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76 忘れられていたライトと、新しいお店の提案。

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休日――今日はカイルと一緒に過ごす日ですわ。
この一週間色々ありましたから、本当に色々ありましたから話すことは山の様にありましてよ!
さぁ、朝食が終わったら何処でお話をしましょう。
そんなワクワクを一気に吹き飛ばす叫び声が木霊したのは――朝食後直ぐの事でしたわ。


「兄さんもリディア姉さんもロキシーも私の事忘れてたでしょ!!」
「「「わぁあ!」」」


そう、今までナカース王国へ向かっていたライトさんが、五日ぶりに姿を見せたのです!
わ、忘れてなんて居ませんわ!!
忙しかっただけです!!


「私の心配なんて誰もしてくれてなかったんですね……? 五日も帰ってこれなかったのに!!」
「いや、その……」
「アタシは覚えてたよ?」
「ロキシー! 本当ですか!?」
「ただね? リディアが色々新商品をぶっこんで来たのと同じタイミングだったから、カイルとリディアはテンパってたし、忘れてたんじゃないかねぇ?」
「「う……」」
「でも! アタシはちゃ――んと、ライトの事を覚えていたよ? ただ、連絡つけようにもつける手段が無かっただけさ」


そうロキシーお姉ちゃんが言うと、ライトさんは頬を赤らめ、ウットリした表情でロキシーお姉ちゃんに抱き着き、幸せをかみしめているように見えましたわ。


「好きな人に覚えて貰えているだけで満足とします……」
「お帰りライト」
「ただいま」
「で、ナカース王国に着いたんだろう? 爺様はどうしたんだい?」
「あ、そうでした。今日は無理らしいんですが明日の朝8時に道を作って貰って、それでお爺様にブレスレットを作って欲しいとの事です」
「分かりましたわ」
「でも! 私の事を忘れてた事に関しては、何かしらで謝罪して頂きますからね」
「はい! ロキシーとライトさんは二人で一つの部屋に住むことを提案します!」
「あ! リディア!! ずるいぞ!!」


カイルが何か言う前にそう提案すると、ロキシーからも了承を得ましたし、アパートが出来たらライトさんとロキシーお姉ちゃんは一緒に住むことに決定しましたわ!
ライトさんからは「リディアお姉ちゃんは許します!」と言われましたしホッと一安心。
しかし――。


「兄さんは私の事を心配してくださらなかったんですよね」
「心配出来る状態ではなかった。では敢えてお前に聞こう。お前、リディアの作った新商品を細かく分けて5つ、『明日から売ってきてくださいね!』って言われた場合、店がどうなるか想像できるか?」
「兄さん、生意気言ってすみませんでした」
「わかればいい」


え? どういう事ですの?
あんなにプンプンしてたライトさんが急にしおらしくなりましたわ。
え、わたくしの作った新商品、そんなに問題が!?


「リディア姉さん、新商品作るにしても、二つずつとかにしてくれないと店がパンクしますよ……?」
「実際パンク寸前だったぞ? 雪の園と朝の露のメンバーが燃え尽きてた」
「いや――。正直商売舐めてたわ」
「死相が皆出まくりましたね」
「甘いもの食べて」
「何とか持った」
「な……なんかすみません」
「これ以上作ろうと思う新商品は、暫くはないよな、無いと言ってくれ」
「私たちも休憩が欲しい」
「えっと、考えているのはあるんですが……暫く様子見ます」


そう言うとワッと声が上がり「我々の勝利だ!!」と涙を流しながら叫ぶイルノさんたちに、何とも言えない気分になりましたわ……。
むう。
直ぐ新商品考えようかしら。
反対に私がプンプンと怒っていると、調理師スキルを持つ8人がやってきて、「リディアさん、あの……」と話しかけてこられました。
いけないわ。こんな時こそ大人の余裕路見せなくては。


「どうしましたの?」
「はい、私たち調理師スキルを持つ者たちの為に店を用意してくださると聞いて」
「ええ。どんな店にしたいか、皆さんに聞こうと思ってましたの。得意な料理とかありまして?」
「ええっと……できれば夫が乗り込んでこないようなお店で……」
「リディアさんから頂いたお菓子や紅茶、珈琲を出すお店にしたらどうかと」
「皆で考えました」
「つまりは、お菓子の美味しいカフェってことでしょうか」
「「「はい!」」」


なるほどなるほど。
ロストテクノロジーに載って居るお菓子のレシピや各種紅茶、そして珈琲の入れ方等の本を彼女たちに渡し、料理レベルがますます上がったと思っていましたけれど、確かに女性でも男性でも甘いものは欲しいもの。
特に書類整理が多い頭を使う方々にとって、糖分程幸せを感じるものはありませんわ。


「カフェ・サルビア……良いですわね! 果物でしたら森に行けば幾らでも手に入りますし、季節問わず食べられますわ!」
「では、森に入る許可を頂きたいです!」
「ちょっとお待ちを!!」
「「「「!!」」」」」
「あなた方、植物の扱いや果物を収穫する際の木に負担を掛けないやり方を知って居まして!? このザザンダが森も綺麗にしているのです! ケーキやクッキーに使うような物でしたら、この私を通して頂きたいですわ!」
「「「「ザザンダさん!!」」」」
「確かに植物師であるザザンダさんに頼めば、欲しい分の瑞々しい果物が手に入りますわ!」
「素晴らしいわ!! ザザンダさん、是非お願いします!」
「植物の事はザザンダに聞け、ですもんね!」
「リディアさんは森を放置してくださっていましたから、私が今の担当です。野菜に関しても同様です。畑の事、山の事は色々聞いてください」
「「「「有難うございます姐さん!」」」」


こうして、果物や野菜などに関してはザザンダさんが調理師組と組んでやっていく事になった様で何よりですわ!
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