【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段

文字の大きさ
上 下
128 / 274

128 ライトの頑張り。

しおりを挟む
――ライトside――


次の朝、兄とリディア姉さんがお楽しみと言う事もあり、私とロキシーは王太子領の【サルビア布製造所】へとやってきた。
時間は既に9時を過ぎていたが、新しい工場でも沢山の若い女性達が働き始めたようで、ノマージュさんの声が良く響いている。


「サーシャさん、宜しいでしょうか?」
「まぁ! ライトさんどうなさったんですか?」
「大口依頼の品が出来たと言う報告を受けましたので、疲れて倒れた兄の代わりに私が担当することとなりました。品物は既に梱包済みでしょうか?」
「はい、こちらに250セットのガーゼシリーズが出来上がっています。追加分の250枚も近々できる予定ですよ。王太子領では今も尚、ガーゼシリーズの売れ行きがそれなりにありまして、少し多めに作っておこうと言う話なのですが、カイル様から昨夜王太子領での大口依頼で【ほっかりシリーズ】が450セット欲しいと言う案件を頂きましたので、リディア様から頂いていた布が早速役に立っております」
「半数はガーゼシリーズ、そのまた半数がほっかりシリーズ作成ですね」
「はい、急ぎ用意できるよう頑張って作らせています」
「助かります。急な大口依頼でしたのでどうしたものかと思いましたが、何とかなりそうですね」
「そうですね、ほっかりシリーズの在庫も十分になれば、ほっかり肌着に移行しようと思っている所です。半数はやはり、ほっかりシリーズ担当にはなりますが」
「それでいいと思います。ダンノージュ侯爵領でも、ほっかりシリーズは大口依頼で入ってくる事になる可能性が高いですから」
「ですよね。出来るだけ多めに作り、一般市民から冒険者まで幅広く使えるようにいたしますので、暫くお待ちください」
「宜しくお願いします。ではガーゼシリーズを頂いていきますね」


こうしてアイテムボックスにガーゼシリーズ250個を入れ込むと、ロキシーと共に箱庭経由でダンノージュ侯爵領へと向かいました。
ダンノージュ侯爵領も少しずつ寒くなってきているような気がしますが、王太子領程ではまだ無いのでしょう。


「しかし、良かったのかい、ライト。アンタだって休みは欲しいだろうに」
「私はまだ兄よりは若いですから多少動けますよ。それに、シッカリと睡眠はとれていますから問題はありません」
「全く、弟がシッカリと仕事をしているってのに、カイルの下半身には困ったものだね」
「ですが、私もいずれそうなるのだと思います。兄の事はアレコレと言える立場ではありませんからね」
「それ、相手がアタシって解ってて言ってるのかい?」
「私の相手は死んでもロキシーだけですよ?」
「何をそんな当たり前の事をみたいな顔してんだい!」
「その時の為に、今は頑張って働こうと思います。成人する日が待ち遠しいものですね」


にっこりと微笑んでロキシーを見ると、頬を赤く染めて「はいはい」と返事をしてくれるところが可愛い所です。
もう少し早く生まれたかったと言う気持ちは無くはないですが、それこそ無いもの強請りですから、きっと今だからこそ良いのだと考えています。
大人になった自分がロキシーとそう言う事をするのは、多少なりと興味はありますが、今はシッカリとやるべきことをし、ダンノージュ侯爵領や王太子領で不幸がない人生を歩める人が増えることを祈るばかりですね。

商業ギルドへと入ると、兄ではなく私が入ってきたのでギルドマスターは驚いていましたが、兄が最近の疲れでダウンした事を告げ、代わりに私が来たことを告げると、既に集まっている宿屋協会の面々とお会いすることが出来ました。


「初めてお目に掛かります。私はダンノージュ侯爵の孫の一人、ライト・ダンノージュです。こちらは婚約者のロキシーです。今日は兄が仕事の疲労で倒れてしまいましたので、代わりに私が商品を収めにやってきました。検品も済ませてあります」
「これは有難い。挨拶が遅れました、宿屋協会会長のズノーと申します。以後お見知りおきを。若い者たちが道具店サルビアで大口依頼をしてきたと聞いたときはどうなるかと思いましたが、こうして商品を快く用意してくださったこと、感謝の念しかありません」
「そう言って頂けると幸いです。布製造所を二か所、王太子領で作りましたので、何とか間に合いました」
「それはそれは……」
「まだダンノージュ侯爵領は温かいですが、後に寒くなってくる事でしょう。その時は、王太子領で既に大口依頼が来ている【ほっかりシリーズ】と言う温かい商品もご用意できますので、是非必要の際は早めに依頼をお願いします」
「それは良い事を聞きました。魔物の羽で作った布団と言うのは臭いがどうしても気になりましてな。是非、そちらのほっかりシリーズを寒くなり始める前に依頼したく存じます」
「有難うございます。では先に言われていた250枚のガーゼシリーズです。追加分の250枚はもう暫くお待ち頂けると助かります」
「ええ、そちらも大口依頼ばかりで申し訳ありませんが、是非お願いします。また、宿屋協会は年に1度、品物を新しく変える規定が御座いますので、その時はまた大口依頼となりますが宜しくお願いします」
「畏まりました」
「アイテムボックスは次の品を頂きに伺う際にお返ししても宜しいでしょうか」
「はい、是非そうして頂けると助かります。出来上がり次第またご連絡を入れさせていただきますので」
「ええ、宜しくお願いします」


こうして、見事に予定よりも早くガーゼシリーズを渡すことが出来た事に、少しだけホッとした。
そして、心ばかりにと会長さんから金貨50枚が支払われ、此れから長い付き合いになりそうだと思いました。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...