上 下
114 / 274

114 頼りになる仲間と弟と、今後の話し合いを。

しおりを挟む
「――と言う事で、本格的に酒場通りの道具屋が動き始めたようです」
「嗚呼……頭が痛いな」
「それと、頭が痛い所に申し訳ないが、道具店サルビア及びネイルサロン・サルビアにも、お前さんが追い出した貴族が『不当に追い出された!』ってやってきたらしいぞ」
「あ――……早めに鉱山送りにします」
「そうしてあげた方が良い。仕事があるだけで静かになるだろう」
「明日にでも王太子に話をつけてきます。リディアは焼肉店のドアが閉まっているからそっちに行っても良いけど、酒場の方はオープンにしてるから行くとしたら俺と一緒にだな」
「分かりましたわ。焼肉店はわたくしの好きにさせて頂きますわ」
「すまないな」
「言っても分からない奴らは、ドカーンとやっちゃいましょう!」


わたくしが腕を振り上げて言うと、他の面子は苦笑いをしていましたが、実際ドカンと殴りたい気分で一杯の筈ですわ。
余りにも不当! 酷い話です!
取り敢えず、明日カイルがやる事は午前中に王太子と話をつけて、午後はアラーシュ様と話し合いかしら。
出来るだけ穏便に……とは思っていましたが、相手はどうやらそうではないのがわかりましたから、これからは遠慮なくもっと強引に行ってもよさそうですわね!


「それにしても、貴族って言う生き物は没落しても自分が上だって言うのが染みついてんだな」
「イルノさんのもとにも来られましたの?」
「来たよ来た。冒険者をオーナーにするより、我々をオーナーにすべきだとかいって。でもさ、オーナーに向いているなら領地運営が上手くいかなかったのは何故ですか? って聞いたら顔真っ赤にしてさ。喚き散らしながら帰ってったわ」
「ナイスですわ!」
「でも実際そうだよね。自分の領地すらまともに運営出来ない奴が店を運営出来る筈はないんだよ。その辺り、私とイルノは運営には向いているね」
「それを言ったらライトもだよ。ダンノージュ侯爵領のあの店の周りにライトファンは結構な人数いるね」
「ロキシーファンもですよ」
「俺も聞いたよ。美女と美少女がいる店って言われたな」
「兄さん……美女は分かります、ロキシーの事でしょう? 美少女って私ではないでしょうね?」
「多分……お前だと思うぞ」
「酷い……私もっと男らしくなりたいです」


さめざめと涙を流すライトさんには申し訳ないですが、元々が中性的な見た目ですし、成長すれば変わるかもしれませんが、暫くはそのまま美少女としてファンが固定化するんでしょうね。


「でも、ライトだってカイルの弟だし、何時かはカイルみたいに逞しい男性になるんじゃないのか?」
「そうなりたくて筋トレとかしているんですが……」
「いや、ライトはこのままでいくべきだろう。中性的な見た目は男女ともに人気が高い」
「レインさん……」
「大丈夫さ、私も昔はライトくんのように中性的だったからね。大人になれば嫌でも髭は生えるしすね毛も生えるし、男になるものだよ」
「生える毛こそが男の証みたいな言い方はやめて欲しいねぇ……」
「でも、ライトがそうなってもロキシーは変わらず愛せるだろう?」
「そりゃそうだけどね」
「でもさ、ライトに胸毛ってなんか嫌だよな……」
「「「「イルノさん……」」」」


思わず全員がイルノさんをみると、何か不味いこと言った? みたいなキョトンとした顔をしておられましたわ。
そこが彼のチャームポイントなんですけれども。


「取り敢えず、酒場通りの道具屋にはお仕置きが必要ですわね」
「私もそう思ってました。リディア姉さんはどんなお仕置きが良いと思います?」
「そうですわね、まず今のところは経営がギリギリ成り立つか成り立たないかにしてますから、畳みかけるように商売が成り立たなくして差し上げたいですわね。徹底的に」
「ですよね! 私もそう思いました!」
「けれど、カイルがこれ以上激務になるのも問題ですし」
「兄さん、店は私に任せて、あっちこっち動き回ってかき回してください!」
「ライト……お前、意外と酷いこと言うな」
「あら、わたくしもライトさんと同じですわ。売られた喧嘩は数倍返しが普通でしょう?」
「俺の婚約者がちょっと怖い」
「カイル、アタシの婚約者も何気に怖いよ?」
「知ってる。俺の弟だから」
「「と言う訳で、頑張ってください!」」


わたくしとライトさんの二人で応援すると、カイルは机に倒れ込み「二人が俺を殺しに来る」と嘆いていましたわ。なんて失礼な事でしょう。
けれど、各地からの情報を纏めるカイルも顔色は疲労困憊と言う感じでしたけれど――目は燃えていましたわ。
王太子領の元貴族問題にダンノージュ侯爵領の道具屋問題。
この二つは、カイルにしか任せることができませんもの。


「ん――……色々やりたいことは多いが、まずは一つずつだな。取り敢えず明日は王太子と話し合いした後、お爺様と話をつけてくる」
「お願いしますわね」
「クソ雑魚元貴族は根こそぎ消えて貰いたいし、喧嘩売ってきた道具屋はボッコボコにしたいからな」
「あら、とても良い感じに怒っているじゃありませんの」
「やる事が多い時に問題を起されれば、誰だって怒るさ」
「ふふふ、そうですわね。そうそう、もう一つお願いできるかしら」


そう言うとわたくしはアイテムボックスを一つカイルに手渡すと、カイルは首を傾げていましたわ。


「中にはビールが入ってますわ。明日の王太子との会話が終わった後にでも、焼肉屋の周囲の酒場を回ってオーナーに飲んでもらい、サルビア限定ビールを個数限定で卸しても良いか聞いて来てくださいませ。あと、焼肉屋が出来るから客が減る事も見越していると」
「愛する婚約者が俺にトドメを刺してきた」
「まだ刺してませんわよ」
「カイル、君の激務はまだ続きそうだね」


レインさんに励まされるカイルでしたけれど、キッチリ仕事をしてくれる方だと知っているからこそですわ。
その分、わたくしも後で甘やかしますから!


「少なくとも、ダンノージュ侯爵領の商店街は私が仮のオーナーとして今は回しています。大きな問題はその一つくらいで、後は全て順調ですから」
「ありがとうライト……お前は良い弟だよ」
「だから頑張って働いて来てください。こちらはお任せくださいね」
「弟もトドメを刺してきた」
「愛の鞭です」


こうして、カイルは明日の朝早くから王太子のもとに行く為、早めの就寝となりましたけれど、わたくし達は「道具屋にどんな嫌がらせをしてやろうか」と盛り上がったのは、カイルには内緒にしておきましょう。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~

udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。 それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。 唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。 だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。 ――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。 しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。 自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。 飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。 その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。 無断朗読・無断使用・無断転載禁止。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

udonlevel2
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

処理中です...