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5章 天衣無縫の少女と欲望の町
第222話 ソレ
しおりを挟むソレ、は獣だった。人間だった。子供だった。大人だった。生きていた。死んでいた。ありとあらゆる全てだった。全てから外れていた。ソレは理解してはいけない、知識から外れるモノだった。
だがそれは理解できてしまう。恐らく元は一匹の獣だったのだろう。狼が元になっているのがほんの僅かに分かる。その残っている部分は足の生え際に残っている毛だ。それ以外は最早元のモノとは違う、生き物と認識してはいけないバケモノだった。
何が混ぜられたのだろうか沢山の肉が膨れ上がったようにその背に付いていた。元の顔すら見えないくらいに色々付いていた。
足は虎型魔物の足だろうか?ソレが根本の僅かな部分を残してくっついていた。
背にいくつもの人の手が生え今も動き続けている。まるで使い方の分からないものを手に入れたので試しに動かしているかのように。
飛び出している部分には鋭い歯がいくつも並んだ口が何個も並んでいた。
一つからは毒のような息が、他には炎などを吐き散らしこちらもまたコントロール出来ていないようだ。たまに自分の体に吹き掛けてしまっている。だなそのついた傷は次の瞬間には魔力により修復されていく。
最も目を向けてはいけないのはその膨れ上がった肉塊の一番上にあるいくつもの目だ。
そのそれぞれが血走った目で辺りを見渡していた。
「あ、ああ…あああ…」
「なんだよ…これ…」
「『愚物が。』」
「?」
エリリス、ルパクド、ハリエス、セイはそれぞれの反応を見せていた。
前者の二人はそれを理解しようとして脳がそれを拒みハリエスへのそれとは違う認識の外のものへの恐怖から震え上がっていた。
セイはエリリスの力が弱まったので音がした方を見たら不思議なものがいたという認識の為他よりは驚きが少なかった。
ハリエスは恐怖こそしていなかったが素材を瞬間に理解しマニビアを見て罵倒を吐き捨てた。
『グギャアアア!!!!!』
ソレが咆哮をした瞬間ハリエスの《ゴーストハンド》が魔力ごと全て吹き飛ばされマニビアが自由となり、肉塊が蠢いたかと思えば手が伸びてきてマニビアを自分のところまで引き寄せその上に乗せていた。
「ははは!!!!見たか、この『メルビガルト』は!錬金術により全ての生き物を混ぜた我が最高傑作だ!ははは!!」
そうして部屋には彼の自信満々に自慢する声が響いた。
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