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第一章 国民が飢えることなく、まずはそこを目標に!

21 スキルボードを2年振りに見ると、見た事ないスキルが生えていた。

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 スキルボードを見ると、確かに【天候を操れる程度の能力・ただし特大】と言うのは書いてある。だが若干気になったネットスーパー等は無かった……残念過ぎる。
 その代わりだが、【ロストテクノロジー】と【アイテムボックス】言うのが生えて来ていた。
 聞いたことがある、【ロストテクノロジー】は、テリサバース教会が保護していると言う噂の超レアスキルだ。
 全く気にも留めてなかったが、【ロストテクノロジー】を調べてみると『異世界の様々なモノを作る事が可能、ただし多種多様の箱庭が必要となる。現在:可能な限り作れます』と書いてあった。


「「ロストテクノロジー」」


 思わず俺とアツシ様の声が重なった。
 そうか、転移ではネットスーパーやお取り寄せで、転生した場合は時期に応じてもしかしたらこの【ロストテクノロジー】が使えるようになるのかも知れない。
 もしくは『箱庭』が出現の主軸になっている可能性もある。


「ロストテクノロジーを持っている転移者はいないな」
「恐らく転生者にしかつかない者かもしれませんね」
「つまり、転移者はネットスーパーで」
「転生者にしてみれば失われた技術ですので、ロストテクノロジーと表記されるんじゃないでしょうか」
「つまり、ロストテクノロジーを使える者は転生者と言う事か?」
「記憶を持ってこなかったけれど、転生者と言うのはありえますね」
「つまりテリサバース教会が集めているロストテクノロジー持ちと言うのは」
「恐らく、転生者の事かと」
「テリサバース教会が何故……」


 謎は深まったが、転生者を集めている事は間違いないだろう。
 その上、箱庭師を多く召し抱えている。
 このシュノベザール王国にもテリサバース教会が一応あるが、昔は殆ど機能しておらず、たまに派遣で人が来る程度だ。
 今にも国として消えそうだったあの頃はそうだったが、今も発展途上と言う事もあり、ほぼ無人の教会が建っている。腹が立つ教会だ。


「俺の島国のテリサバース教会も色々あったが、独自に進化したって感じだな」
「そうなんですか?」
「ああ、一時期テリサバース教会を名乗る者たちが来たが、聖女はいるはなんわで揉めてな。結局『テリサバース教会は此方に来て離れてから随分と時が流れた。だが一神教は変わっていない。大事なのはそこではないのか?』って言ったら押し黙って帰って貰った」
「なるほど、そういう弊害もありましたか」
「なに、既に時が流れて長いのに今更色々変えろと言うのも難しい。それに、ロストテクノロジー持ちを探していると言っても流石にな」
「なるほど」


 しかし、テリサバース教会はロストテクノロジー持ちなんて集めて何がしたいんだ?
 確かに一部の高額なアイテムは作っているとは聞いたが、それ以上の事はしていない筈だ。
 この世界で失われた技術、そして前世の世界でこちらに来て失った技術。
 その二つと使えるとなると、テリサバース教会だけでなくとも欲しがる奴らは多いか。


「一応ロストテクノロジーを頭に想像してみたんですが、移動用の馬車は流石に無理そうでした。冷房冷蔵の馬車の購入はお願いしたいです」
「承った。最初は数個此方から寄贈しよう」
「ありがとう御座います」
「さてさて、次なるスキルの方はどうなっている?」
「えっと……生えていたのは【ロストテクノロジー】と【アイテムボックス】くらいで、後は特に生えてませんね」
「ふむ、変わりなしか。だがアイテムボックスはかなり有効だぞ」
「こうなると俺専用の箱庭師が欲しくなりますね。仕事は必須ですが、色々趣味の時間に作ってみたい」
「ここは一つ協定を結ばないか?」
「と言うと?」
「俺のネットスーパーでは工場で作るようなものは買う事は出来ない。だがそっちは作れるだろう?」
「ええ、作れますね」
「その代わり、ネットスーパーで買えるようなものはそっちでは作れない」
「そうですね……」
「お互いWin-Winの関係の為に、どうだろうか?」
「とはいっても作れるのが俺しかいませんし、国の事もありますからね」
「ああ、だから急ぎはしない。どうだろうか?」
「そういう事なら何とかしましょう」
「よし、これも書面に後で起こそう。まぁここの貸し出しは同じ日本生まれってので自由にしてくれ。無論カップ麺や御菓子類は好きに食べていい。大量に出して置こう」
「甘いクッキーとかあります?」
「勿論!! 何でも言ってくれ!!」
「では!!」


 と、欲しいものを言えばガンガン置いてくれたアツシ様に感謝しつつ、暫くは幸せに浸れそうだと思いながらあちらの世界の味を楽しむ事が出きる。
 感謝しかない!!
 ジュースなんて飲めないと思っていたのに……!!


「この拠点は幸せに満ちてますね!!」
「あはははは! 日本人ならそう思うよな!」
「思います。嗚呼、この袋麺の焼きそばにラーメン……懐かしい」
「好きなだけ食べていいからな! 遠慮しないでくれ」
「ありがとう御座います! 太らないように気を付けないとな」
「あははははははは!」


 こうして拠点から笑いながら出て来た俺達に周囲は驚いていたが、サファール宰相はホッと安堵しているようで、応接室にて互いに行う協定や、追々是非ジュノリス大国に来て欲しいと言う話も貰い、その時は是非にと言う事になった。


「そうそう、拠点でスキルボードを見せて貰ったが、彼は稀に見る才能を開花させていた様でね。良ければ専属の箱庭師を用意して上げるといい」
「そうですね、専属の箱庭師を用意して貰おう」
「畏まりました。して、その稀に見るスキルとは?」
「「ロストテクノロジーとアイテムボックスだ」」


 この言葉に周囲は騒めいたが「俺は国の為に使いたい」と口にすると、俺の今までの行動から必ず国の為に動くだろうと理解して貰っているのか、納得して貰えた。
 また――。


「俺の専属の箱庭師は男性にしてくれ。女性だとリゼルが不安がる」
「畏まりました」
「シュライは奥さん想いだな」
「ええ、とても大事な婚約者ですからね」
「ははは、俺も当時はそんな感じだったよ。今もそれは変わらないが」
「奥方様は今回来られてないんですね」
「ああ、お腹が大きくてな」
「なるほどです」


 そう言ってお互い穏やかに微笑みあう。
 その様子を大臣たちもホッと安堵した様子で見つめており、俺もアツシ様と会話が出来て良かったと思っている。
 その後、拠点を置く事で色々と迷惑をかけるかも知れないからと、定期的にシュノベザール王国国民とバランドス王国の国民が使えるだけの胡椒やコンソメを用意してくれる事になり、本当に頭が下がる思いだ。


「是非、今後も友好関係を」
「ええ、互いに友好関係を」


 こうして、笑顔調印等も終わり、終始笑顔で俺達がいた事で大臣たちは俺の存在の大きさを改めて知ったようだった――。

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