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246 薬の正体。
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――ミーヤside――
カイルとリディアに使われたと言う茶葉を解析すること数カ月。
やっとひとつの可能性が見えてきた。
憂鬱とした気分を発散させるための薬に、脳への緊張を最大限まで無くす作用。その後の眠気を伴う様子から睡眠薬の強いものが使われているのが分かる。
薬物と言うにはとても酷い薬物ではなく、ただ、依存性の高い物であることは間違いない。
現時点では――だけれど。
ただ、問題としてこの依存性が余りにも高い事があげられる。
一度病みつきになってしまえば、楽になる身体を味わってしまえば、薬と酒だけでも極楽に感じてしまうだろう。
――余りにも危険な薬でもあった。
「リディアがアクセサリーを作ってくれていたのは不幸中の幸いね」
マウスで試したところ、これを使ったマウスのオスは生殖機能を失っていた。
三大欲求を全て消し飛ばせるだけの薬でもあったのだ。
発情した雌のマウスを入れても反応すらせず眠り続ける。起きても発情したマウスの雌を素通りして、いない者として扱うなど、問題点を上げるとキリがない。
これを治す為には――『破損部位修復ポーション』が必要だけれど、後1スキルが足りないが為に作れないもどかしさに苛立ちは募る。
ロストテクノロジーでは作る事は可能なのだろうか。
いいえ、でもこれは私の問題でもあるわ……何とかして後1スキルが上がれば……そう思い日々薬を作り続けているけれど、中々上がらないのがスキルでもあった。
『破損部位修復ポーション』は、脳にも聞くのかは定かではない。
けれど、あるに越したことは無いものであることは確かだった。
出来るだけ早めに対処する為にも、日夜薬を作り続け、新薬を作り続け、忙しい日々を送っているけれど――。
「ミーヤ、そろそろ寝なさい」
「アラーシュ……。聞いてちょうだい、カイルたちに使われた薬がやっとわかったわ」
「一体どんな薬だったのだ?」
「王都で出回っているあの例の薬と同じ成分よ。作っているのはモランダルジュ伯爵家だわ」
「そうか、やはりモランダルジュだったか」
「あなた?」
「ワシの影からも連絡があった。モランダルジュから大量の薬が使っている貴族の家に運ばれたそうだ。その一つに王家の厨房があったが、その薬はワシの元で止めている。厨房で働いている者たちは皆、王家及びダンノージュ侯爵家との神殿契約を結んでいるからな。金を積まれて薬を受け取ったがどうしたらいいかと連絡があった」
「まあ!! 王家にまで害そうとしていたの!?」
「ワシの方から今後も薬を運んでくると思うから、貰うだけ貰って薬は開けず全てダンノージュ侯爵家に持ってくるように伝えてある。これでも王家の盾だからな……剣にもなりえる我が家ではあるが……まだ剣を抜く時では無かろう」
「あなた……」
「影が言うには、薬を作っている少女はマリシアの姉でメリンダと言う名の娘らしいが、この娘、少々骨が折れるやもしれんぞ」
そう言って溜息を吐く夫に、私は同じく眉を寄せて小さく溜息を吐いた。
夫が骨が折れると言った人物は、大抵碌な事をしない愚か者だからだ。
「とはいえ、王家には明日伝えに行ってくる。また薬を使っている城に仕えている貴族は全員職を失う事になるが、これもまた防衛のためだから仕方ないな」
「そうね、何処で薬を盛られるか……。しかもこの薬は無味無臭よ」
「厄介な事極まりないな。陛下や王妃様用にリディアが作ったアクセサリーを用意して貰おうと思っている。丁度明日こちらに来るそうだ」
「でしたら、直ぐにでも作って貰いましょう。その後あなたが陛下の元へ行けば」
「ああ、多少貴族達は煩くなるだろうが、これでモランダルジュ伯爵家がどう動くかも見ておかねばな。リディアにはワシ等用にも作って貰おうとは思っている」
つまり、アラーシュも狙われる可能性がとても高い……と言う事でしょう。
私は強く頷きアラーシュに抱き着いた。
「嗚呼、アラーシュ……危険な事はもう二度としないと昔約束したのに」
「仕方ないのだよ。ダンノージュ侯爵家に生まれた以上、王家の盾であることと、王家の剣であることを義務づけられている。わが身の可愛さに王家に何かあっては大問題だ。盾と剣であることを義務として生きているからこそ、我がダンノージュ侯爵家は呪いも理由に、素晴らしい相手と結婚することを許されているのだから」
「けれど――」
「前国王陛下から君を奪ったことは、今でも忘れていないよ? 剣であり盾としての侯爵家であり、呪いもあったからね。君を得る為に前国王陛下と戦ったことも懐かしい思い出だ」
「もう! 私はあなたの今を心配してるのよ!?」
「今のワシを守れるのは……カイルの妻、リディアだけだろう。運命とは良く出来ている物だな」
そう言って抱きしめてくるアラーシュに私は大きく溜息を吐き、最早止めることが出来ないのだと悟るとアラーシュの頬を抓った。
「いたたたた」
「心配してますのよ? 心配しておりますの!」
「分かっている、分っているとも!」
「絶対無事でいてくださいませ。あなたが死んだら私も後を追いますわ」
「やれやれ、ワシはまだ死ぬ予定はないぞ。ひ孫も見たいしライトとロキシーの子供もみたいじゃろう?」
「そうですけど!」
「長く図太く生きる予定だから安心しろ。カイルにも教えるべきことはまだまだ山のようにある」
「そうですわね」
「手助けしてくれるかな、我が愛しの妻よ」
「ええ、あなた一人では心配ですもの」
こうしてやっと笑い合えるようになると、アラーシュは屋敷に来た影から例の薬の入った箱を貰い、その箱にはご丁寧にモランダルジュ伯爵家の蝋で押された判子まであったわ。
本来証拠隠滅するならこういう事はしないのに、馬鹿なのかしら?
「危険物は私が預かりますわ。こちらの箱に入れてくださいな」
「悪いな、無味無臭だが瓶から漏れたりはしないだろうか」
「その為の強い付与の付いた箱ですから。中に入ったモノは外に漏れだす事を防ぐ予防付与がされていますわ」
「そうか、では安心して仕舞っておけるな」
「これ以上数が増えない事だけを祈りますけれど」
そう言うと箱を閉め、明日リディアが着たら色々と話をしてくると言うアラーシュと共に部屋を出て共に風呂に入り、着替えを済ませて眠ったけれど――。
リディア……アラーシュの身も、王家の人々の身を守れるのも貴女だけよ。
そう胸の中で呟き、不安の中眠りについた夜の事。
カイルとリディアに使われたと言う茶葉を解析すること数カ月。
やっとひとつの可能性が見えてきた。
憂鬱とした気分を発散させるための薬に、脳への緊張を最大限まで無くす作用。その後の眠気を伴う様子から睡眠薬の強いものが使われているのが分かる。
薬物と言うにはとても酷い薬物ではなく、ただ、依存性の高い物であることは間違いない。
現時点では――だけれど。
ただ、問題としてこの依存性が余りにも高い事があげられる。
一度病みつきになってしまえば、楽になる身体を味わってしまえば、薬と酒だけでも極楽に感じてしまうだろう。
――余りにも危険な薬でもあった。
「リディアがアクセサリーを作ってくれていたのは不幸中の幸いね」
マウスで試したところ、これを使ったマウスのオスは生殖機能を失っていた。
三大欲求を全て消し飛ばせるだけの薬でもあったのだ。
発情した雌のマウスを入れても反応すらせず眠り続ける。起きても発情したマウスの雌を素通りして、いない者として扱うなど、問題点を上げるとキリがない。
これを治す為には――『破損部位修復ポーション』が必要だけれど、後1スキルが足りないが為に作れないもどかしさに苛立ちは募る。
ロストテクノロジーでは作る事は可能なのだろうか。
いいえ、でもこれは私の問題でもあるわ……何とかして後1スキルが上がれば……そう思い日々薬を作り続けているけれど、中々上がらないのがスキルでもあった。
『破損部位修復ポーション』は、脳にも聞くのかは定かではない。
けれど、あるに越したことは無いものであることは確かだった。
出来るだけ早めに対処する為にも、日夜薬を作り続け、新薬を作り続け、忙しい日々を送っているけれど――。
「ミーヤ、そろそろ寝なさい」
「アラーシュ……。聞いてちょうだい、カイルたちに使われた薬がやっとわかったわ」
「一体どんな薬だったのだ?」
「王都で出回っているあの例の薬と同じ成分よ。作っているのはモランダルジュ伯爵家だわ」
「そうか、やはりモランダルジュだったか」
「あなた?」
「ワシの影からも連絡があった。モランダルジュから大量の薬が使っている貴族の家に運ばれたそうだ。その一つに王家の厨房があったが、その薬はワシの元で止めている。厨房で働いている者たちは皆、王家及びダンノージュ侯爵家との神殿契約を結んでいるからな。金を積まれて薬を受け取ったがどうしたらいいかと連絡があった」
「まあ!! 王家にまで害そうとしていたの!?」
「ワシの方から今後も薬を運んでくると思うから、貰うだけ貰って薬は開けず全てダンノージュ侯爵家に持ってくるように伝えてある。これでも王家の盾だからな……剣にもなりえる我が家ではあるが……まだ剣を抜く時では無かろう」
「あなた……」
「影が言うには、薬を作っている少女はマリシアの姉でメリンダと言う名の娘らしいが、この娘、少々骨が折れるやもしれんぞ」
そう言って溜息を吐く夫に、私は同じく眉を寄せて小さく溜息を吐いた。
夫が骨が折れると言った人物は、大抵碌な事をしない愚か者だからだ。
「とはいえ、王家には明日伝えに行ってくる。また薬を使っている城に仕えている貴族は全員職を失う事になるが、これもまた防衛のためだから仕方ないな」
「そうね、何処で薬を盛られるか……。しかもこの薬は無味無臭よ」
「厄介な事極まりないな。陛下や王妃様用にリディアが作ったアクセサリーを用意して貰おうと思っている。丁度明日こちらに来るそうだ」
「でしたら、直ぐにでも作って貰いましょう。その後あなたが陛下の元へ行けば」
「ああ、多少貴族達は煩くなるだろうが、これでモランダルジュ伯爵家がどう動くかも見ておかねばな。リディアにはワシ等用にも作って貰おうとは思っている」
つまり、アラーシュも狙われる可能性がとても高い……と言う事でしょう。
私は強く頷きアラーシュに抱き着いた。
「嗚呼、アラーシュ……危険な事はもう二度としないと昔約束したのに」
「仕方ないのだよ。ダンノージュ侯爵家に生まれた以上、王家の盾であることと、王家の剣であることを義務づけられている。わが身の可愛さに王家に何かあっては大問題だ。盾と剣であることを義務として生きているからこそ、我がダンノージュ侯爵家は呪いも理由に、素晴らしい相手と結婚することを許されているのだから」
「けれど――」
「前国王陛下から君を奪ったことは、今でも忘れていないよ? 剣であり盾としての侯爵家であり、呪いもあったからね。君を得る為に前国王陛下と戦ったことも懐かしい思い出だ」
「もう! 私はあなたの今を心配してるのよ!?」
「今のワシを守れるのは……カイルの妻、リディアだけだろう。運命とは良く出来ている物だな」
そう言って抱きしめてくるアラーシュに私は大きく溜息を吐き、最早止めることが出来ないのだと悟るとアラーシュの頬を抓った。
「いたたたた」
「心配してますのよ? 心配しておりますの!」
「分かっている、分っているとも!」
「絶対無事でいてくださいませ。あなたが死んだら私も後を追いますわ」
「やれやれ、ワシはまだ死ぬ予定はないぞ。ひ孫も見たいしライトとロキシーの子供もみたいじゃろう?」
「そうですけど!」
「長く図太く生きる予定だから安心しろ。カイルにも教えるべきことはまだまだ山のようにある」
「そうですわね」
「手助けしてくれるかな、我が愛しの妻よ」
「ええ、あなた一人では心配ですもの」
こうしてやっと笑い合えるようになると、アラーシュは屋敷に来た影から例の薬の入った箱を貰い、その箱にはご丁寧にモランダルジュ伯爵家の蝋で押された判子まであったわ。
本来証拠隠滅するならこういう事はしないのに、馬鹿なのかしら?
「危険物は私が預かりますわ。こちらの箱に入れてくださいな」
「悪いな、無味無臭だが瓶から漏れたりはしないだろうか」
「その為の強い付与の付いた箱ですから。中に入ったモノは外に漏れだす事を防ぐ予防付与がされていますわ」
「そうか、では安心して仕舞っておけるな」
「これ以上数が増えない事だけを祈りますけれど」
そう言うと箱を閉め、明日リディアが着たら色々と話をしてくると言うアラーシュと共に部屋を出て共に風呂に入り、着替えを済ませて眠ったけれど――。
リディア……アラーシュの身も、王家の人々の身を守れるのも貴女だけよ。
そう胸の中で呟き、不安の中眠りについた夜の事。
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