上 下
45 / 55
第三章 ノベルシカ王国の暴走と崩壊と……

45 ノベルシカ王は怒りをそのままにネバリ王国に狙いを定める。

しおりを挟む
 ――ノベルシカ王国side――


 発展途上国がふざけやがって!!!
 その気持ちばかりが膨らんで、神々の国の酒だというワインをラッパ飲みしていた。
 高級な酒だというが知った事か!
 発展途上国であるシュノベザール王国と神々の島の神々が繋がっているなんて情報一切無かった!!
 ましてや、神々の国から神々と呼ばれる国王達が来るなんて思いもしてなかった!!
 それならば、我が国にきて俺と仲良くすべきだろう!?
 そう思っていたのに、俺はアツシ国王陛下の言う言葉が一切理解出来なかった。
『こくないきょうきゅう』?
『こくがいゆしゅつ』?
 何のことだ?
 辛うじて分かったのは『国内の安定』と言う事だけ。

 国内ならば我が国とて安定している。
 貴族たちは多く俺を支持してくれるし、国民は下々の事だろう? そんな奴等の事など知った事ではない。
 国内安定とは貴族の安定の事を差すのだと思っていた。
 所がだ。
『下々である国民あっての国内安定』だという事を知って顔から火が出る程恥ずかしかった。
 それと同時に、【何故下々にまで気を配る必要がある?】そういう疑問に捕らわれた。

 下々の者たちは上の者たちの言葉を聞いて動いていればいいだけの存在だろう。
 それなのに、何故その者たちの言葉まで一々聞かねばならないのだ。
 神々の国の奴等も馬鹿ばかりか?
 そう思っていたのにネバリ国王は「まさしくその通りですな」等と口にして笑い合っている。
 それが更に俺をイラつかせた。


「発展途上国の癖に」


 忌々しくそう口にしたが誰も聞いてはいない。
 いや、無視されたと言って過言ではない。
 このノベルシカ王国のゼフェル様を無視するなど許される事では無かった。
 だが相手は神々の国の神々の国王がいては分が悪い。
 ましてや発展途上国のシュライはアツシ国王陛下の義兄弟だと言われるほどに大事にされている。
 手を出せばこちらに天罰が下りそうだ。

 シュライ等、国内安定の為に天候を操り我が国の雨続きの国から日差しを出す程度の能力しかない癖に。
 たかだが『天候を操る程度の能力』しか持って生まれなかった癖に何て図々しい。
 頭を下げて「お国の為に力を使わせてください」と奴隷のように這いつくばっていればいいものを!!


「クソッたれが!!」


 そう言ってワインを飲みほしたガラス瓶を投げ捨てるとガシャーンと音を立てて割れた。
 ああ、ムシャクシャする。
 いっそあの瓶のようにグシャグシャに壊してやりたい。
 だが、シュライのいる国に戦争を仕掛ければ間違いなく神々の怒りを喰らう。
 それならば――丁度領土を広げたかった所だ。
 ネバリ王国に戦争を仕掛けて、バランドス王国の隣の国になるというのも悪くない。
 シュライの弟のシュリウスはウザい男だが、アイツはその内俺の部下にしてやってもいい。
 頭のいい奴は俺の下につけばいいのだ。
 そうすれば、流石のシュライも弟のシュリウスが俺の下僕になった事で俺の凄さを知るだろう。
 たかだが『天候を操る程度』しか力がないのだから、今後は金をとらずせっせと俺の国の為に力を使うだろうしな。


「そしたらその内、このシュノベザール王国をも俺の領地にしてやる」


 そしたらシュライ等奴隷にして好き勝手扱ってやろう。
 そう言えば婚約者のリゼルは中々美しい娘だった。
 属国の娘とはいえあれだけの美しさがあれば、俺の側妃にしてやってもいい。
 妹もだな。
 そう思うとニヤニヤして笑みが止まらず、まずは国に帰ったら戦争の準備を進めねばとベッドに横たわる。
 質のいいシーツに驚いたが、これも何れ自分のものになるのだと思えば気分もいい。


「どれもこれもぜ――んぶ俺の物だ!」


 そして神々の島に渡り、何時かは俺も神の一員になるのだ。
 シュライのような義兄弟ではなく、神々の一員に!!
 あの輪に入り、自分こそが相応しい人間だと分ればアツシ国王陛下たちも俺の事を素晴らしいと賞賛して下さるだろう。
 やはり下々の事ではなく、俺のいう事が正しいのだと理解もするだろう!
 明日はお忍びでシュノベザール王国を周ると言っていたが、俺はそんな気など全くない。
 下々の生活を見て何になる。

 全く、変わった神々の者たちだ。
 いや、神々だからこそ下々が気になるのか?

 まぁいい、俺が付き合う事でもあるまい。
 ネバリ国王は一緒に行く気らしいが、下々の生活を見に行く等馬鹿げている。
 全く、馬鹿の考える事は全く分からんものだな。
 賢い俺は下々の事よりも、先ずは領地拡大と言う大きな事をやってのけねばならない。
 確かにネバリ王国は領土としては広いが、所詮は田舎王国。
 主な産業も農耕と畜産しかない。
 特に畜産には力を入れているからか、わが国では貴族達から『糞の国』とさえ影で言われている。
 別にそこまで欲しい国ではないが、俺の野望の為に消えて貰おう。

 神々の一員になる為の犠牲だ。
 有難く死んでもらった方がいいからな。
 気分よくそのまま眠り、翌朝この上なく美味しい朝食に驚きつつも、土産にワインを50本寄こせと言ったら「シュライ国王陛下への贈り物ですので」と断られた。
 甘味の食べ物も、ケーキと呼ばれた物も全て「シュライ国王陛下への贈り物ですので」と断られ、だったら何があるのだと反対に伝えると『砂糖』と『ハチミツ』を手渡された。
 確かに高級品だが、高級品だが!!!!


「俺が欲しいのは神々の国の食べ物や飲み物だ!!」
「では、友好を深められては如何でしょうか?」
「言われなくともその内嫌と言う程友好を深めて見せる!!」
「でしたらその時に頂いたら宜しいのでは?」
「クソ!!」


 そう言って無表情で見下すメイドに、頭に来て城の床に唾を吐き捨て馬車に乗って帰った。
 この事がまさか神々の皆に知れ渡るとも知らず、イライラしながらノベルシカ王国に帰り、土産品であるハチミツや砂糖を机に置くとソファーにドカリと座った。
 全く持って有意義な時間にすら無からなかった。
 だが、神々の面々とは多少なりと繋がりは出来ただろう。
 その内一員となるのだ、その為には――。


「おい、軍部大臣を呼んで来い」
「え? あ、はい!」


 ――ネバリ王国に戦争を仕掛けて消えて貰わねばな?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アヤノ ~捨てられた歌姫は骨を拾われる、のか?~

momomo
ファンタジー
成人の儀式である『託宣の儀』で前世を思いだした、新幹線事故によって死亡した者達。 孤児のロウは自身が転生者である事を黙ったまま、同じ転生者や他の者達とパーティーを組み、その世界で生きて行く。 捨てられた歌姫は骨を拾われる、のか? 題名が女性向け小説っぽくなってしまいましたが、男性向け(?)です。 どこにでも良くある、転生者の冒険物語。 『歌唱』『スティール』等のスキルで、5人のパーティーがドタバタと生きていく。 影の題名は『ミミ劇場?』です。 基本、お気楽系です。俺強ええーまではいきません。ハーレムもありません。 全50話ほどで、短文の閑話数話を挟む予定です。 閑話以外は、一話8000文字から9000文字程です。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

グライフトゥルム戦記~微笑みの軍師マティアスの救国戦略~

愛山雄町
ファンタジー
 エンデラント大陸最古の王国、グライフトゥルム王国の英雄の一人である、マティアス・フォン・ラウシェンバッハは転生者である。  彼は類い稀なる知力と予知能力を持つと言われるほどの先見性から、“知将マティアス”や“千里眼のマティアス”と呼ばれることになる。  彼は大陸最強の軍事国家ゾルダート帝国や狂信的な宗教国家レヒト法国の侵略に対し、優柔不断な国王や獅子身中の虫である大貴族の有形無形の妨害にあいながらも、旧態依然とした王国軍の近代化を図りつつ、敵国に対して謀略を仕掛け、危機的な状況を回避する。  しかし、宿敵である帝国には軍事と政治の天才が生まれ、更に謎の暗殺者集団“夜(ナハト)”や目的のためなら手段を選ばぬ魔導師集団“真理の探究者”など一筋縄ではいかぬ敵たちが次々と現れる。  そんな敵たちとの死闘に際しても、絶対の自信の表れとも言える余裕の笑みを浮かべながら策を献じたことから、“微笑みの軍師”とも呼ばれていた。  しかし、マティアスは日本での記憶を持った一般人に過ぎなかった。彼は情報分析とプレゼンテーション能力こそ、この世界の人間より優れていたものの、軍事に関する知識は小説や映画などから得たレベルのものしか持っていなかった。  更に彼は生まれつき身体が弱く、武術も魔導の才もないというハンディキャップを抱えていた。また、日本で得た知識を使った技術革新も、世界を崩壊させる危険な技術として封じられてしまう。  彼の代名詞である“微笑み”も単に苦し紛れの策に対する苦笑に過ぎなかった。  マティアスは愛する家族や仲間を守るため、大賢者とその配下の凄腕間者集団の力を借りつつ、優秀な友人たちと力を合わせて強大な敵と戦うことを決意する。  彼は情報の重要性を誰よりも重視し、巧みに情報を利用した謀略で敵を混乱させ、更に戦場では敵の意表を突く戦術を駆使して勝利に貢献していく……。 ■■■  あらすじにある通り、主人公にあるのは日本で得た中途半端な知識のみで、チートに類する卓越した能力はありません。基本的には政略・謀略・軍略といったシリアスな話が主となる予定で、恋愛要素は少なめ、ハーレム要素はもちろんありません。前半は裏方に徹して情報収集や情報操作を行うため、主人公が出てくる戦闘シーンはほとんどありません。 ■■■  小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも掲載しております。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

処理中です...