上 下
10 / 55
第一章 国民が飢えることなく、まずはそこを目標に!

10 ネバリ王国からの商隊との契約と、魚ギルドとの契約を果たし、次へと進む!

しおりを挟む
 ネバリ王国は最も友好国でもあり、酪農が盛んな国でもある。
 作物はバランドス王国には負けるものの、それなりの作物は充分にあり問題は無かった。
 しかし、此処で我が弟であるシュリウスが力を見せつけたのだ。


「この苗とこの苗ひと箱は駄目ですね。植えても直ぐ枯れます」
「え、あ、えっ!」
「質の悪い苗を持ってこられたのでしょうか? それとも水を与えるのを一日忘れたんでしょうか?」
「そうです、一日与えるのを此方は忘れてしまって」
「元気になる事はもう無いですね……。こちらの苗と後三つ程の苗箱は買っても無駄かと」
「そうか、それではその苗を退かして貰い、他に良さそうな苗を見繕ってくれるか? 出来るだけ多く種も買いたい」
「種は問題なさそうです。蚕の餌となるのも十分でしょう。作物の苗ならば先ほど退かした以外は全て元気そのものです」
「宜しい。それで纏めて買う場合割引はあるんだろうか?」


 そうネバリ王国から来た商隊のリーダーであるバリスに話しを付けると、呆然としながら日本で言う算盤の様な道具を弾きながら「金貨200枚になりますが」と言って来た為、それならばこの前オークションで売れた財宝二つ分で買えるのだが「もう一声」と口にすると悩んだ挙句「金貨180枚でしたら……」と言う事で即購入する事を決めた。
 我がシュノベザール王家にそれだけの金があるとは思っていなかったのだろうが、直ぐに財務大臣に伝えると恭しく頭を下げ、暫くすると金貨180枚入った麻袋を手渡し、ネバリ王国からの商隊のバリスは目を見開き驚いていた。


「シュノベザール王国はお金がないと聞いておりましたが」
「無ければ作ればいい。だが、作物に関しては元が無ければ作れない。これからもネバリ王国からの苗や種を期待している。是非今後も運んで来て欲しい」
「それでしたら、是非我がザーバン商会に連絡を! 直ぐに手配致します!!」
「ほう、国同士のやり取りではなく、商会が間に入る……と言う事か?」
「はい、我がザーバン商会はネバリ王国きっての商会です。決して損はさせません」
「ふむ……何れは我が国の品も買い取ってくれる……と言う事だろうか?」
「追々はそうなります」
「良いだろう。是非そうしてくれ。ネバリ王国には通達は必要か?」
「一言お言葉を添えて頂ければと」
「分かった。今後はザーバン商会と懇意にしよう。ネバリ王国の陛下にはくれぐれもよろしくと伝えておいてくれ」
「承りました!」
「また、こちらから売りたい品がある時は声を掛けたい。その時も頼むぞ」
「はい!」


 そういうと苗を箱庭師達が運びながらモザーラが一つずつ触って調べており、箱庭師達に指示を出しながら植える箱庭師を決めていたようだ。
 また、蚕は家持ちである箱庭師が持って行き、餌となる葉となる作物の木々も別便で運んでいた。
 今回欲しかったのは作物の苗だったので他の物は頼んでおらず、ザーバン商会とのやり取りは財務部の者たちに任せ、ホッと一安心だ。

 執務室に戻ると今度はドアをノックする音が聞こえ、魚ギルドの部隊が到着したと言う連絡を受け、直ぐにそちらに向かう事になった。
 早い到着だったが、飲み水となる雨を昼は小雨で、夜はそれなりの量で降らせていたので早めに来れたのだろう。


「初めましてだな。俺がシュノベザール国王シュライだ」
「お初にお目にかかる。この度シュノベザール王国に派遣された魚ギルドマスターのヘリオスだ。箱庭を使った漁業をしていると聞き、急ぎ馳せ参じた」
「その通りだ。その様子だと既に市場を見てきた様子だな」


 そう、あれから一夜干し等の魚の開きを市場に卸し、売りに出している。
 売り上げは上々、昼には売り切れる勢いで、場所をもっと広くして欲しいと言う嘆願書も届いているが、その為にはもっと漁師となる者たちを雇ったり、船を使った網漁もしなくてはならなった。
 だが、網漁をするにしても肝心の網が魚ギルドしか扱っておらず困っていたのだ。
 木材は廃村に日照りを常に浴びさせている為、乾燥は早く船を作る事は可能なようで、今日の朝連絡が来ていた。
 直ぐに船を作るよう指示を出しているが、現在木材を運んでいる最中だろう。


「一度箱庭の中の漁業と言うものを見せて貰いたい」
「ふむ、それは構わない。それで納得して頂けたら網を売って欲しいのだが?」
「それは構わない。沢山の網も無論持って来ている。だが出来れば魚ギルドでも魚を降ろしたいと考えている」
「その契約は後で行うとしよう。一か所に魚を売る場所が集中するのも良くないからな」


 こうしてヘリオスを連れて漁業をしている箱庭の中にはいると、釣りをしながら魚を得ては後ろで天日干しや一夜干しの為の作業をしている女性陣を見て驚いているようだ。
 実際に目にしてみなければ、箱庭で漁業が出来るとは思わないだろう。


「これは……」
「嘘では無かっただろう?」
「いや、これは本当に驚いた……箱庭師による革命が起こりますぞ」
「そうだろうな。箱庭師に聞いたところ、箱庭にいる魚は枯れる事は無いらしい」
「なんと!?」
「つまり一年中魚を得ることが可能と言う訳だ」
「……」
「我が国シュノベザール王国は土地がない。砂漠に覆われた土地だ。故に箱庭師の箱庭とは俺にとっては魅力的に見えた。その中にこそ求めて居たものがあるのではないだろうかとな。それで国を挙げて箱庭師を雇い一人ずつ調べた結果がこれだ」
「素晴らしい着眼点ですな」
「魚が摂れることで国民の飢えを多少は和らげることが可能になった。だが国民全員とまでは行かない。そこで魚ギルドが欲しかったのだ。どうだろうか? 網を多めに卸して貰う事は可能だろうか?」


 そう告げるとヘリオスは強く頷き「これなら納得です! 直ぐに網を卸ろしましょう!」と言ってくれたので助かった。
 また、魚ギルドでも漁業がしたいと言う事だったので、この土地の特性を話した上で生魚は禁止と言う事を伝えると納得して貰い、一夜漬けや天日干しでしっかりと水分の取れた魚を売りに出す事で合意。
 国が得るマージンも話し合い、一通り決まり事が終えると外に出てしっかりとした契約を結ぶ。


「これからシュノベザール王国が発展するのを見るのが楽しみだ」
「まだまだ飢えには苦しむだろうが、少しずつ、だが着実に一歩ずつ進んでいる。これからの発展を是非その眼で見て欲しい」
「必ずや!」


 こうして魚ギルドマスターであるヘリオスもこの国に住む事になり、魚ギルドも直ぐに用意された。
 無論一夜漬けを売る為の箱も用意され、魚は二か所で売られるようになっていく。
 また、網漁が出来るようになり更に魚を売る事が可能になり、国民の飢えは少しずつ改善していきつつあった。
 動物性たんぱく質は大事だからな。

 こうなるとやはり炭も欲しくなる。
 次は木材を使った改革が必要だ。
 ドンドン伐っては水分を飛ばした木材をたんまり作った事もあり、次の一歩へと進んで行く。

 国民の家の改築工事だ。
 これにはネバリ王国から木材で作る家作りの業者を呼び寄せ、数年単位は掛かるだろうかと思われながらも住民たちの家の建て替えが進んで行く。
 それと同時に、炭師も国で雇い入れ、林業の盛んな箱庭の中で炭を作って貰い、夜の暖や炎の魔石が買えない者たちにとっての代用品として広がって行くのに、そう時間は掛からなった。


「さて、次なる改革に進もうか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

へぇ。美的感覚が違うんですか。なら私は結婚しなくてすみそうですね。え?求婚ですか?ご遠慮します

如月花恋
ファンタジー
この世界では女性はつり目などのキツい印象の方がいいらしい 全くもって分からない 転生した私にはその美的感覚が分からないよ

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します

もぐすけ
ファンタジー
 私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。  子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。  私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。  

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

処理中です...