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66 新たなる新商品と、新たなる雇用に乗り出す。

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夜、カイルにサーシャさんやノマージュさんに話した【ガーゼ専門店】の話をする為に、二人が作ったのは箱庭で過ごす皆さん用の肌掛けタオルに敷きパッド、それにパジャマでしたわ。

そして皆さんで食事中、それらのアイテムを一人ずつ手渡すと、皆さん「ガーゼ?」と不思議に思っていらっしゃいましたが、サーシャさんやノマージュさんに話したプレゼンをすると、目から鱗とばかりに聞き入ってくださいましたの。


「なるほど……妊婦や出産したばかりの女性に優しいだけではなく、乳児や幼児にすら優しいアイテムを取りそろえた店か……」
「ええ、オムツかぶれの為のアイテムや、汗疹対策のアイテム、それにこれからの時期は保湿の為のアイテムも必要になってまいりますわ。乳児はとても弱いんですもの……。それらを一般庶民の方々に安く提供出来るようにする為にも、ガーゼシリーズは欠かせませんわ。それに少しなら子供用の風邪シロップも作れますし、乳児に触る際、もしくは幼児が手を洗う際に使う液体石鹸も作れますわ」
「ちょっといいかい? アタシたちも手は偶に洗うけど、石鹸なんて上等なものは使うのは専ら貴族ばかりで、アタシたちみたいなのは使ったことは無いよ」
「まぁ! では液体石鹸、もしくは石鹸を作りましょう! 手は病気になりやすいウイルスやばい菌と言ったものが多く存在していて、そう言った専用のもので洗うと予防になりますのよ?」
「へぇ……リディアは博識だな。是非石鹸や液体石鹸は道具店でも売ろう」
「そうですわね、普及には時間が掛りそうですけれど売りましょう。汚れも落ちやすいですからネイリストの皆さんは使っていると思いますわ。それに女性が喜ぶ香りのも用意しましょう」


こうして、石鹸の普及にも力を入れることにし、ガーゼ専門店は何とかなりそうですわ。
その為には沢山のガーゼ商品が必要で、更に言えば生まれたての乳児が使う服も取りそろえなくてはなりませんの。
そちらは綿をメインに作りますが、夏は柔らかいガーゼの物でも安心ですわね。「こんな服が欲しいですわ」とザッとメモ用紙に前世の世界にあった乳児服を描くと、メモを数枚欲しいと言われ、サーシャさんとノマージュさんに手渡し、布の薄さ厚さも大事であると言う事を伝えたうえで取り掛かって貰う事になりましたの。


さて、こうなると困るのは――裁縫師が少ないと言う事。


「ねぇカイルにロキシーお姉ちゃん。裁縫が出来そうな方って知り合いにいまして?」
「俺はそこまでは……」
「いるにはいるよ? ただ、サーシャやノマージュが受け入れるかは別だけど」
「どういう事ですの?」
「この世界にはね、体は男だけど心は女である……って人たちも一定数いてね。そう言う人たちは細々と、明日食べるものも必死と言う感じで働いているんだ。梟の羽にもそう言う話は何度か舞い込んできたよ」
「まぁ……わたくしはそう言う問題は受け入れますけれど、他の人はどうかしら?」
「少なくとも、神殿契約を結べる相手ならいいんだろう? だったら、今からちょっと聞いてこようか? そう言う奴らは夜にしか働かないから」
「何故ですの?」
「人目が嫌だとこの時間に溝拾いしてんのさ」
「そう……なの」
「ってことで、護衛にライトを連れて行くからいいね?」
「分かりました、つていきます」


こうしてロキシーお姉ちゃんはライトさんを連れて外へと向かいましたわ。
前世の世界では『オネェ』だの『ジェンダー』だので受け入れられつつあった方々ですけれど、こちらの世界ではとても受け入れてもらえないのでしょうね……。
ふむ……でしたら、女性として接し、彼女たちに神殿契約を結んで頂けたらスキルボードをみてから箱庭専門で働いてもらえるかどうか確認しましょう。
そもそも今は箱庭の手入れも儘ならぬ状態。
少しでも箱庭員が多くても問題ありませんわ。


「リディア、本当にいいのか?」
「何がですの?」
「相手は、心は女だといっても、男だぞ?」
「ならば女性として接するのが礼儀でしてよ?」
「女性として?」
「ええ。女に生まれたかったのに男に生まれてしまった不幸と言うのはありますわ。また、その反対も然りですわ」
「……不幸」
「助ける受け皿があってもいいではありませんの。それがわたくし達だったと言うだけの話ですわ」


そう言って微笑むと、カイルは溜息を吐いたのち「そう言うリディアだからこそ好きなんだよなぁ……」と呟いて頬にキスをされましたわ!


「分かった……受け入れよう。俺だって魔付きだったんだ。似たような物だろう?」
「カイルっ」
「そうなると、この居住エリアも狭くなってきたな……。二階建て、三階建てが欲しくなる」
「魔法を使えば作れなくはないですわ。作りましょうか」
「俺も魔法が使えればなぁ……」
「まぁ、ロキシーお姉ちゃんが連れてくる方々を見て決めましょう?」
「そうだな」


そう言うとわたくし達は今のうちに拡声器タイプにブレスレットを設定して、箱庭全部に拡がるように連絡を入れましたわ。


『業務連絡、業務連絡です。確定ではありませんが、箱庭に人が増える可能性がありますわ。その方々は、身体は男性でも心は女性と言う方々ですの。是非、女性として接して差別なく過ごして頂けると幸いですわ』


そう言って拡声器を切ってから二分もせず、サーシャさんとノマージュさんが駆け寄ってきましたわ。
どうしたのかしら?


「リディアさん! 私は賛成です!!」
「同じくそれは賛成です!!」
「まぁ! 賛成してくださるのね!!」
「「素晴らしい男女兼用のモデルとして一人こちらに下さい!!」
「オーケー、落ち着きましょう」
「ではでは! せめて彼女たちに素敵なワンピースを作っても宜しいでしょうか!」
「え、はい、どうぞお作りになって」
「萌えるわ」
「もうこれは萌えでしかないわ。カイルさんとライトくんに女装は無理でしたから」
「「………」」


もしかしたら……今度来る方々は、犠牲者となる可能性が高くなったことを、後で深くお詫びせねばならないかも知れないと思ったそんな頃――。


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