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8章 教皇と魔物退治
第388話 成長の一撃
しおりを挟む「『グロウスラッシュ』!」
ガレルの初撃はガレルの十八番であり切り札である『成長の一撃』。
これは放てば放った回数だけ強くなっていく剣技の基本技だ。剣を習ったものが必ず覚える技で溜めは全技中最短、反動は0、魔力消費も最小、というまさに誰でも使える技だ。だが無論弱点は分かりやすいものがある。
威力だ。
成長するとはよく言ったもので最初は魔力を消費しているにも関わらず武器と自分の腕力の素の威力、つまり何も変わらない攻撃でしか無いのだ。軽い技だと喜んで使うも最初は何の特もない技で、しかも威力がまるで小石を積み上げていくがようにしか上がらないのだ。
それ故に普通の人間は他の技を使う。
魔力が多いものは魔法を宿した魔法剣を、腕力が強いものは力まかせに相手を断ち切る大技を、両方共に長けているものは最終奥義と呼ばれる物まで辿り着く(最終奥義を放てるものはそれこそ歴史上数える程しかいないが)。
ならばなぜ騎士団の団長を務めていたはずのガレルがそんな技を使っているか、それは簡単だ。
ガレルは最初は体格も細く魔力もほとんどなかったからだ。
騎士団に入団したものの中で最も細く才のない男だったガレルは教師役の団員の努力虚しくこの技しか覚えられなかった。
故にガレルは一生をかけてこの技を振り続けた。
いくら笑われようと、いくら他の皆の成長が早くともこれだけを振り続けた。
そして辿り着いたこの技の威力、それは…
僅かな動きで躱した獣王の横を通り過ぎた斬撃波は森を抉り大地を抉り周りを命がけで受け止めている騎士団員達の結界と石壁に直撃した。
大きな砂煙が立ち上ったそこは、まるで元々何もなかったかのように石壁が消え去っていた。
本来斬撃波は飛ばないこの技だがあまりにも振る速度が早くなりすぎたせいか真空波並のものが飛ぶようになってしまっていた。
「当たれば必殺、かすれば重症、か。毎度のことながら年々恐ろしくなっていく。」
「まったく変わらないのに届きそうに無いお前に言われたかないがな。」
取り敢えずいつもの初動をした二人はそのまま距離を詰めた。
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