獣人たちの恋

魚肉

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うさぎのミル

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「ーール、ミル、もうすぐ最寄りの駅に着くよ。起きられる?」


ミルは優しく肩をとんとんされ目覚めた。とても良い眠りだった。大嫌いな汽車の中でこんなに気持ちよく眠れるなんて!リクはすごい人なのかもしれない。

ミルは眠たい目をぱちぱちして、頭を寄っかかっているリクの肩にすりすりして眠気を飛ばした。

「リク、おはよう!私ずっと寝てたみたい、ごめんなさい…」

ミルは汽車に乗ってから今まで、ずっとリクに体重を預けていたのだ。とても重かったかもしれない。もしかしたらミルのことを嫌いになってしまうかもしれない。
…そう考えただけでミルは涙が出そうになった。リクは久しぶりに出来た友人なのだ。二本のぴんっとしている耳をへにょん、と折り曲げてミルは悲しい気持ちになった。


「ミルの寝顔本当に愛らしかったよ。僕も途中からは眠くなってうつらうつらしてたんだ。気にしないで」

リクはにこにこしながらミルのほっぺを手で優しく触る。ミルはそれがとっても気持ちよくてその手に擦り寄ってしまう。


なんて!なんてリクは優しいのだろう。ミルのことを許してくれるだけでなくて寝顔まで褒めてくれるのだ。ミルの中でリクは完全に「とても信頼できるとても頼れるとてもいい人」となった。



ーーーまあ、実際リクは一ミリも眠気などなく、ミルがすこすこ気持ち良さそうに自分の腕に抱きついて寝ている姿を「なんて可愛いんだろう」と呟きながらずっと見ていたのだが、これをミルが知ることはないだろう。




汽車を降りると、リクはミルの家のある方向とは別の向きに歩き出した。

「リク?あのね、私のお家はあっちなの」

ミルは汽車に乗っていた頃の名残で片腕をリクの腕に絡ませながら自分の家の方向を指で指した。

「そうだね、ミルのお家は向こうだね。でもまだ夕焼け前の時間だし、一緒に公園にでも行こうと思ったんだ。ミルはもう帰りたい?」

…帰りたいだなんてあるわけがない!!リクからのお誘いを断る理由なんてないのだ。

「ううん!私、向こう側の公園は行ったことがないの!リクと一緒に行ってみたいわ!」

「本当に?じゃあそこで、美味しい人参ジュースがあるからご馳走するよ」

「!?本当に!?」

ミルはもう最高の気分だった。今日は人参ポタージュを食べて、人参パフェも食べて、なんと人参ジュースまで飲めるのだ!!しかも、新しく出来た友人のリクと一緒に!!



公園はとても広く、原っぱには寝転んだり座って本を読んでいる人が何人かいた。大きな池の近くでは鯉の餌を売っている。

リクは、ミルを連れて人参ジュースを売っている売店に行き、その近くにあるベンチに座った。

「リク!!!この人参ジュースとっても美味しいわ!連れてきてくれて本当にありがとう」

ミルはリクの隣に座って人参ジュースをストローでちゅーちゅー飲みながらご満悦だった。

「リクは、マリーのお友達なのよね?今日はマリーが途中で帰ってしまって残念だったわ」


マリーがミルと遊ぶときにミルの知らない誰かを連れてくるのは初めてのことだった。マリーとリクはよほど仲がいいのかもしれない。
ミルはマリーのこともリクと同じくらい大好きなので、3人で公園に来れたらどれだけ楽しかっただろうと考えた。

「そう、マリーとは結構長い付き合いなんだ。でもね、今日はミルと仲良くなれたから本当に嬉しいんだ。マリーがいなくても全く残念じゃないよ」

「本当に!?私もリクも仲良くなれてとっても嬉しいの!」

「本当だよ。僕は、今日ミルに会うためにマリーに頼んで来させてもらったんだ。ミルと仲良くなりたくて」

「本当に!?私に会いたかったの!?」

ミルは感動で震えた。そんなことを思ってくれている人がいたなんて!

「本当だよ。僕はミルのことが好きなんだ」

ーーーこれは、立派な愛の告白であるのだが、もちろんミルには伝わらない。

「?私もリクのこと大好きよ!」

ミルは小首を傾げながらリクと目を合わせた。リクの瞳は真っ黒で、吸い込まれてしまいそうだと、ミルは思った。

「ミルが僕のことを好きになってくれて本当に嬉しい。よかったら、僕と付き合ってくれないかな」

リクはミルには直接的な、わかりやすい言葉を言わないと通じないことを知っている。マリーから聞き出したともいう。

「…付き合う??」

しかし、この言葉でもミルはあまりピンとこない。リクは何を付き合って欲しいのだろう、とミルは一生懸命考えた。

「ミルに、僕の恋人になって欲しいんだ」

こいびと。
恋人。
ミルは、それの存在は知っているが、実際にナニをしたらいいのかは全く分からない。こんな状態でリクの恋人が勤まるのだろうか?

「………」

ミルは、どう答えたら分からず、縋るような目でリクを見た。リクは、優しい顔をしたままゆっくりとミルの頭を撫でた。

「ミルは僕のことが好きでしょう?もし、僕と恋人でいるのが嫌になったらそのときに辞めればいいんだよ。そんなに深く考えないで」

もちろんリクにはミルを逃がすつもりは全くないが。

ミルは、自分の頭を撫でるリクの大きな手が温かくて、ずっと撫でていて欲しいと思った。

「恋人になったら、たくさん撫でてくれる?」

「もちろん」

沢山撫でてくれるなら、リクと恋人になったらとっても楽しいかもしれない。

「私、リクの恋人になる!」

ーーーこうして、晴れて2人は出会ったその日に付き合うことになったのである。

しかし、ミルは恋人になったらナニをしたらいいのか何も分からない。リクに聞かないと、ミルは恋人を全うできないのだ。

「リク、私、何をすればいいのかしら」

未だゆっくりと頭を撫でてくれているリクにミルは正直に聞いた。リクやら優しく教えてくれるだろう、とミルは思った。

リクはそんなミルを見て、なんて無防備で無知で可愛らしいうさぎだろう、と食べちゃいたくなるのを堪えてミルに聞いた。

「そうだなあ、まずはミルの耳に触ってもいいかな」


「…耳」

ミルは自分の耳を触られることが苦手だった。というのも、小さい頃にいじめっ子たちに引っ張られたり、ハサミで刻もうとされたり、耳を触ってくる人と今までろくなことがなかったからだ。

だからこそ両親や信頼できる友人達はミルの耳に触ろうとしないし、ミルも安心して過ごすことが出来た。

「あ、あのねリク、私耳を触られるがすこし怖くてね、」

ミルは頑張って今までこの耳がどんな目に遭ってきたかをリクに話した。

リクはミルの話を聞いて、「かわいそうに…ミルは本当に今まで頑張って生きてきたんだね」という言葉と共にミルのことを抱きしめてくれた。


ミルはリクの大きくて堅い体に優しく抱きしめられるととっても安心した。お日様のいい匂いがするし、人にハグされるのはとっても気持ちいい。ミルは完全に体から力を抜いてリクに寄りかかった。
リクは、ミルのことを抱きしめながら背中をぽんぽん叩いてくれる。

「ミル、僕は絶対にミルの嫌がることはしないよ。安心して欲しい。」

ミルは、こんなに優しくて安心するリクになら、耳を触られてもいいかもしれないと思った。リクは絶対にミルの耳を引っ張ったり、痛いことはしない。

「あのね、リク、ちょっとだけなら…いい」

ミルは抱きしめられたままリクが耳を触りやすいように頭をリクの肩から上げた。

耳を誰かに触られるのなんて、とても久しぶりでミルは緊張した。

「ミル、本当に?ミルのふわふわの可愛い耳、ずっとずっとずっとずーっと触ってみたかったんだ、」

リクは片手でミルの背中をぽんぽんしながら、もう片方の手をミルの耳に伸ばした。

リクの手がミルの耳の毛に触れただけでミルはぴくんっと反応してしまう。耳を触られることに全く慣れてないミルは、毛に手が当たるだけでぞわぞわした。

「ミル、怖くなったらすぐに言って。僕は無理矢理耳に触りたいわけじゃないんだ」

ミルは目を瞑って小さく頷いた。

リクはそっと、砂糖細工に触れるみたいにミルの左耳に手を当てた。リクの手は温かい。リクはそのままその手を優しく上下して、ミルの耳を撫でた。

「ミル?大丈夫?痛くない?ミルの耳はふわふわで、すごく気持ちいいよ」




ーーーどうしよう、とっても気持ちいい!ミルは驚いていた。耳を触ってもらえることがこんなに気持ちいいことだったんなんて!!しかも、リクに耳元で囁かれるととってもぞくぞくするのだ。ミルは無意識に「ふにゃあ…」と声を漏らした。

リクはその声を聞いてミルは怖がっていないと判断したのか、両方の手でミルの両耳を触り始めた。2つの手が別々にミルの耳を撫でる。

しかも、撫でながら耳元で「ミルの耳は本当に可愛いね、ずっと撫でていられるよ、」などと呟くのだ。

ミルは時々「きもちい…」と夢心地で答えながらリクのされるがままになっていた。

ーーーーずっとずーっとこうしていたい。ミルは、リクが耳を撫でるのを辞めませんように、と祈った。




結局それから数十分、リクはミルの耳をずっと触っていた。優しく撫でたり、耳のてっぺんを摘まれたり、耳の根元を擦られたり、ミルは気持ちよくて惚けてしまった。

「ミル?大丈夫?ごめんね、ちょっと触りすぎたね」

リクはハッと気がついたようにミルの顔を見た。ミルはほっぺをピンク色にして、ぽってりとした口は半開き、まつ毛の長い大きな目は今にも蕩けてしまいそうである。

「やだ、リク、もっと…」

ミルは半分夢心地でリクの顔に自分の耳を擦りよせた。自分から誰かに耳を擦り寄せるなんていつぶりだろうか。


リクはミルの耳にかぶりつきたい衝動を本当に死ぬ気で理性を総動員して抑えた。ここでミルを怖がらせたら元も子もない。

「ミル、耳を触られるのは気持ちよかった?」

「うん、とっても気持ち良かったの」

ミルはリクの手にほっぺをすりすりしながら答える。今日一日でミルはリクのこの大きな温かい手が大好きになってしまった。

「それじゃあミル、僕ともっと気持ちいいことしない?」

「もっと?」

耳を触られるだけでこんなにも気持ちいいのに、もっと気持ちいいことがこの世に存在するのだろうか?ミルは驚いた。

「そう、もっと。僕は、ミルとキスしたいんだ」

キス。
おとぎ話の中で王子様とお姫様がする、あの、キス。

リクはミルのほっぺに当てていた指でゆっくりとミルのぽってりとした唇をなぞった。そして、とろんとした顔をしているミルに顔を近づけた。


ミルは、キスなんて一度もしたことがなかった。そんな未知の世界のことなんて全く分からない。ここは、下手に動くよりリクに任せた方がいいだろう。


ミルはゆっくり目を瞑ると、自分の唇をリクの方に向けた。ドキドキしながら何が起こるのか待っていると、ミルの唇に、優しく、温かくて柔らかいものが触れた。

それは一度触れるとまた離れて別の角度からもう一度触れてくる。それが3度ほど続いた時、ミルはやっとこれがリクの唇だと気づいた。

リクは片手をミルの首の後ろに、もう片方の手ではミルの耳の付け根を触ってくれている。

リクはミルがキスを嫌がってないことが分かると、片方の手の親指でミルの下唇を優しく開かせた。

ミルは唇に触れるその手が気持ちよくて、誘導されるままに唇を開いた。それから程なくして、リクの唇がミルの下唇を軽く噛んだ。ミルは驚いて逃げ腰になるが、リクの腕がそれを許さない。

「…んっ…?ん、あ、あ、」


リクはミルと深く唇を重ねると、ゆっくりと自分の舌をミルの舌と絡ませた。
最初、ミルは何が起こったのか分からず混乱したが、ミルの口内を自由に動き回るリクの舌はとっても気持ち良くて、ミルも恐る恐る自分から舌をリクの舌に絡ませた。

ミルはキスに夢中になった。とっても気持ちが良いのだ。心なしかお腹の下の方がきゅんきゅんとした。












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