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229 リディアのゴッドハンドで癒される。

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保護をした女性達のうち、何人かはネイリストから合格を受け、次の段階に入る事になる頃、冬の行軍が始まる事になりましたわ。
忙しい時に忙しい事は重なる物で、カイルを筆頭に城からくるリース依頼の品をアイテムボックスに詰め込み持って行き、行軍には参加する箱庭師がもう一人、その方は治療専用の病院のような場所を持っているらしく、その方が行軍についていく事になりましたわ。
更にその方の箱庭とファビーの箱庭を一時的につなげる事で、行軍中もファビーの温泉宿を使えるようになりましたの。
その間はどうしても貴族用の温泉も行軍に使われるため、陛下たちはとても残念がっていたのは言うまでもありませんわね。

無論、ダンノージュ侯爵領の冒険者達も多くが行軍に参加するそうで、リースで借りるテント一式、冬セット一式の数はとても多かったですわ。
商売人からすれば儲け時。
国にしてみれば、この時期にある程度魔物を倒しておかねば大変な事になる重要な時期。
こうして、需要と供給は出来ていくのだと改めて納得している頃、わたくしは建築師の方々に頼んで美容関係の小さめの小屋を作って貰いましたの。

フェイシャルエステが出来る椅子や一式が5つ並んだその小屋の内装は少しだけ拘りましたわ。
女性の憩いの場と言う事で、香りも良くゆっくりと過ごせるようにオルゴール音楽を集めた蓄音機も作り、そこでフェイシャルエステの指導が始まりましたわ。
無論、わたくしが手が離せない間は、フォルが一人でロストテクノロジー商品は頑張ってくれるそうで頼りにしてますわ!


「さて、色々と機材もありますけれど、そう難しい物ではありませんわ。今からわたくしが施術をしますので、マリシア」
「はい」
「ベッドに横になって下さる? 頭はこの辺りにくるように」


そう指示を出すとマリシアは寝台に仰向けで横になり、わたくしは足元にあるピアノの踏み足みたいなものを見せながら説明しますわ。


「ここを足で押して動かすと寝台の上の部分が動きます。このように……」


そう言ってして見せると女性達は驚いた様子でしたけれど、しっかり台が動いて施術しやすい位置になると、わたくしは化粧水や汚れを落とす化粧水に保湿用の乳液などを用意しますわ。

まずは蒸気の出る機械にスイッチを押してマリシアの顔に蒸気が当たるようにし、タップリの化粧水をつけたコットンを目の上に置き、皮脂汚れを落とす化粧水をシッカリと沁み込ませたコットンでマリシアの顔をマッサージするように綺麗にふき取っていく。
力は強すぎず、弱すぎず、その辺りも説明しながら見て貰っていると、両面をシッカリ使って皮脂汚れを落としましたわ。
そしたら蒸しタオルで顔を一度丁寧に拭き、再度皮脂汚れを落とす化粧水でもう一度丁寧に。
時間を掛けて綺麗に落とすと、今度は化粧水をタップリと顔に沁み込ませ硬くなった肌を柔らかくしていく作業に入りましたわ。
顔のマッサージは兎に角大事ですわよね。
特にリンパマッサージ!
硬い肌では毛穴の汚れも取れにくいですし、その為には蒸しタオルや蒸気で顔を解しながら柔らかくする必要がありますもの。

その後、また化粧水を剥がすように皮脂汚れを取る化粧水で浮き出た汚れを綺麗に落とし、小さな瓶が繋がった管を手に取ると、蒸気が出ている機械にあるスイッチを押すと、小さな試験管のような瓶で顔全体を吸い取るように汚れを落としていきますわ。
すると、みるみる汚れが浮き出ては試験管のようなものに溜まっていき、皆さん驚いた声が出てますわね。


「どどどど……どうなってますの?」
「マリシアの顔の汚れが凄く沢山でてますの」
「ひええええ」
「でもとっても大事な事よ? 毛穴の詰まりが取れると本当に見違えるほど美しくなるんだから! わたくしでも此処まで徹底してまではやりませんわ。今回作ったこの機械があってこそですわね!」
「そんなに凄い機械なんですね……」
「皆さんもシッカリと見て覚えてくださいませ。後で交互に皆さんにやって貰いますから」
「「「「はい!」」」」


こうして顔全体のツボを狙うように、それでいて毛穴の汚れを綺麗に吸い取って、無論鼻の横も念入りに汚れを取ると、取れた汚れの多さに皆さん驚いていましたわ。
マリシアも見ては息を呑むほど驚いてましたし、人間の顔とは汚れが詰まりやすいものなんですのよ……。


「では、蒸しタオルで拭いてから更に化粧水で整えていきますわ。この際乳液を使って更にマッサージを忘れずに」


綺麗に肌を整えると最後はパックですわ。
タップリの化粧水を沁みさせたコットンで目と口を覆い、更に化粧水を沁み込ませたきめ細かいガーゼで顔を覆い、その上からパックをしていきますわ。
鼻の穴だけは塗らぬように注意をし、このまま20分待ってからガーゼを取り除き、更に蒸しタオルで顔全体の残ったパックも綺麗に落とし、最後に化粧水タップリのコットンで肌を整え、乳液を付けて最後の叩きのマッサージ。
顔へしっかり馴染むまでの10分前後、頭皮と肩をマッサージして終わりですわ!


「トータルで大体一時間半くらいかしら? マリシア、起きて大丈夫よ」
「途中寝そうでした……」
「ふふふ、眠くなる程気持ちよかったのね」
「ゴッドハンドですよ……あんな気持ちがいいマッサージ初めてです……」


そう言ってトロトロになった表情で起き上がったマリシアの顔を見て、女性達はワッと声を上げましたわ。
白く透き通った肌にモチモチプルプルの肌。
マリシアが鏡のある椅子に座ると、自分の顔を見て驚き過ぎて固まっていますわね。


「うそ……顔が凄く透明度が上がって……それに顔が若干細く……」
「肌もモチモチでしょう?」
「もちもちつるんです!」
「そこに化粧を施すんですけれど、それは連れて来ている侍女さん達にお願いしようと思っていますの。化粧品はこちらでも用意しますけれど、マリシアだとまだ化粧と言うよりは、白粉くらいで丁度良さそうね。今回特別に作った物なのだけれど、使いますわね」
「はい!」


きめ細かい白粉を顔に優しく馴染むように付けてから更に余分な粉を取り除き、彼女に似合う口紅を選んで筆で塗ると、マリシアは最初とは随分と変わって美しい姿になりましたわ!


「凄いです……」
「凄いでしょう? どうかしら、皆さんもこれを取得して貰いますけれど」
「「「是非取得したいです!」」」
「女性の本来の美しさを取り戻すための作業なんですね!」
「私たちもお互いにし合えば、宣伝にはなるでしょうか!?」
「ええ、自由に使って頂いて結構ですわ。でも毎日すると反対に肌が荒れるから、トータルでするにしても、早くても一週間に一度が適切なの。慣れるまでの間はお互いを練習台にしないといけませんから大変ですけれど」
「でも、それで綺麗になれるのなら取得したいです!」
「これも技術職になるのでしょうか?」
「ええ、技術職になりますわ!」
「「「「「頑張ります!!」」」」」
「では、まずは二人にわたくしが施術しますから、そのお二人は他の方に同じように施術してくださるかしら?」


その後二人の女性に施術し、その二人が見違えるほどの透明度の高い肌を手に入れたことで更に女性達に火がつき、教え合いが始まりましたわ。
新しくネイルで合格点を貰った方がきたらまた教えていく事になりますけれど、フェイシャルエステに関しては、わたくしが担当ですわね!


「所でマリシア、実際肌がきれいになって自信は付きまして?」
「はい! とっても綺麗になったと思います!」
「貴女は宣伝塔ですわ。運動も大変でしょうけれど、頑張って取得しつつ、週1わたくしが綺麗にして差し上げますわ!」
「有難うございます!」
「その合間に温泉の考案となりますけれど、ごめんなさいね? 急がしくさせてしまって」
「こんなに綺麗になれるのなら大満足ですので!」
「良かったわ!」


こうして彼女たちは一カ月の行軍の間にメキメキ学び、その間にカイルは子供用のお店を購入し、彫金師や付与師の元へも確認に走り回っていましたが、そんな忙しい日々が過ぎたある日――。


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