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5章 天衣無縫の少女と欲望の町
第191話 ノゾミ
しおりを挟む「何も持っていないトイウコトハ私達は魔物からも狙われるという事デス。」
「…!」
それは他の魔物だがハリエスにも覚えがあった。
騎士団になりたての頃ディレードに連れられ野生の魔物の観察に行った時、下位の魔物が何度も上位の魔物に襲われ全滅していた。下位の魔物は数こそ上回っていたがそんなもの関係ないと能力でそれを蹴散らし食らっていた。
つまり、
「ワタシタチは魔物の中では最下位、攻撃しても守ってもナニをシテモそれこそ下手な人間のコドモニモ負けるの。それを初代?をエリリス様がタスケテそのお礼にここでイチゾクで従業員さんのお相手をシテルノ。」
「そう、か…」
「皆笑顔でカエッテイクから悪いことジャナイ、と思う。」
「……」
そこまで聞いたハリエスはふと、ディレードに昔言われた言葉を思い出した。
『正しいこととは誰も困らせないことです。誰もその行動で困らなければ正しいこと、なんです。それをよく覚えていてください。』
その言葉に一瞬納得しそうになったところで心のどこかに引っかかりを覚えた。
「それは貴女の…望みなの、ですか?」
言ってから後悔した。何を言っているのだ、と。正しいことなのだからこれで話を終わらせればいいじゃないか、と。
それを聞いて、少女は答えた。
「チガウよ?」
否定だった。それを聞いてハリエスは目を見開いた。
「ワタシの望みは、恋、をシテミタイ。」
「こ、い?」
「いつもアイが無い欲望だけのヨルだからシテミタイと思ってる。」
「ですが先程悪いことではないと!」
「悪いことジャナイけど、私はアマリ好きじゃないダケ。」
「……」
「それに初代はワタシには関係ナイシ。自由にイロンナことをしたい。それがノゾミ、だよ?」
口を閉じることが出来なかった。悪いことではない、正しくないことなど初めて聞いた。それなら今ここで彼女がやっていることは悪なのか?いや誰にも迷惑をかけていない、ディレードの言葉に従うなら正しいことなのだ。
だがハリエスにはもうそれが正しい事には思えなくなっていた。
「そう、か…」
「そろそろヨルだよ?私もシゴトがあるからもうキュウケイハ終わりにしないと。ハリエス君ありがとうハナシアイテになってくれて。」
そうして追い出されるがごとくハリエスはエリリスの部屋へと戻っていった。
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