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2章 捕らわれと解放
第30話 巡回?
しおりを挟む「それじゃいつもどうり回るか。」
『いやちゃんとした服を貰いにいくぞ。』
それが屋敷を出た二人の最初の会話だった。
「はぁ?服?なんでだ?」
『デートにそのままの服で行くつもりだったのか?』
「そりゃな。」
『だから汝は元の世界で恋人がいなかったのだ。』
「ひでぇ言い様だ……」
『よいか!』
ファルーグはまるで言い聞かせるかのような口調で語り始める。それを聞きながらニイは里中の見回りを開始する。
『そもそもフィリア殿が汝に誘いを言い出そうとしていた期間が大体汝にも分かるだろう。』
「えーと、あんな感じになにか言いたそうな感じだった期間は……二週間ぐらいだな。」
『改めて聞くと、とっと問いただしてやれという感じがするな……』
「それがどうしたんだよ。」
『その期間こそ汝がフィリア殿の頭の中の何割かを占拠していた期間なのだ!』
「はぁ……それで?」
『そこまで思わせておいて理想より下にさせたら申し訳ないと思わないのか!』
「と言われてもな……」
歩きながら話ながらも通りがかりに魔物達に会えば挨拶をしていくニイである。
「そもそも記憶が無くなってる上に感情まで欠けてる俺になにを期待してると思ってんだよ。」
『恐らくは本当に町を歩きたいだけであろう。かすかな汝の記憶の中にあるうぃんどうしょっぴんぐなるものと同じだ。』
「それ、冷やかしとイコールじゃなかったけ……」
『探ってるみる感じ似たような感じだな。』
「なら尚更いつもどうりでいいんじゃないか?」
『いやそうもいかんのだ。』
「なんで?」
『フィリア殿は私服を用意しているのだ。』
「……いつの間に?」
『約三週間前だな。あの頃合いにルアグルがたまに呼び出しに来るようになったであろう?』
「あー、あったなそんなこと。その時か。」
『恐らく完成したのが二週間前あたりでそこでルアグルにでも唆されたのではないか?』
「あの人ならやりそうだな……」
ルアグルとはフィリアの仕事服を作った男だ。皆には本名を縮めてルルと呼ばせている。華やかな女性ものの服に身を包み、髪を独特な形で纏めているのが特徴だ。
そんな見た目でありながら魔物達の良き愚痴聞き役や相談役になっているため里の皆からの信頼も厚い。
彼女は里の皆が着る服をデザインし作る仕事を担っている。そんな彼女からフィリアが呼び出されていたということは新しい服をフィリアに作っていたのだろう。
「考えたときにはテンションが上がって「この服着て二人で来ます!」とか言ってしまったんだろうが……。」
『いざ汝を前にしたら言えなくなったのであろうな。』
「なら、準備してやった方がいいな……」
『であろう?』
「じゃあ服飾店に出発だな。」
『うむ。』
そうして半分くらい歩きながら回ったところで巡回を中断してルアグルの服飾店へ足を向けた。
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