「金貨はそっちの金貨と同じだし問題はないだろう。だが1000枚もの金貨どうやって払ったんだ?」
「他国の気候を安定させている為に定期的に収入として入るのと、魔道具のマージン等ですかね」
「なるほど、定期収入はデカいな」
「ええ、まだ半分以上は残ってますよ」
「そりゃデカい。一生遊んで暮らせるだけの金貨はあるってことか」
「ええ」
「取り敢えずジュノリス大国に家を建ててやるから、暫くはそっちでの生活に慣れてくれな? その用意が終わるまでは諸々話し合いも必要だろうからこの国の拠点にいるといい」
「分かりました」
「緑の魔石は3年分は作ってあるから大丈夫よ」
「リゼル姉上……」
こうして話が纏まると、俺は頭に巻いていた王だけが巻く事を許されるターバンを外し、シュリウスに手渡す。
シュリウスは涙をホロホロと流しながらも、俺が国の為に犠牲になる事を悲しんでいるのだろう。
「俺は国の為にやるべき事をやった。最後の仕事は――俺がいなくなることだ」
「あに……うえ……っ」
「なに、ほとぼりが冷めたらまた国にひょっこり戻ってきて何だかんだと動くんだ。その為にテリサバースの動きには注意しておいてくれよ」
「……はい」
「よし、んじゃ拠点で後は話すか」
「そうですね。その前に、俺がシュリウスに王を譲るという書面を書いて行っていいですか?」
「無論」
そう言うと俺は羊皮紙にその文面を書いて判子を押し、俺の愛用した机に別れを告げると、ロスターニャが「必要な洋服類はアタシが二人分持ってくるわ」と言って俺達の部屋に向かった為、先にアツシ兄上の拠点へと向かう。
無論此処にも遠隔用の魔道具は置いてある為、今回のテリサバース教会からのやり取りはネバリ王国とハルバルディス王国に通達した。
今後の国王はシュリウスにする事も、今後の市場を作る事やリゾート地を作るのもシュリウスに任せる事も記載した。
亡命の事は敢えて書かなかった。
アツシ兄上は俺とリゼルに珈琲を出してくれて、「大変な事になったな」と小さくぼやいたアツシ兄上に苦笑いしながら「ある意味、いい最後とも言えますがね」と口にする。
「俺はやるべき事はやり終えて、まだまだこれからの所もありましたが……出来れば最後まで見ておきたい事ばかりですが、大事な国民を飢えさせない、民を富ませるという意味では俺の目標は達成している訳です」
「……そうだな」
「その上で、テリサバース教会に目を付けられ、俺がいては先に進めないというのなら、ここが引き際なのでしょう」
「引き際ねぇ……確かに争うにしても分が悪いか」
「ええ。国民に迷惑を掛けられないというのが俺の考えです」
「実に国王らしい考えだ。国民の為にすんなり国王を諦め切れると事もなんともまたアッサリしてるというべきか否か」
「国民を思うが故に出来る事ですよ」
「そうか……」
「リゼル、結婚式まではしてやれなくてすまないな」
「気にしないで? これまで頑張ってきたんだもの。少しお互いゆっくりしましょう?」
「そうだな」
そう話していると俺宛にハルバルディス王国からとネバリ王国からの手紙が届き、今すぐに国からテリサバース教会を追い出す内容と、テリサバース教会へ対しての怒りの手紙を送る事になったらしい。
今後二つの国ではテリサバース教会を入れることは無いとさえ記載されており、二国が如何に怒っているのかがよく分かる。
――それから暫くはシュノベザール王国にあるアツシ兄上の拠点での生活が始まり、ロスターニャが料理が出来た事で助かったが、食事の面も洗濯などの面も助かっている。
無論氷や砂糖を届けてくれるのもロスターニャだ。
外の事は気になるが、ロスターニャ曰く国民は大激怒中らしく、アツシ兄上が連れてきたテリサバース教会に「どうすれば国王を元に戻して貰えるのか」と聞きに行っているようで、その事も含めてテリサバース教会に手紙を送っては返事が来ない日々を過ごしてるらしい。
テリサバース教会も此処まで反発があるとは思っていなかったらしく、急ぎ大司教たちが訪れたらしいが、既にその頃には俺の姿は国には表向きには無く――。
「兄上でしたら亡命なさいましたよ。あなた方の所為でね」
とシュリウスの冷たい一言で焦った大司教たちは何処に亡命したのかを聞いていたらしいが――神々の島に既に亡命したことを知ると、急ぎ連れ戻しに行こうとしたものの、天候は既に荒れており船を出すことも出来なくなってしまっていた事で、諦めるしかなかった様だ。
「全く持っていい気味ですよ!! 大司教たちは外を歩けば石を投げつけられてましたよ」
「ははは! 国民の怒りが爆発した訳か」
「ザマァないな!!」
そう語る俺達。
その間にロスターニャにはもう一度城に扉を付けて貰い、何時でも帰れるようにした訳だが、暫くは帰らない方が身の為だろうという事で、ついにジュノリス大国への引っ越しが始まったのであった――。
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