竜の契約者

ホワイトエンド

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2章 捕らわれと解放

第57話 2章エピローグ3 救えなかったもの

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「うっぐぅ」
「わっ、わぁ!?だ、大丈夫ですか!?だ、誰かー、キュアちゃーん!マリウスさーん!レルトくーん!誰でもいいから来てー!!!!」
屋敷に転移したニイはそれで魔力が無くなりリアの胸に倒れこんでしまった。それに慌てたリアが大慌てで屋敷のメンバーを呼ぶ。
「む、この声はリア様、なんですか大声を出してはしたないですよ、ニイ様ファルーグ様!?どうなされたのです!?」
「リアちゃんどうしたの?……わぁ!?ニイ君!?大丈夫?ファルーグ様は?そっちも危ないの?」
キューアとマリウスが即座に大慌てで駆けつけてニイ達をベッドへと運んでいく。



「またここか」
『いつもここだな。』
「そろそろ最強であるはずなのに戦いが終ったあと倒れるのを辞めたい。」
『最強にも種類があるのだ諦めろ。』
「はぁ」
こんな会話を目覚め一番にするニイとファルーグ。
「後遺症も無いようだし、これからは魔力回復薬が必要だけど使える手だな。」
『うむ、リアには心配させたが謝ってすむだろう!』
「どうだろうな、手を見てみろよ」
『手……?あ……』
ニイが見た手には右手をフィリア、左手にリアが握りしめたまま眠っていた。。
「これは許してくれないんじゃないか?俺も含めて。」
『うむ、怒られよう、存分にな。』

それから二人が目を覚ますと同時に危ない賭けをしたことを叱られた。それと同じくらい心配もされたが。どうやらニイ達は二日間眠っていたらしく、フィリアよりはリアの方の動揺がかなりあったがフィリアのお陰で取り乱しすぎることは無かったらしい。

それからリアを屋敷に改めて迎い入れることとなり楽しい晩餐をしたあとリアはファルーグ達の部屋の前まで来ていた。
(二人のことは皆から聞いた。ファルーグであることの確認もした。あとは彼の体がどうなってるのかを確かめるだけ……これにやましいことは無い、ただただ気になっただけ興味だけなんだからそんな色欲的な考えなんて……)
そこまで考えた辺りで頭を振り思考を変えた。
(キュアちゃんと長く話すのはやっぱり危険だねそっちの方向に考えが流れちゃう。本人は全く出来ないのに…ん?)
そこで遮音魔法が部屋にかかっているのに気づいた。
(も、もしかしてニイ君とフィーちゃん?二人はそんな関係だったの?で、でもあり得るかも二人は結構お似合いといえばお似合いだし……ちょっと見るだけだから!本当にやってたら回れ右するから!)
そうしてドキドキしながら見てみると…… 
『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
「!?」
ファルーグの叫び声が聞こえた。
『我の、我のせいだ!あのもの達が死んでしまったのは!我が!あやつを!殺さなかったせいで!』
「……」
「いい加減にしろ魔王お前の叫び声魔力混ざってるから微妙に防音が崩れそうだ。」
『汝は……悔しくないのか?あやつを殺さなかったせいで死ななくても良いもの達が……』
「それを感じれないからこんな冷静なんだよ。」
『……』
「俺にはお前と同じくらいに怒り狂える程あいつらとほ仲が良くない。だからお前と一緒に怒るのはお前達の冒涜だ。だから俺は怒らない。」
『……取り乱した、すまぬ。』
「あいつらに見せないのは同意出来たからな。こうやって防音までして叫ばせてるだろ?」
『助かったすまない。』
「俺を最初に助けてくれた礼の一つだまだまだ返しきれんからな。細かいので返しておかないとな。」
『ハハ、確かにな貸しは膨大だまだまだ払って貰わなくては困るな』
怒りもいくらか払えたようであるファルーグが落ち着いたときにはもうリアの姿は部屋の前には無かった。

(私はバカだ!あれほどの被害が出てファルが苦しまない訳がない!)
リアはいつの間にか屋敷を飛び出して夜のキャスニアの町を走っていた。
ファルーグは昔から犠牲が出る戦闘はなるべく犠牲が出ないような作戦が決まるまで実行しないという魔王の中でも飛びっきりの安全主義者だったのだ。そんな彼があんな悲劇を前にしたのだ怒り狂ってもおかしくはない。恐らく狂え無かったのはリアを庇っていたからだというのがリアには分かる。急激な魔力切れも怒りを無理矢理魔力まで使って抑え込んだが故だろう。
キャスニアの端までたどり着いてしまったので近くの木の下に座り込むリア。

「ファルのこと分かってたはずなのになぁ。
やっぱり魔王になってから変わっちゃたのかな。」
空を見上げる。何一つ遮る物も無い綺麗な夜空だ。
「こうなったのは私のせいだ。彼のそばにいたのに戦う方法を学んでいなかった私の。」
目を閉じる。そこに浮かぶは来世に旅立っていってしまった町の人達の笑顔が浮かび上がる。

彼女は覚悟を決めた。
戦うという覚悟を。次、こんなことがあっても彼の手を借りなくても良いように。

魔王に守られし小悪魔は巣立ちの覚悟を決めた。その意思は誰にも揺るがせない強い意思として。
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