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169 カイルとリディア達の休日の不器用な過ごし方。

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――カイルside――


箱庭の神様と遭遇した俺達は、ダンノージュ侯爵領の商店街へと向かった。
本日商店街はお休みの日。
何時もより閑散とした商店街に降り立つと、解体作業は今も尚続き、その足で解体作業をしている建築師たちに挨拶を行い労うと、雇っている建築師さん達が立ち並ぶ店を綺麗にしているのが見えてきた。


「こんんちは、ダンノージュ侯爵家のカイルです。こちらは婚約者のリディア」
「初めまして皆様方」
「おお、こいつはご丁寧に。」
「進捗はどうですか?」
「現在、頼まれていた店はほぼ全体的に綺麗に終わった所です。後は一番端の大きな店を綺麗にすれば終わりです」
「早いですね、助かります」
「薬局を最初に作ったので、どうぞ見て行ってください」


その言葉に俺達が薬局へと向かうと、錬金術師が作ったと言う抗菌の床に湿気に強い壁は白く綺麗だった。
これなら直ぐにでも薬局をすることが出来るだろう。
次に、ママと子供にやさしい店となる店舗だが、よくある店の作りになっているようだ。
隣の子供用の家は、託児所が出来た故に今は使い道が見つかっていないが、こちらも白を基調にした壁に木目の美しい床。ネイルサロンをするとしたら此処かもしれない。
次に可愛らしい壁に木目の床は、お菓子屋さんだ。調理場は奥に小さくある程度なので、箱庭で作った商品を並べる程度になるだろうが、他の店よりも小さい店になっている。
その隣が――現在作っている牛丼屋となる予定だ。


「全体的に素晴らしい出来ですわね。薬局は直ぐに出来そうですわ」
「問題は子供の家だな、ネイルサロンをするには丁度いいが」
「そうですわね、ネイルサロン作りましょうか」
「店の広さからしてネイリストは6人か」
「予約制にすれば何とかなりますわ。6人のネイリスト予定の方々は、王太子領でネイルをしている誰かに教えて頂きましょう」
「雇うならダンノージュ侯爵領の商業ギルドからだな」
「そうなりますわね、絵師をしていた方々なら即戦力になると思いますわ。それと、カイル、絵師をそろそろ雇って下さいませ」
「分かった」
「ママと子供の店は店員を雇えば直ぐに出来ますけれど、託児所のポスターを貼る事を忘れないようにしなくては」
「そうだな、そっちも店員は5人くらいか?」
「そうですわね」
「問題はお菓子を作る奴だが、パティシエ師を雇うか?」
「見習いさんでもいいから欲しいですわ」
「分かった」


こうして、大まかに纏めた所で俺達は一旦帰ることになった。
そして薬師たちのいる作業場に向かうと、広くなった作業場にいる全員が俺達に気が付き、薬局が出来た事告げると喜んでいた。


「直ぐにでも店は出来そうな感じですか?」
「ああ、陳列棚を作ってレジを置けば直ぐだな」
「早めにお願いします」
「分かった、明日商業ギルドにも向かうからその時にリディアと一緒に行く予定だ。明後日には薬局がオープンできるようにしておく」
「ええ、それと前に作っておいたのですけれど、これは使えますかしら?」


そう言うとリディアはアイテムボックスから【ナニカ】を取り出し、作業小屋の机の上に並べていく。
薬師たちはそれを手に取って驚いたり目を輝かせたりと忙しい。


「腰痛持ちの方のサポーター、足を痛めている方々の為のサポーター等作ってみましたの。大きさも体型に合わせて様々、どうかしら?」
「これは良いですね」
「此方は杖ですか?」
「ええ、木材で作った杖ですわ。皆さんは薬を作るのに忙しいでしょから、杖は各種長さを取り揃えて作りましたの」
「これは良いものです! 足の悪いお年寄りにも良いでしょう」
「では、こちらの商品はあなた方にお渡ししますので、お値段は少し高く設定しつつお出ししてみて下さいませ。それと、薬局に常在する方は誰になるのかしら?」
「ドミノを含めた4人になります」
「分かりましたわ。他の方々はお薬を沢山作っていく感じですわね?」
「はい、出来れば症状に合わせてお薬をお出しししたいので、薬局と箱庭を繋いで頂けたらと」
「繋いできましたわ」
「有難うございます」
「直ぐに売れそうなのはのど飴くらいかしら?」
「のど飴、湿布、リディア様から頂いた物に目薬、ひやりんこなど、沢山ありますよ」
「薬も一般的なモノなら瓶を使って作れていますから」
「それは良かったですわ。陳列棚が足りなかったら教えてくださいませね。多めには作りますけれど」
「有難うございます」


こうして、明日は朝一番にリディアと共に薬局の陳列棚を作り、余っている託児所のポスターも貼り、商業ギルドへ人を雇いにと忙しくなりそうだ。
だが、明日からは王太子領で焼肉屋のオープンもある。
気になるところだが、一つ一つ終わらせるしかないだろう。

こうして、一通りやるべきことが終わった後は、二人で休憩所に向かい紅茶を飲みつつ過ごした。
台所を見ると、子供達用の大きな台所が一つ、箱庭に住む人たちの為の大きな台所が一つ、屋台組の台所が一つの計3つの台所があるが、これにパティシエが加わると、もう一つ台所ができるんだろうか。
休憩所もデカくなった。
俺とリディアは邪魔にならない様に、東屋のような所で過ごしているが、お年寄りと子供達は【箱庭の神様】について色々話しているようだ。

既にこの時間、屋台組が料理の種をせっせと作っている。
皆保護した時は、今にも死にそうな顔をしていたが、生き生きとした表情を見ると嬉しくなる。
俺達のしていた事が無駄でないのだと、一番感じる瞬間だ。
だが、それもこれもリディアの箱庭があってこそ。
奥では独り身用のアパート建設も大詰めの様だ。
建てるものが多すぎて彼らのレベルが上がったのだろう。
そんな風に休憩していると、今日は休みの為か王太子領で仕事をしているレインたちが早めに到着したようだ。
そして、俺達の元へと来ると久しぶりの休みに身体を絞ってきたのだと言う。


「だって明日から王太子領で焼肉オープンだろ? 絞っとかないと」
「そうだな、牛丼屋も近々できるぞ」
「朝は肉まんを食べさせて貰ってるよ。温かいご飯を食べられると言うのは、有難いものだ」
「それで、報告は何かありそうか?」
「王太子様からの伝言で、近いうちに王太子領について話がしたいとのことだ、リディア嬢にも来て欲しいと」
「まぁ、わたくしにも?」
「色々な案が欲しいとの事だったよ。話し合いが行われるんじゃないかな?」
「そうでしたのね、分かりましたわ」
「それと、明日からはポイントカードの導入もある。説明は行き届いていると思うけど、そっちは大丈夫そうか?」
「ああ、ライトが各店舗に連絡と使い方を伝えているから大丈夫だろう」
「水筒は各道具店に50個ずつお渡ししてますものね」
「直ぐに消えそうな気がするけどな」


そんな話をしていると、子供達がお風呂から上がってやってきたようだ。
全員で入る訳ではなく、第一陣、第二陣とで分かれて入っているようだな。


「……スラム孤児まで箱庭で引き受けるって聞いた時は驚いたもんだが」
「皆良い顔をしている可愛い子たちばかりじゃないか」
「ああ、皆素直で優しい子たちだ。先にいる子供達の面倒も良く見てくれる」
「そう言えば、新たに来た子供達はメルフィーさんが勉強を教えるそうですわ」
「優しくも厳しい先生がついたな」
「明日の昼、子供達のスキルチェックを行う予定ですわ。皆さんどんなスキルを持っているのか楽しみでしてよ」
「そいつは良い。将来の幅が広がる」


そんな和やかな時間を過ごしながら――ゆっくりとした休日は過ぎていった。
そして翌朝、また怒涛の忙しい日々が始まる!
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