竜の契約者

ホワイトエンド

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7章 勇者と魔王の正義

第310話 瓦礫

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落ちてきた瓦礫によって煙が上がる。
晴れたそこにはなんとか顔だけは死守するような形で瓦礫の下敷きになったビートの姿があった。
慌ててハリエスとアリスが近づこうとすると今度は自分たちの真上から瓦礫が降ってきた。
それを見て顔を青ざめさせた二人だったがその瓦礫はフルルによって砕かれた。
それを見た二人はフルルに礼をして向かおうとすると今度はディレードが止めた。
「二人共、救出は不要です。」
「どうして!?」
「そうですよ、今天井が私達のせいで崩れかかっているんです。あのままでは!」
フルルは声こそあげないものの先程までと結論が違うことにクエスチョンマークを浮かべている。
「これは天啓ですよ。」
「天…」
「啓…?」
「ええ、これは彼の父親が呼んでいるんですよ。」
「彼の父親って…」
「自分のところに来てくれとあの世の管理人様に頼み込んで連れてきて貰おうとしているんですよ。」
どこか納得したような顔でそんなことを言うディレードに驚愕を隠せない二人。フルルはそうなんだと言う感じだ。困惑も何もなくディレードが言うならそうなんだろうという感じだ。
「そこまで求めてくれる人がいるとはいささか羨ましいものですね。」
「がぁ…あ…」
そんな言葉をぶつけられたビートは薄れていく意識の中で思う。
(父さん…呼んでくれてるの…?そっか…嬉しいな…死ぬのってどうなるんだろう…痛いのかな…そっか…)
どんどん瓦礫が落ちてきて遂にアリス達では近づけないぐらいに瓦礫が積もってしまった。
「ああ!!?」
「ぐっ…」
二人が悔しそうな表情で手を伸ばす。
ディレードは羨ましそうな表情で眺める。
だがその中で瓦礫の下から小さな小さな声がかすかに聞こえるのだつた。

「死、ぬの…怖いよ…誰、か…助けて…」
痛いのが嫌な小さい子供の泣き声が小さく呟かれていたのだった。
そんな言葉も虚しく非情に瓦礫は降り注いだ。

「分かった、任せろ。」
そんな言葉が聞こえた。それも今まさに崩壊してる天井から。
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