竜の契約者

ホワイトエンド

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7章 勇者と魔王の正義

第298話 闇夜

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あらかたの話を聞き終わったミーリアは顎に手を当てて考えていた。
「どう?なにか分からないことある?」
「えっと呼ばれたのはなんだよね?」
「うん、勇者様の仲間のは忙しくて来れなかったんだって。」
「なるほど…ありがとう助かったわ。」
「ううん、いいのいいの私もあっちから来た商人さん達の話を聞いただけだしね。」
「それじゃあニイ様の所に戻るわ。」
「ふふ、うちは防音はしっかりしてるから限界までお楽しみにね?」
「…!?やらないわよ!ふん、だ!」
怒ったミーリアはそのまま「おやすみ!」と叫んだあと部屋に戻っていった。
「ありゃりゃ、言いすぎちゃった。」
苦笑いしながらミーリアが入っていった宿屋の扉を眺める。
「お母さんも今日は仕事はもういいって言ってたし部屋に割り込んじゃおうかなぁ?喜んでくれるかな?…あ、そういえば救急箱用の薬草の交換時期だっけ。しょうがないちょっと薬屋のおじさんのところに行こっと。」

「夜にごめんなさーい、おやすみなさーい」
宿屋街から路地一つ抜けた先の薬屋から出たエレナは薬草の入った小さな紙袋を右手に下げて帰り道を急いでいた。
大きめの胸が走りづらいのかかなり息を切らしながらの疾走になっていた。
「私、も魔法、覚えとけば楽、だったのかな!」
流石にこれ以上遅くなるのはまずいといつもは通らない路地を通る。
そこは他の街区の路地より掃除が行き届いていて家の入口などもある明るい路地だ。
「前に、事件も、あった、けど、解決したから、いい、よね!」
走る走る。下着をつけていない胸はいつもより揺れる。先程通りすがった男性もその胸に目が釘付けとなっていた。
綺麗な茶色の髪もいつもはミーリアの髪と同じく一つに纏めているのだが風呂上がりで乾かしていたのでそのまま真っすぐおろしている状態だ。

そんな感じで走っていると再び前から人が歩いてきた。耳があるところを見るに獣人だろうかかなり若い男性だ。下を向いて疲れ果てたようにゆっくりと歩いている。
(外から辿り着いた人かな?薬屋に行くのかな?でももう閉めるって言ってたし念の為声かけておこうかな?)
通り過ぎたところでそんなことを考え息を整えて声をかけた。薬屋はもう閉めるから行っても意味がない、と。すると、青年は止まった。それからこちらを向いた。そこで気づいた。彼の様子がおかしい事に。体が全力で逃げろと言ってくることに。
「『闇よ、蠢け我が体の力になれ』」
「え?」
「『暗黒強化ダークパワーアップ』」
その魔法が放たれた瞬間彼の周りに黒い力が纏わりつく。そしてエレナの意識は途切れた。

途切れる直前に見えたのは拳を握った怪しげな笑いを浮かべた青年の姿だった。
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