竜の契約者

ホワイトエンド

文字の大きさ
上 下
28 / 418
1章 魔王と勇者と姫

第22話 人間の戦い

しおりを挟む
戦闘で最初に繰り出されたのは男達の中でもスピードの早いナイフ持ちのレンジャー達五人による微妙にタイミングをずらしての波状攻撃だった。それを青年は一番最初に攻撃をして来た男を掴み自分と場所を入れ替え身代わりにして第一陣を防ぎ、攻撃方向を変えることの出来た男達二人は方向転換の隙に剣を作り出し一人残さず切り裂いた。

それに怯まず突撃してきたのは重装備のアーマーナイト達の五人だった。彼等は一糸乱れぬ盾を前に構えての突撃《シールドチャージ》でレンジャーごと吹き飛ばさんが如く真っ直ぐに突っ切ってきた。それを青年は真ん中の男を踏み台にして飛び越えた。

「おらぁ!」
「ぬぐっ」
身動きの出来ない空中に出るのを待っていた、ガレンがまるで砲弾かのように突っ込んできた。鞘から引き抜く勢いで斬りかかってくるガレンを左手に少し小さな盾を作ることで傷が付くことはなかったが木に思いっきり叩きつけられる。
「ぐっ.....」
「食らいやがれ!」
「.....!」
吹き飛ばされるのを待っていた斧持ちの男二人が青年に向かって斧を振るった。それを右に身を屈めながら転がることで躱した。
「ははは!やっぱり勇者の力無しじゃあ躱すくらいしか出来ねぇか!」
「っ.....」
「その表情だ。苦しんでるのに他に何かあると考えているその顔だ。その顔が俺は果てしなく嫌いなんだよ!希望を持つんじゃねぇよ!追い詰められてんだからもっと苦しめよ!今のお前にはもう手段なんて無いんだよ!力がない奴がどれだけ頑張った所で力のある奴には敵わないんだよ!」
そこまで言った所で青年がガレンに対して向き直り剣を本気で構えた。
「俺さえ倒せば多少は有利もしくは崩壊するだろうという目論みか、他の奴等を先に倒した方が早くて確実だったと後悔するんだな!」

青年が突撃してくるところに王夫妻を確保している三人以外の残っていた三人の弓使いと二人の魔道士が攻撃魔法と魔力を込めた矢《パワーショット》を放ち攻撃を仕掛けてくる。青年はそれを体に傷を付けながら強行突破をしてガレンに突っ込んみつばぜり合いに持ち込んだ。
「やっぱりテメェ見た目に合わねぇ力してるな!」
「今の精霊も『我はここに望む』中々力が強くてね助かってるよ。」
「やっぱテメェ腹が立つな!いい精霊が勝手に寄っていくのが気に入らねぇ!」
「そうか。なんだお前が俺を気に入らない理由はそうだったのか。『暗き闇よ』もう少し理屈があるのかと思ってたら全然無かったのか。『気高き炎よ』少し驚きだ。」
「(なんだ?さっきから何か別の声が)別にテメェが力を持ってるのは気にはしねぇ。むしろテメェが俺の雑な教え方でここまで強くなったのは無茶苦茶嬉しくなっちまったしもっと育ててやりてぇとまで思っちまったよ!」
「.....それはどういうことだ?」

てっきり若輩者の自分があっという間に自分を越えそうなのが武術最強である彼は気に入らないのだと思っていたがなにやら様子が変わってきた。他の男達の攻撃を躱し迎撃しながら彼との激突を続けながら会話を続けていく。
「そりゃ最初はお前みたいな奴が俺より強く馴れるわけねぇきつい教え方で根を上げさて勇者の資格は俺にあると思わせたかったさ。けどな!今まで色んな奴に戦い方を教えてきた、そんな中でもお前は俺が理想とする育ち方をしていった。嘘みてぇだと思った。俺が理想とする教え子が見つかったってのはな。みっちり教え込んでやったら伝説に残ってるどんな勇者にだって負けなくなると、いや誰よりも強くなれるそう思った。」
「だったら.....だったらなぜ俺を、殺したんだ!」
表情が動かないながらも声に感情が入る。
「そんなに高評価でいたなら、殺す必要は無かっただろう!」
失った心の欠片から激情が沸き上がってくる。少なからず師と仰いではいたのだ。故に何故と彼は叫ぶ。それを聞いてガレンは苦々しい表情を浮かべながら口を開いた。
「それはな、俺が精霊が嫌いだからだ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・

マーラッシュ
ファンタジー
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

お母さん冒険者、ログインボーナスでスキル【主婦】に目覚めました。週一貰えるチラシで冒険者生活頑張ります!

林優子
ファンタジー
二人の子持ち27歳のカチュア(主婦)は家計を助けるためダンジョンの荷物運びの仕事(パート)をしている。危険が少なく手軽なため、迷宮都市ロアでは若者や主婦には人気の仕事だ。 夢は100万ゴールドの貯金。それだけあれば三人揃って国境警備の任務についているパパに会いに行けるのだ。 そんなカチュアがダンジョン内の女神像から百回ログインボーナスで貰ったのは、オシャレながま口とポイントカード、そして一枚のチラシ? 「モンスターポイント三倍デーって何?」 「4の付く日は薬草デー?」 「お肉の日とお魚の日があるのねー」 神様からスキル【主婦/主夫】を授かった最弱の冒険者ママ、カチュアさんがワンオペ育児と冒険者生活頑張る話。 ※他サイトにも投稿してます

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

乙女ゲーのラスボスに転生して早々、敵が可愛すぎて死にそうです

楢山幕府
ファンタジー
――困った。「僕は、死ななければならない」 前世の記憶を理解したルーファスは、自分がかつてプレイした乙女ゲームのラスボスだと気付く。 世界を救うには、死ぬしかない運命だと。 しかし闇の化身として倒されるつもりが、事態は予期せぬ方向へと向かって……? 「オレだけだぞ。他の奴には、こういうことするなよ!」 無表情で無自覚な主人公は、今日も妹と攻略対象を溺愛する。 ――待っていろ。 今にわたしが、真の恐怖というものを教え込んでやるからな。 けれど不穏な影があった。人の心に、ルーファスは翻弄されていく。 萌え死と戦いながら、ルーファスは闇を乗り越えられるのか!? ヒロインは登場しません。

処理中です...