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間章 勇者と森妖精の泡沫の鎮魂歌
第368話 終わりに相応しい場所
しおりを挟むアンデットナイトの肉体が崩れ去りただの肉片となったと同時にそれまでこの場所に満ちていた魔力が消え去った。すると戦いを見守っていたティアから魔力が漏れ出し始めた。
「あ…」
「夢の終わり、いや罪の積み重ねの終わりの方が正しいだろうな特に歌姫、お前にとっては。」
ティアが見慣れた白と黒の髪に戻ったニイはそう声をかける。
その言葉で自分の中で起こっている崩壊について理解することが出来た。
(肉塊に戻るんじゃなくて中から少しずつ消えていくような感覚…これが、終わりなんだ…)
武器をしまい近づいてきたルアーナはティアの様子に別れが近い事を察しニイに耳打ちをした。
(…景色とか…綺麗なとこ…連れて行かない…?)
(…分かった連れて行く所は決まってる。)
「歌姫」
「!な、なんですか…?」
「お前が終わるに相応しい場所に連れて行ってやる。」
「え…分かりました。」
ここに来た時と同じように二人を抱えたニイ達は来た時と同じ道を辿りトワエルハードのアジトを出た。
住む者のいなくなったこの建物は崩れることも無くただただ朽ちて行くだけだろう。もしかしたら魚達が愛を育むかもしれない。人間達に見つかり遺跡と思われるかもしれない。魔物たちに見つかり壊されるかもれれない。その未来を一瞬、考えたニイだったがすぐに頭の中から追い出してトワエルハードの記憶から分かった、ある場所へと転移魔法で移動するのだった。
その場所は海の中にあった。何年も管理の手が入っていないのか藻が生え始めており、その上昔の悲劇のせいで血が床にベッタリと張り付きそれがますます建物の劣化を加速させていた。元の姿からかけ離れていた。だがそれでもティアには一目で分かった。家族以上に大切になった人が自分の為に命をかけて作ってくれた場所。名前の意味を聞いても顔を真っ赤にして教えてくれなかった場所。
コーラルハイドの劇場、その名をティアの為の劇場、その場所だった。
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