竜の契約者

ホワイトエンド

文字の大きさ
上 下
97 / 418
4章 聖人と少女と暗殺者

第88話 処刑

しおりを挟む

「まず一つ目の質問。『汝は盗みをしたか』」
(どう答えるか…)
「したが俺ははそんなに量は盗っていない」

「二つ目、『汝は人殺しをしたか』」
(成程全てが終わった後に答えが出てくるか。)
「した。だが俺は多くは殺していない。」

「三つ目、『汝、ここまでに嘘は無いか』」
(何故そんな事を?)
「無い。」

「判決が下った。」
(公平にと言っていたが恐らくあちらが絶対有利だ。)
「ここまでに嘘は無かった故に少し天秤は罪無しへと傾く。」
「なん…だと…!?」
(あくまで公平を貫くつもりか?ならば勝ち目はある!)
そう確信した、魔物は次の瞬間目を剥いた。

「だが貴様の罪がこの場にいるそれ故に罪ありへと傾く。」
「!?」
「んん!!」

魔物の視線が少女へと向く。

「嘘の無い証言は確かに美徳だ。だが本来ならそれは絶対でなくてはならない。悲しいことだ。」
苦笑いのような表情を浮かべ肩を竦めるディレード。まるで本気で呆れているかのようだ。

「だがここに真実の罪の証拠がいる。であるならば美徳で稼がれた好感度など紙くず同然だ。」
「き、貴様!公平では無かったのか!」
「公平だとも貴様がその少女を捨てていれば無罪だったかもしれない程にな。」
「しまっ…!?」
「そう、お前は聡明だ。何度も何度も我々を振り切り新たな群れを作り人に被害を出してきた。だがな、今回はミスをしたな。そんなに好みだったか?確かに貴様の女であった奴等の気絶した姿と同じく服を着たまま、下半身の服がズラされている。」
「そんなことまで分かっていたのか!?」
「ええ、貴方は女を荒く一回で食い切ったりはしない。何度も何度も相手が、出来るように調整をして自分に依存させる。いやはや、貴方の群れを潰したあとの女性の社会復帰は大変だったんですよ?貴方のモノでなければ満足出ないようにされてるわ、やった後に自由を少しずつ増やされていたせいで自分が捕まっていた事を忘れている方もいらっしゃいましたしね。」
これは全て真実だ。この魔物は荒く女を食い荒らせず一人の女を使い回しをする。その女に自分に依存させ自由を与え自分で戻ってくるようにする。実に困る手段だ。なんせその女はそれで幸せなのだから。昼は捕まる前に暮らしていた村で夜は魔物のアジトで暮らしていた少女がいた時は突き止めるのにかなりの時間を要した。
「だからここでは彼女達に関する罪は問えない。何故なら皆幸せそうだったから。ですがそれは一切されていない彼女がいます。」
「ぐっ………」
「それでは証人一つだけ聞きます。そうだ、というときは縦に、違うというときは横に首を振ってください。」
「や、やめろ!」
「んん」
少女は縦に首を振った分かったとでも言っているらしい。
「彼に『無理矢理』関係を結ばれそうになりましたか?」
少女は首を、

縦に振った。

「決まりです。これより罰を執行します。」
「くっ…そうだ!これは人間どもの裁判なのだろう!?弁護人がいないのは不公平だぞ!」
「成程やはりその辺りの知識はあるか。だが…ハハハ。」
「何がおかしい!」
「そこに最初から居たじゃないですか。」
「なに…?ここには他には誰も…」
「私は元々その少女は貴方の弁護人としてこの空間に入れてるのですよ?貴方の人徳とでもいうもので堕ちているかもと思いながらね。」
「なぁ!?」
「いやはや女を替えたばかりでしたから味方して貰えませんでしたね。残念でした。」
「くそ…」
魔物が前の女を最後に相手したのは一昨日のこと。最後まで強情で魔物の物にならなかった女が逃げてそれを昨日、殺したところだったのだ。

「まさか…お前…俺が女を失ったことまで調べていたのか!?」
「あれは偶然でした…森を調査していたら貴方が女性を殺している珍しい場面に遭遇したのですよ。」
「最初からこの瞬間まで…分かっていた…っていうのか!?」
「そうなるようにしましたしね。」
微笑みながら手のひらの上で魔物を踊らせていたことを白状するディレード。そして…

「話は終わりだ。これより判決だ。」
「ま、待ってく…」
「有罪だ。よって罰を与える。」
「くそ!」
逃げようとするがいつの間にか足が鎖によって縛り付けられていた。
「いつの間に!?」
「『我はここに神の代行者として裁きをくだす。』」
詠唱が始まる。それは罪人への死の足音。
「『汝が受けし罰は色欲それすなわち桃の色が示す罪なり』」
「い、嫌だ!?」
周りに魔力が高まっていく。腕のない彼では例えここが外であったとしても動きを抑えられては何も出来ない。
「『桃の色の罪の刑罰は体の全てが腐り果てる地獄なり』」

「『決して気を失うことなどできぬ中で腐り果てるがいい』!」
そうディレードが言った瞬間裁判所が消え去り形作っていた魔力が魔物へと纏わりついた。そして、
「ヒィ!?俺の俺の足が!?」
足から腐り始めた。
「祈ることだ、出来るだけ早く目が腐り落ちるのをな。」
そして10秒もしないうちに魔物は腐り落ちたのだった。

「せめて次の生では人に迷惑をかけるな。大指名手配魔物『ビペンス』魔物の言葉で依存を意味する名を関した魔物よ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん
ファンタジー
精霊の存在する世界。精霊が加護を与える者は精霊の使いと呼ばれ、尊ばれる世界。 精霊が加護を与えることは稀であるのだが――。 優秀な兄姉と比べられ、幼い頃から奇行を繰り返すため「愚か者」と、家族は元より使用人にまで虐げられていたアビアント侯爵家次女シーナ。 ある日、シーナの世話係としてつけられたリイザと共に領地へ送られたシーナは、運命の邂逅を果たす。それにより明かされる、シーナの真実とは。 ※ご都合主義ですので、ふわぁっとお読みください。虐待表現があるのでR15にしてあります。全十七話+番外編でお届けいたします。 *R6.6/25にHOTランキング入りしておりました!たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。たくさんのお気に入り登録、しおり、エールにいいね、本当にありがとうございます!気まぐれに番外編を綴りますので、もうしばらくお付き合いくださいませ。 *R6.7/3番外編も終了しました。たくさんの方にお読みいただき、本当にありがとうございました。 *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/2に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。

【完結】冒険者になる!え?クマさんも一緒だよ?〜魔力が少ない少年の思考錯誤冒険記録〜

Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』
ファンタジー
【あらすじ】  魔力が少なく、自分で攻撃魔法を放つ事が出来ない落ちこぼれ。  自分には、剣の才能も魔法士の才能もない。  文官になれる程の頭脳もない。  自分には何が出来るか模索する。  そこで見つけたのが魔法陣を描くことだった。  自分で描いた魔法陣を駆使して、狩りをして行く物語。  ※戦うクマさん  ※クマさんは保護者  ※設定ふんわり  ※独自設定あり  ※ご都合主義  ※R15は保険  ◇◇◇ 【HOT女性向けランキングに載りました!ありがとうございます♪】  2022.9.01 100位  2022.9.02 97位 → 86位 → 77位  2022.9.03 67位 → 65位

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません) ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。 苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。 錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。 グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。 上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。 広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。

処理中です...