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私とタキさんの出会い3
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ーーー痛い。体の色んなところが痛い。仰向けに寝ている私の上には布団がかけられているみたいで、その布団が体に擦れて痛い。
「ん"ーーっ」
布団を足で蹴ると、床に落ちる音がする。
恐る恐る目を開けると、太陽の光が直接目に入ってくる。眩しすぎてもう一度目を瞑った。窓とは反対側を向いて目を開くと、初めて見る場所だった。
ここはどこだろう。
六畳ほどの広さの部屋に、私が寝ているベットと冷蔵庫、小さなテレビとソファーが置いてある。
地獄でない事は確かで、私は自分が生還した事を知った。死ねなかったのなら、このまま寝たきりで生きていたい。もう何もしたくない。
ぼんやりとその部屋を眺めていると、ソファーの横にあるドアを誰かが開けた。
「やっと起きたんだ。よかった、元気そうで」
背が高くて、顔の小さな男の人が私の寝ているベットの側まで来る。
「頭打ってたから病院行った方がいいと思うんだけど、行く?」
まるで、ずっと前から知り合いだったみたいに私に話しかけるこの人は誰だろう。柔らかくて、優しい低音の声は、今までの私の人生には無縁のものだった。
「…行かなくて大丈夫です」
私はよほど長い間眠っていたのか、出した声はガラガラだった。確かに、さっきまで夜だったのに今は太陽が高いところにある。
「君、名前は?」
「…ハルです」
この人が、バイクに乗ってたのだろうか。
「歳は?」
「はたちです。あの、あなたは」
「俺?俺はね、タキ。タキって呼んでね。ここはね、お店の仮眠室。ハルちゃん昨日バイクに跳ねられたんだけど覚えてる?」
「…はい」
「だよねえ。あのさ、ハルちゃんの事そんな傷だらけにしたの俺の知り合いでさ、今すぐにでも警察に行くって自分から言ってるからさ、」
「あの、大丈夫です」
「ん?」
「行かなくて、いいです。えっと、傷の手当てとベット貸してくださってありがとうございました。私、帰ります。本当にご迷惑おかけしてすみませんでした。」
私が悪い。全部私が悪いのだ。目が覚めて、頭が動き始めると急に罪悪感が募る。私は、知らない誰かを殺人犯にしようとした。その挙句、傷の手当てに、宿まで。
「そんな満身創痍なのに。ハルちゃんてお人好しだねえ」
ーーータキさんは今の状況が分かってるのか分かってないのか、ケタケタ笑う。
「じゃあお家まで送っていくよ。その怪我じゃ歩くの辛いと思うし。親御さんにも謝らないと、一晩帰らなかったわけだしね」
「…大丈夫です。親もいないし、謝る必要もないです、1人で帰ります」
起き上がってベットから床に足を運ぶと、それだけで膝の傷が痛んだ。
「ハルちゃん一人暮らし?それは本当に悪いことしたなあ、日常生活に支障出まくりだよその怪我たち」
タキさんはにこにこしながら私の膝の傷を包帯の上から軽くつつく。
「いっった!」
「でしょ、痛いでしょ、やっぱり送ってくからね」
「ん"ーーっ」
布団を足で蹴ると、床に落ちる音がする。
恐る恐る目を開けると、太陽の光が直接目に入ってくる。眩しすぎてもう一度目を瞑った。窓とは反対側を向いて目を開くと、初めて見る場所だった。
ここはどこだろう。
六畳ほどの広さの部屋に、私が寝ているベットと冷蔵庫、小さなテレビとソファーが置いてある。
地獄でない事は確かで、私は自分が生還した事を知った。死ねなかったのなら、このまま寝たきりで生きていたい。もう何もしたくない。
ぼんやりとその部屋を眺めていると、ソファーの横にあるドアを誰かが開けた。
「やっと起きたんだ。よかった、元気そうで」
背が高くて、顔の小さな男の人が私の寝ているベットの側まで来る。
「頭打ってたから病院行った方がいいと思うんだけど、行く?」
まるで、ずっと前から知り合いだったみたいに私に話しかけるこの人は誰だろう。柔らかくて、優しい低音の声は、今までの私の人生には無縁のものだった。
「…行かなくて大丈夫です」
私はよほど長い間眠っていたのか、出した声はガラガラだった。確かに、さっきまで夜だったのに今は太陽が高いところにある。
「君、名前は?」
「…ハルです」
この人が、バイクに乗ってたのだろうか。
「歳は?」
「はたちです。あの、あなたは」
「俺?俺はね、タキ。タキって呼んでね。ここはね、お店の仮眠室。ハルちゃん昨日バイクに跳ねられたんだけど覚えてる?」
「…はい」
「だよねえ。あのさ、ハルちゃんの事そんな傷だらけにしたの俺の知り合いでさ、今すぐにでも警察に行くって自分から言ってるからさ、」
「あの、大丈夫です」
「ん?」
「行かなくて、いいです。えっと、傷の手当てとベット貸してくださってありがとうございました。私、帰ります。本当にご迷惑おかけしてすみませんでした。」
私が悪い。全部私が悪いのだ。目が覚めて、頭が動き始めると急に罪悪感が募る。私は、知らない誰かを殺人犯にしようとした。その挙句、傷の手当てに、宿まで。
「そんな満身創痍なのに。ハルちゃんてお人好しだねえ」
ーーータキさんは今の状況が分かってるのか分かってないのか、ケタケタ笑う。
「じゃあお家まで送っていくよ。その怪我じゃ歩くの辛いと思うし。親御さんにも謝らないと、一晩帰らなかったわけだしね」
「…大丈夫です。親もいないし、謝る必要もないです、1人で帰ります」
起き上がってベットから床に足を運ぶと、それだけで膝の傷が痛んだ。
「ハルちゃん一人暮らし?それは本当に悪いことしたなあ、日常生活に支障出まくりだよその怪我たち」
タキさんはにこにこしながら私の膝の傷を包帯の上から軽くつつく。
「いっった!」
「でしょ、痛いでしょ、やっぱり送ってくからね」
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