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4章 聖人と少女と暗殺者
第88話 処刑
しおりを挟む「まず一つ目の質問。『汝は盗みをしたか』」
(どう答えるか…)
「したが俺ははそんなに量は盗っていない」
「二つ目、『汝は人殺しをしたか』」
(成程全てが終わった後に答えが出てくるか。)
「した。だが俺は多くは殺していない。」
「三つ目、『汝、ここまでに嘘は無いか』」
(何故そんな事を?)
「無い。」
「判決が下った。」
(公平にと言っていたが恐らくあちらが絶対有利だ。)
「ここまでに嘘は無かった故に少し天秤は罪無しへと傾く。」
「なん…だと…!?」
(あくまで公平を貫くつもりか?ならば勝ち目はある!)
そう確信した、魔物は次の瞬間目を剥いた。
「だが貴様の罪がこの場にいるそれ故に罪ありへと傾く。」
「!?」
「んん!!」
魔物の視線が少女へと向く。
「嘘の無い証言は確かに美徳だ。だが本来ならそれは絶対でなくてはならない。悲しいことだ。」
苦笑いのような表情を浮かべ肩を竦めるディレード。まるで本気で呆れているかのようだ。
「だがここに真実の罪の証拠がいる。であるならば美徳で稼がれた好感度など紙くず同然だ。」
「き、貴様!公平では無かったのか!」
「公平だとも貴様がその少女を捨てていれば無罪だったかもしれない程にな。」
「しまっ…!?」
「そう、お前は聡明だ。何度も何度も我々を振り切り新たな群れを作り人に被害を出してきた。だがな、今回はミスをしたな。そんなに好みだったか?確かに貴様の女であった奴等の気絶した姿と同じく服を着たまま、下半身の服がズラされている。」
「そんなことまで分かっていたのか!?」
「ええ、貴方は女を荒く一回で食い切ったりはしない。何度も何度も相手が、出来るように調整をして自分に依存させる。いやはや、貴方の群れを潰したあとの女性の社会復帰は大変だったんですよ?貴方のモノでなければ満足出ないようにされてるわ、やった後に自由を少しずつ増やされていたせいで自分が捕まっていた事を忘れている方もいらっしゃいましたしね。」
これは全て真実だ。この魔物は荒く女を食い荒らせず一人の女を使い回しをする。その女に自分に依存させ自由を与え自分で戻ってくるようにする。実に困る手段だ。なんせその女はそれで幸せなのだから。昼は捕まる前に暮らしていた村で夜は魔物のアジトで暮らしていた少女がいた時は突き止めるのにかなりの時間を要した。
「だからここでは彼女達に関する罪は問えない。何故なら皆幸せそうだったから。ですがそれは一切されていない彼女がいます。」
「ぐっ………」
「それでは証人一つだけ聞きます。そうだ、というときは縦に、違うというときは横に首を振ってください。」
「や、やめろ!」
「んん」
少女は縦に首を振った分かったとでも言っているらしい。
「彼に『無理矢理』関係を結ばれそうになりましたか?」
少女は首を、
縦に振った。
「決まりです。これより罰を執行します。」
「くっ…そうだ!これは人間どもの裁判なのだろう!?弁護人がいないのは不公平だぞ!」
「成程やはりその辺りの知識はあるか。だが…ハハハ。」
「何がおかしい!」
「そこに最初から居たじゃないですか。」
「なに…?ここには他には誰も…」
「私は元々その少女は貴方の弁護人としてこの空間に入れてるのですよ?貴方の人徳とでもいうもので堕ちているかもと思いながらね。」
「なぁ!?」
「いやはや女を替えたばかりでしたから味方して貰えませんでしたね。残念でした。」
「くそ…」
魔物が前の女を最後に相手したのは一昨日のこと。最後まで強情で魔物の物にならなかった女が逃げてそれを昨日、殺したところだったのだ。
「まさか…お前…俺が女を失ったことまで調べていたのか!?」
「あれは偶然でした…森を調査していたら貴方が女性を殺している珍しい場面に遭遇したのですよ。」
「最初からこの瞬間まで…分かっていた…っていうのか!?」
「そうなるようにしましたしね。」
微笑みながら手のひらの上で魔物を踊らせていたことを白状するディレード。そして…
「話は終わりだ。これより判決だ。」
「ま、待ってく…」
「有罪だ。よって罰を与える。」
「くそ!」
逃げようとするがいつの間にか足が鎖によって縛り付けられていた。
「いつの間に!?」
「『我はここに神の代行者として裁きをくだす。』」
詠唱が始まる。それは罪人への死の足音。
「『汝が受けし罰は色欲それすなわち桃の色が示す罪なり』」
「い、嫌だ!?」
周りに魔力が高まっていく。腕のない彼では例えここが外であったとしても動きを抑えられては何も出来ない。
「『桃の色の罪の刑罰は体の全てが腐り果てる地獄なり』」
「『決して気を失うことなどできぬ中で腐り果てるがいい』!」
そうディレードが言った瞬間裁判所が消え去り形作っていた魔力が魔物へと纏わりついた。そして、
「ヒィ!?俺の俺の足が!?」
足から腐り始めた。
「祈ることだ、出来るだけ早く目が腐り落ちるのをな。」
そして10秒もしないうちに魔物は腐り落ちたのだった。
「せめて次の生では人に迷惑をかけるな。大指名手配魔物『ビペンス』魔物の言葉で依存を意味する名を関した魔物よ。」
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