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ワイドショー(1)
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サトウがオウズマートの前まで戻ってくると、店の出入口には防犯用シャッターが下りていた。
何事かとサトウがシャッターの隙間から店内を覗くと、それに気づいたイナガキが裏口に回るようジェスチャーする。
隣に居たはずの少女はいつの間にか居なくなっていた。本当にお化けだったのだろうか。
公園から出てしばらく一緒に走っていたため、あの場に取り残されていることはまず無いだろうと考え、サトウは裏口へと向かった。
裏口の鍵を開けて待っていたイナガキと共に店内に戻ると、客のいない店内ではワンがテレビ画面を眺めていた。
「何かあったんですか?」
「おかえリ。運動公園が凄いことになってるナ。テレビ見てみロ」
「あぁ、そのことか」
モンド運動公園にて賎民調教犬チ・ワーワが脱走。下・中級国民に次々と噛みつく。
テレビで流れるワイドショーにはデカデカと事件の見出しが表示されている。
先ほどまでサトウが座っていた東屋や、倒壊した檻が画面に映し出されていた。
『こちらに入ってきている情報ですと、Fランクに8人。Cランクに1人。被害が出ているそうです』
司会のアナウンサーからの情報に、コメンテーターが反応する。
『Cランクが‥‥、それは可哀想ですね』
『おや、Fランクは可哀想ではないと?』
『いやいやいや!賎民調教犬がいる時点で、Fランクの方々は噛まれるために連れてこられていたわけですからね』
『この差別主義者め!自分がCランクだからFランクなんてどうでもいいと思ってるんだろう!』
『実際どうでもいいだろ!そうやってねぇ、私の評判を必死に落とそうとしてる感じ。Dランクの悪いところが出てますよ』
『僕がDランクなことは今関係ないでしょう!この!差別主義者!この!馬鹿!』
『馬鹿って言ったか!馬鹿って言ったほうが馬鹿なんですー!このハゲ!タコ!』
コメンテーター2人の取っ組み合いの喧嘩を、司会が仲裁するも互いに怒りは収まらないようだ。
司会がオロオロしていると画面がまた公園の中継映像に切り替わった。
公園内を動き回る人影が見える。
サトウが公園で出会った上半身だけムキムキの車椅子の男だ。
男は逆立ちのまま賎民調教犬チ・ワーワから逃げて回っている。
賎民調教犬チ・ワーワ。
賎民とは下級国民。主にFランクの人々のことを指す。
調教犬とは言うが、単に狂犬病に感染させられた小型犬のことである。専ら上級国民が下級国民を襲わせるときに用いられる。
一応、狂犬病に感染させてもいい犬種が定められており、チ・ワーワとパ・グーの2種となっている。
「へへっ、やるじゃないですか」
逆立ちでチ・ワーワから逃げる男を見ながら、サトウは鼻を擦る。
やはりあの男の筋肉は飾りではなかったのだ。例え歩いたことが無くとも。その太い両腕さえあれば男はどこへ行ってもやっていけるはずだ。
『『行けぇえええ!やれっ!やれっ!差せぇえええ!噛めぇ!噛めぇ!』』
ワイドショーでは、喧嘩していたはずのコメンテーター2人が肩を組んでチ・ワーワのことを応援する。
全く、男が負けるわけがないだろう。何のための筋肉だと思っているんだ。とサトウが思ったところで突如テレビ画面が真っ暗になった。
「!?」
「あラ。画面消えちゃったナ」
「せっかく応援してたのに。何とか直せません?」
「このテレビも古いからナ。4K対応とかいウ、化石みたいなテレビだからヨ」
「応援って、サトウ。不謹慎だぞ。犬が可愛いからって」
「あの犬が可愛いわけないでしょ!逆立ちのほうだよ!」
何事かとサトウがシャッターの隙間から店内を覗くと、それに気づいたイナガキが裏口に回るようジェスチャーする。
隣に居たはずの少女はいつの間にか居なくなっていた。本当にお化けだったのだろうか。
公園から出てしばらく一緒に走っていたため、あの場に取り残されていることはまず無いだろうと考え、サトウは裏口へと向かった。
裏口の鍵を開けて待っていたイナガキと共に店内に戻ると、客のいない店内ではワンがテレビ画面を眺めていた。
「何かあったんですか?」
「おかえリ。運動公園が凄いことになってるナ。テレビ見てみロ」
「あぁ、そのことか」
モンド運動公園にて賎民調教犬チ・ワーワが脱走。下・中級国民に次々と噛みつく。
テレビで流れるワイドショーにはデカデカと事件の見出しが表示されている。
先ほどまでサトウが座っていた東屋や、倒壊した檻が画面に映し出されていた。
『こちらに入ってきている情報ですと、Fランクに8人。Cランクに1人。被害が出ているそうです』
司会のアナウンサーからの情報に、コメンテーターが反応する。
『Cランクが‥‥、それは可哀想ですね』
『おや、Fランクは可哀想ではないと?』
『いやいやいや!賎民調教犬がいる時点で、Fランクの方々は噛まれるために連れてこられていたわけですからね』
『この差別主義者め!自分がCランクだからFランクなんてどうでもいいと思ってるんだろう!』
『実際どうでもいいだろ!そうやってねぇ、私の評判を必死に落とそうとしてる感じ。Dランクの悪いところが出てますよ』
『僕がDランクなことは今関係ないでしょう!この!差別主義者!この!馬鹿!』
『馬鹿って言ったか!馬鹿って言ったほうが馬鹿なんですー!このハゲ!タコ!』
コメンテーター2人の取っ組み合いの喧嘩を、司会が仲裁するも互いに怒りは収まらないようだ。
司会がオロオロしていると画面がまた公園の中継映像に切り替わった。
公園内を動き回る人影が見える。
サトウが公園で出会った上半身だけムキムキの車椅子の男だ。
男は逆立ちのまま賎民調教犬チ・ワーワから逃げて回っている。
賎民調教犬チ・ワーワ。
賎民とは下級国民。主にFランクの人々のことを指す。
調教犬とは言うが、単に狂犬病に感染させられた小型犬のことである。専ら上級国民が下級国民を襲わせるときに用いられる。
一応、狂犬病に感染させてもいい犬種が定められており、チ・ワーワとパ・グーの2種となっている。
「へへっ、やるじゃないですか」
逆立ちでチ・ワーワから逃げる男を見ながら、サトウは鼻を擦る。
やはりあの男の筋肉は飾りではなかったのだ。例え歩いたことが無くとも。その太い両腕さえあれば男はどこへ行ってもやっていけるはずだ。
『『行けぇえええ!やれっ!やれっ!差せぇえええ!噛めぇ!噛めぇ!』』
ワイドショーでは、喧嘩していたはずのコメンテーター2人が肩を組んでチ・ワーワのことを応援する。
全く、男が負けるわけがないだろう。何のための筋肉だと思っているんだ。とサトウが思ったところで突如テレビ画面が真っ暗になった。
「!?」
「あラ。画面消えちゃったナ」
「せっかく応援してたのに。何とか直せません?」
「このテレビも古いからナ。4K対応とかいウ、化石みたいなテレビだからヨ」
「応援って、サトウ。不謹慎だぞ。犬が可愛いからって」
「あの犬が可愛いわけないでしょ!逆立ちのほうだよ!」
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