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6章 魔王と英雄モドキ
第262話 変わらない彼
しおりを挟む私の話をしようと思う
私はディレードの事が好きだ
誰よりも戦う力が無くて誰よりも成長出来ないのに誰よりも人の前に立つ彼が好きだ
変わらないのだ彼は
あの男友達を倒した魔術も今回レイスを祓った魔法もどちらも出会った時から同じ威力で使っていた
まるでそれで固定されているかのように未来を投げ捨てたかのように強くも弱くもならないそのままだ
だからこそ私は彼を好きになった
何かが変わるのが嫌いだ
周りの環境があっさりと変わっていくのが本当に嫌だった
そのままでいいよどうしてみんな成長したいのどうしてみんな新しい事を知りたがるのどうしてそんな目で私を非難するの
だから身長が伸びなかったのも嬉しかった視線が変わると困ってしまうところだったから
大人は好きだほとんど変わらないから
子供は嫌いだ目を離すと成長してしまうから
そんな中でもディレードは特に変わらなかった
身長は体が成長をぎりぎり覚えていたのかある程度成長したけど中身もそれ以外も何も変わっていなかった
変わらない
それだけで私にとっては宝でしかなかった
彼と出会った時は気づかなかった
だけど何度か会ううちに彼は変わらないんだと気づいた
実は彼は一切髪が伸びないのだ
少し会わなかっただけでも普通の人は髪が少し伸びる
なのに彼は一切変動がなかった
かといって髪が無くなっていくこともなかった
その変動のなさにぬいぐるみと同じ愛らしさを覚えた
だけど本人は気づいていないようだったというか今でも気づいていないようだ
最初は抱きしめるなど色々としたが今の年齢に近づくにつれてちょっと恥ずかしくなってきたところを彼が作るぬいぐるみで我慢している
ぎゅっとしすぎていつも綿が吹き出してしまう
これくらいディレードを抱きしめられたらどれだけいいだろう
血が出るだろうか途中で止めるだろうか気を失ってしまうだろうかずっとそれをしたくてたまらないだけどそれをしたら死んでしまう
死なれるのは嫌だ
昨日懇願を拒否されたのは少し悔しかった
私達を信頼出来ないって言われてるみたいで
彼の言うことならなんでも信じてその通りに動くのに
本当に死んで欲しくない
彼がいなければ私は生きている意味がなくなってしまう
あそこまで聞いてくれないなんて思わなかった
だからもし彼が死んでしまうなら死神が来る前に
私が奪う
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