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進軍3
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魔人達の集落近くで一晩過ごした俺達。
珍しくこの夜は魔物の襲来もなく、全員しっかりと眠れた。
起きてから白狐と灰虎がキャッキャッと騒いでいるが昨日の夜何かあったのだろうか。
俺達は朝からカレーを食べる。
今日はスープカレーにパンだ。
カレースープにパンを浸して食べると固めのパンも柔らかくなり食べやすい。
俺達が朝食を終え、その片付けをしている間に帝国軍の進軍が始まった。
やはり先頭は勇者パーティーが進む。
俺達も支度を終えて帝国軍に続く。
ここから先出没する魔物はゴブリンやホブゴブリン、ゴブリンウォリアーなどの鬼種が増えてきた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔物・魔人は短命種と長命種に分けられる。
ゴブリンなどは短命種の代表であり20年程度しか生きない。
ホブゴブリンでも30年程度、オーガでも40年くらい生きれば長生きな方である。
一方の長命種に関しては100年、長いものでは200年程度生きるものもある。
短命なほど子孫を多く残す傾向にあり、逆に長命になればなる程に子孫を残さなくなる。
短命種のゴブリンなどはその代表でとにかく子供を作る。
しかもその子供も3ヶ月もすれば成人扱いで自分達で獲物を狩りに行く。
そして子作りもするからどんどん増える。
そしてその中には特殊個体も出てくる。
生まれながらに人族語を操る真魔人だ。
真魔人は他の種ともコミュニケーションが取れる為、ゴブリンの真魔人とホブゴブリンの真魔人、オーガの真魔人にトロールの真魔人などが集まったコミュニティーを作る。
要するに鬼種の村だ。
真魔人は自分の種族の魔物ともコミュニケーションが取れる為、その村には真魔人、半魔人、魔物が集まる特殊な環境になる。
何よりもその数が多い。
単眼種の集落が200体程度だったのに対して鬼種の集落には20000体もの魔物・魔人が住んでいた。
その集落に3体の半魔人のゴブリンが駆け込んでくる。
「タイヘン!タイヘン!ニンゲン、クル!」
「ニンゲン、タクサン、クル!」
「タイヘン!」
それを聞いた真魔人のオーガが答える。
「何?人間が沢山来るだと?どういう事だ?二角様が人族領に侵攻に行ったのは知っているが、まさか敗れたのか?」
「ニンゲン、ヒトツメノヤツラ、タオシタ。」
「ニンゲン、タクサン!」
半魔人は尚も言う。
「えぇい、分からん!ゴブリンの魔人はおらんか?」
そう声をかけるとまだ子供のゴブリンの真魔人が近付いてくる。
「おらが話聞くだ。」
そう言うと半魔人のゴブリン達と話始める。
「グギャギャグギャギャ?」
「ギャギャギャ!」
「グギャギャ!」
話が通じたらしく真魔人のゴブリンは真魔人のオーガに訳した内容を伝える。
「コイツらが狩りをしに単眼種の集落近くまで出掛けた時に人族の軍隊と単眼種が争っていたらしいだ。で、その人族の軍隊が勝って、こちらに向かってくるとの事たべ。」
「なんと?!では二角様は敗れたのか?いや、入れ違いで人族が侵攻して来たのかもしれんな。」
真魔人のオーガは1人悩む。
「いや、どちらにせよ人族が攻めてくるなら迎え撃つしかあるまい。おいお前、この事をゴブリンとホブゴブリンどもに伝えろ。ワシはオーガとトロールに伝えて回る。」
そうして鬼種の村でも戦闘準備が始まる。
とは言え、二角の軍勢に入れなかった者達である。
やはり女、子供に老人が主だったメンバーになる。
鬼種の強みはその数だ。
村に住む者全員で侵攻してくる人族に対すると事が決まり武具の準備を進めるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帝国軍がその村を発見したのは、単眼種の集落を出て4日目の事だった。
その移動の間も沢山の魔物、魔獣に出くわし、円闘の型を維持しながらの侵攻となった。
この移動中での脱落者はなし。
先の戦いによる死傷者を引いて現在の戦闘要員は10000人強と言う所である。
「魔物の集落を発見!」
戦士ライオネルが声を上げる。
「皆の者!先日の戦闘同様、鏃の型で一気に制圧するぞ!」
「「「おー!」」」
先日の勝利もあり帝国軍兵士達の士気は高い。
目前の村からはゴブリンを始めとする鬼種がワラワラと出てきた。
「敵は鬼種のようだ!この僕が先陣をきる!皆僕に続けぇ!」
勇者バッシュが駆け出すとそれを追うように帝国軍兵士達も走り出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新人兵士のウィルは槍兵としてこの行軍に参加している。
兵士になる前は出身の村で農夫をしていた。
だが20歳になった時にもっと違う生き方がしたいと思い至り帝国軍兵士になる道を選んだ。
そもそも鍬を扱っていた事もあり長剣などよりは長物の方が扱い安かった。
そんな事もあって槍兵として訓練を積み、今回が初めての出兵となったウィル。
先の単眼種との戦いでは鏃の尻の部分での待機となった為、まだ戦闘はしていない。
今回の鬼種戦では先頭から数えた方が速い右翼部分にいる。
確実に戦闘に参加する位置だ。
緊張に足がもつれながらも倒れないように気を付けながら皆に合わせて走る。
自分が転けて陣形を乱す訳にはいかない。
そんなウィルが入る5人組は重装兵が壮年の顎髭が特徴的なダンに経験豊富な歩兵レイセス、ウナに同く槍兵のマイルズという構成である。
ウィル以外は出兵経験もあり、戦闘も経験済みだ。
そんな先輩達の中に入れられて余計に緊張気味のウィルだった。
しかし接敵の時は来た。
相手は長剣を持ったホブゴブリンだ。
帝国軍兵士の戦い方のお手本とも言うべきダンの大盾による足止めの後、槍兵のマイルズとウィルによる槍での突き、そして歩兵2名によりトドメをさす。
訓練通りだ。
初めて生き物に槍を突き刺したウィルだったがその手応えを実感する前に次の相手が現れた。
ゴブリンだ。同じくダンが大盾でゴブリンの棍棒を受ける。
その大盾の横から槍を突き出し、ゴブリンを突き刺す。
歩兵レイセス、ウナが前に出てゴブリンの首を刎ねる。
先程のホブゴブリンよりもすんなり槍が突き刺さった感触があった。
これなら自分も戦える。
ウィルがそう思った矢先である。
重装兵のダンが吹っ飛ばされた。
オーガが手にした棍棒で大盾ごとぶん殴ったのだ。
守りの要を失ったウィル達4人であったが経験豊富な歩兵レイセスは冷静に前に出てオーガに斬りつける。
しかしその剣はオーガの硬い皮膚に弾かれてしまう。
オーガがレイセスを押し潰すように棍棒を振るった。
レイセスは頭を胴体にめり込ませて倒れた。
初めて目の前で人が殺されるのを目撃したウィルは体が硬直して動けないでいる。
槍兵のマイルズが槍でオーガの顔を狙って突き上げる。
しかしオーガは棍棒を持たない手で槍を弾くと、マイルズを横殴りにした。
体をくの字に曲げて飛んでいくマイルズ。
そのマイルズが吐き出した血がウィルの顔にかかる。
温かい。
ウィルはそう思った。
人間の血って温かいんどなっと現実逃避するウィル。
目の前ではウナも殴り飛ばされてしまった。
残るは自分だけである。
正気に戻ったウィル。
「俺はこんな所では死なないんだ!」
大声で叫びながらオーガの胴体を槍で突くウィル。
その槍は見事にオーガの胴体に突き刺さり上半身と下半身を分断する。
己の秘められた力が開花したのだ。
この力があればゴブリンだろうとホブゴブリンだろうと、オーガだろうが敵じゃない。
「アハハハっ!来い鬼ども!この俺ウィルが相手をしてやる!」
首だけになったウィルが吼える。
オーガの体を二分になど出来ていなかった。
それどころか刺さりさえしなかった。
ウィルは横殴りに頭を棍棒で強打され首が吹っ飛んでいた。
全ては死ぬ前に見た幻想に過ぎなかった。
こうして新人兵士ウィルはその生涯を終えたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
勇者パーティーの戦士、ライオネルは順調に鬼どもと戦っていた。
両手に持った巨大斧でゴブリンを頭から叩き潰す。
「オラオラ!どうした鬼ども!こんなもんか?」
大音声で敵を煽る。
次に近寄ってきたのはホブゴブリン、その手にした棍棒で殴りかかってくる。
ライオネルは巨大斧で棍棒を弾くとそのままボブゴブリンの腹部に巨大斧を叩きつける。
体を上下に分断され絶命するホブゴブリン。
「はははっ!全く手応えのない奴等だぜ!」
ライオネルは吼える。
そこに向かってくるのは人族なら両手で持つような大槌を片手に握ったオーガだった。
「やっと張り合いのある奴がお出ましかぁ?」
ライオネルはそう言って巨大斧を振り回す。
その巨大斧はオーガの手にした大槌とぶつかり合い弾かれる。
弾かれた巨大斧をその膂力で踏ん張り止めると、そのまままたオーガに向けて叩きつける。
オーガも大槌を弾かれてバランスを崩していた為、その巨大斧はオーガの腰に入る。
が、腰骨に当たり食い込まず、そこまでダメージを与えられていない。
「ちっ!まだまだ、これからだ!」
ライオネルは吼えつつ巨大斧を振り回す。
がまた巨大斧が弾かれ出来た隙をついてオーガの拳がライオネルに迫った。
顔面を守るように片腕を上げる。
その拳の威力はライオネルを易々と吹っ飛ばす。
「へへへっ。やるじゃねーか。」
ライオネルは立ち上がりゆっくりとオーガに近付く。
「ニンゲン、シネー!」
片言て言うオーガ。半魔人だ。
「お前が死ねぇー!」
ライオネルと半魔人のオーガの打ち合いは続く。
「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃え盛れ、燃え盛れ魔素よ。我が目前の敵達に数多の火球となりて打倒し給え!ファイアショット!!」
魔術師ドリストルの詠唱によりその手にした短杖の先に魔法陣が描かれ、直径3cm程度の小さな火球が数十個生み出され、魔物達へと向かう。
小さい火球の為、その全身を焼くことは出来ないが体の一部を燃え上がらせる事は出来た。
「今だ!」
勇者バッシュは体の一部を焼かれ慌てふためくゴブリン、ホブゴブリンの首を刎ねていく。
また、帝国軍兵士と戦っているホブゴブリンの後ろに回ってその背中を斬りつける。
勇者バッシュの周りにはゴブリン、ホブゴブリンの死体が積み上がっていた。
「勇者様!」
「ありがとうございます勇者様!」
兵士達からかけられる声も賞賛に満ちている。
「ふふっ。僕の手にかかればこんなもんさ。」
勇者バッシュは兵士達に向かって言う。
そこへ棍棒を手にしたオーガが迫る。
「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」
ドリストルが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、オーガの顔面に命中。
「今だ!」
バッシュはオーガの元へと走り、その足元を斬りつける。
しかし一撃では切断に至らず何度も斬りつける。
顔面を燃え上がらせたオーガの足元を十数回斬りつけようやく切断、足を斬られバランスを崩して倒れ込むオーガ。
まだ顔面を火炎に包んでいる。
その首をまた何度も斬りつけるバッシュ。
拳を振り回し暴れるオーガ。
その手にあたり転がさせるバッシュ。
「よくもやってくれたな!」
バッシュは怒りを覚えて再度オーガに斬りつける。
ドリストルの魔術でダメージを与えた上で足を斬りつけて転ばせたのだ。
後はその首を落とすだけ。
「さっさと死ねよ!」
バッシュの剣戟を何十と受けたオーガはやがて息絶えた。
「はぁーはぁー、やっとか。」
息を切らせて肩で息をするバッシュ。
バッシュは基本的に誰かが攻撃して弱ったところにトドメを刺すと言う戦い方だ。
いいとこ取りがしたい。
こんなに肩で息をするほどがむしゃらに剣を振るったのはいつぶりだろうか。
いつもはライオネルが敵前方で注意を引きつけ、後方からバッシュが斬り込むのである。
つまり1人での戦闘経験はあまりない。
こんな混戦になるとライオネルとはぐれてしまい1人で敵を相手にしなければいけなくなる。
「ちっ!ライオネルは何処に行った?」
いつもの必勝パターンに戻す必要がある。
そう考えライオネルを探し始めるバッシュであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帝国軍の後を追う形で侵攻してきた俺達。
そんな俺達がその村を見つけるのと帝国軍兵士と村から出てきた鬼種達との戦闘が始まったのはほぼ同時だった。
今回の相手にはトロールの姿も見えた為、帝国軍兵士では荷が重いだろうと言う事で皆で相談の上、俺、銀狼、緑鳥以外の面々は戦闘に参加する事になった。
「申し訳ございません、黒猫様。いつも私の護衛をお願いしてしまって。」
「気にするなよ。あんたがいるから皆全力で戦えるんだから。あんたを守るのは当然さ。」
申し訳なさそうに言う緑鳥に向けて俺は言う。
「ありがとうございます。銀狼様も、ありがとうございます。」
「いいんだ。オレはこんな状態だからな。それでも貴女を守る分には問題ないさ。」
緑鳥に礼を言われ、無くした右肩を擦りながら銀狼が言う。
見れば皆、王化してトロールに挑んでいる。
トロールと言えばAランクの魔物だ。
魔人化している可能性もあるから皆王化したのだろう。
皆1対1でトロールと対峙しているが、特に問題はなさそうである。
金獅子がその大剣でトロールの上半身と下半身を分断する。
蒼龍が三つ叉の槍でトロールの首元を突き刺す。
紅猿が燃え盛る棍でトロールの腹を突き破る。
黄豹が手にした刃付トンファーでズタズタに切り裂く。
白狐が光速の速さで抜刀しトロールの首を刎ねる。
紫鬼がその剛腕でトロールの顔を殴り180度回転させる。
灰虎が両腕の鉤爪でトロールの顔を縦横無尽に切り裂く。
そんなこんなで皆トロールを無事に倒し、帝国軍兵士達も負傷者は出しつつも見事に鬼種の集団を殲滅したのだった。
珍しくこの夜は魔物の襲来もなく、全員しっかりと眠れた。
起きてから白狐と灰虎がキャッキャッと騒いでいるが昨日の夜何かあったのだろうか。
俺達は朝からカレーを食べる。
今日はスープカレーにパンだ。
カレースープにパンを浸して食べると固めのパンも柔らかくなり食べやすい。
俺達が朝食を終え、その片付けをしている間に帝国軍の進軍が始まった。
やはり先頭は勇者パーティーが進む。
俺達も支度を終えて帝国軍に続く。
ここから先出没する魔物はゴブリンやホブゴブリン、ゴブリンウォリアーなどの鬼種が増えてきた。
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魔物・魔人は短命種と長命種に分けられる。
ゴブリンなどは短命種の代表であり20年程度しか生きない。
ホブゴブリンでも30年程度、オーガでも40年くらい生きれば長生きな方である。
一方の長命種に関しては100年、長いものでは200年程度生きるものもある。
短命なほど子孫を多く残す傾向にあり、逆に長命になればなる程に子孫を残さなくなる。
短命種のゴブリンなどはその代表でとにかく子供を作る。
しかもその子供も3ヶ月もすれば成人扱いで自分達で獲物を狩りに行く。
そして子作りもするからどんどん増える。
そしてその中には特殊個体も出てくる。
生まれながらに人族語を操る真魔人だ。
真魔人は他の種ともコミュニケーションが取れる為、ゴブリンの真魔人とホブゴブリンの真魔人、オーガの真魔人にトロールの真魔人などが集まったコミュニティーを作る。
要するに鬼種の村だ。
真魔人は自分の種族の魔物ともコミュニケーションが取れる為、その村には真魔人、半魔人、魔物が集まる特殊な環境になる。
何よりもその数が多い。
単眼種の集落が200体程度だったのに対して鬼種の集落には20000体もの魔物・魔人が住んでいた。
その集落に3体の半魔人のゴブリンが駆け込んでくる。
「タイヘン!タイヘン!ニンゲン、クル!」
「ニンゲン、タクサン、クル!」
「タイヘン!」
それを聞いた真魔人のオーガが答える。
「何?人間が沢山来るだと?どういう事だ?二角様が人族領に侵攻に行ったのは知っているが、まさか敗れたのか?」
「ニンゲン、ヒトツメノヤツラ、タオシタ。」
「ニンゲン、タクサン!」
半魔人は尚も言う。
「えぇい、分からん!ゴブリンの魔人はおらんか?」
そう声をかけるとまだ子供のゴブリンの真魔人が近付いてくる。
「おらが話聞くだ。」
そう言うと半魔人のゴブリン達と話始める。
「グギャギャグギャギャ?」
「ギャギャギャ!」
「グギャギャ!」
話が通じたらしく真魔人のゴブリンは真魔人のオーガに訳した内容を伝える。
「コイツらが狩りをしに単眼種の集落近くまで出掛けた時に人族の軍隊と単眼種が争っていたらしいだ。で、その人族の軍隊が勝って、こちらに向かってくるとの事たべ。」
「なんと?!では二角様は敗れたのか?いや、入れ違いで人族が侵攻して来たのかもしれんな。」
真魔人のオーガは1人悩む。
「いや、どちらにせよ人族が攻めてくるなら迎え撃つしかあるまい。おいお前、この事をゴブリンとホブゴブリンどもに伝えろ。ワシはオーガとトロールに伝えて回る。」
そうして鬼種の村でも戦闘準備が始まる。
とは言え、二角の軍勢に入れなかった者達である。
やはり女、子供に老人が主だったメンバーになる。
鬼種の強みはその数だ。
村に住む者全員で侵攻してくる人族に対すると事が決まり武具の準備を進めるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帝国軍がその村を発見したのは、単眼種の集落を出て4日目の事だった。
その移動の間も沢山の魔物、魔獣に出くわし、円闘の型を維持しながらの侵攻となった。
この移動中での脱落者はなし。
先の戦いによる死傷者を引いて現在の戦闘要員は10000人強と言う所である。
「魔物の集落を発見!」
戦士ライオネルが声を上げる。
「皆の者!先日の戦闘同様、鏃の型で一気に制圧するぞ!」
「「「おー!」」」
先日の勝利もあり帝国軍兵士達の士気は高い。
目前の村からはゴブリンを始めとする鬼種がワラワラと出てきた。
「敵は鬼種のようだ!この僕が先陣をきる!皆僕に続けぇ!」
勇者バッシュが駆け出すとそれを追うように帝国軍兵士達も走り出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新人兵士のウィルは槍兵としてこの行軍に参加している。
兵士になる前は出身の村で農夫をしていた。
だが20歳になった時にもっと違う生き方がしたいと思い至り帝国軍兵士になる道を選んだ。
そもそも鍬を扱っていた事もあり長剣などよりは長物の方が扱い安かった。
そんな事もあって槍兵として訓練を積み、今回が初めての出兵となったウィル。
先の単眼種との戦いでは鏃の尻の部分での待機となった為、まだ戦闘はしていない。
今回の鬼種戦では先頭から数えた方が速い右翼部分にいる。
確実に戦闘に参加する位置だ。
緊張に足がもつれながらも倒れないように気を付けながら皆に合わせて走る。
自分が転けて陣形を乱す訳にはいかない。
そんなウィルが入る5人組は重装兵が壮年の顎髭が特徴的なダンに経験豊富な歩兵レイセス、ウナに同く槍兵のマイルズという構成である。
ウィル以外は出兵経験もあり、戦闘も経験済みだ。
そんな先輩達の中に入れられて余計に緊張気味のウィルだった。
しかし接敵の時は来た。
相手は長剣を持ったホブゴブリンだ。
帝国軍兵士の戦い方のお手本とも言うべきダンの大盾による足止めの後、槍兵のマイルズとウィルによる槍での突き、そして歩兵2名によりトドメをさす。
訓練通りだ。
初めて生き物に槍を突き刺したウィルだったがその手応えを実感する前に次の相手が現れた。
ゴブリンだ。同じくダンが大盾でゴブリンの棍棒を受ける。
その大盾の横から槍を突き出し、ゴブリンを突き刺す。
歩兵レイセス、ウナが前に出てゴブリンの首を刎ねる。
先程のホブゴブリンよりもすんなり槍が突き刺さった感触があった。
これなら自分も戦える。
ウィルがそう思った矢先である。
重装兵のダンが吹っ飛ばされた。
オーガが手にした棍棒で大盾ごとぶん殴ったのだ。
守りの要を失ったウィル達4人であったが経験豊富な歩兵レイセスは冷静に前に出てオーガに斬りつける。
しかしその剣はオーガの硬い皮膚に弾かれてしまう。
オーガがレイセスを押し潰すように棍棒を振るった。
レイセスは頭を胴体にめり込ませて倒れた。
初めて目の前で人が殺されるのを目撃したウィルは体が硬直して動けないでいる。
槍兵のマイルズが槍でオーガの顔を狙って突き上げる。
しかしオーガは棍棒を持たない手で槍を弾くと、マイルズを横殴りにした。
体をくの字に曲げて飛んでいくマイルズ。
そのマイルズが吐き出した血がウィルの顔にかかる。
温かい。
ウィルはそう思った。
人間の血って温かいんどなっと現実逃避するウィル。
目の前ではウナも殴り飛ばされてしまった。
残るは自分だけである。
正気に戻ったウィル。
「俺はこんな所では死なないんだ!」
大声で叫びながらオーガの胴体を槍で突くウィル。
その槍は見事にオーガの胴体に突き刺さり上半身と下半身を分断する。
己の秘められた力が開花したのだ。
この力があればゴブリンだろうとホブゴブリンだろうと、オーガだろうが敵じゃない。
「アハハハっ!来い鬼ども!この俺ウィルが相手をしてやる!」
首だけになったウィルが吼える。
オーガの体を二分になど出来ていなかった。
それどころか刺さりさえしなかった。
ウィルは横殴りに頭を棍棒で強打され首が吹っ飛んでいた。
全ては死ぬ前に見た幻想に過ぎなかった。
こうして新人兵士ウィルはその生涯を終えたのだった。
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勇者パーティーの戦士、ライオネルは順調に鬼どもと戦っていた。
両手に持った巨大斧でゴブリンを頭から叩き潰す。
「オラオラ!どうした鬼ども!こんなもんか?」
大音声で敵を煽る。
次に近寄ってきたのはホブゴブリン、その手にした棍棒で殴りかかってくる。
ライオネルは巨大斧で棍棒を弾くとそのままボブゴブリンの腹部に巨大斧を叩きつける。
体を上下に分断され絶命するホブゴブリン。
「はははっ!全く手応えのない奴等だぜ!」
ライオネルは吼える。
そこに向かってくるのは人族なら両手で持つような大槌を片手に握ったオーガだった。
「やっと張り合いのある奴がお出ましかぁ?」
ライオネルはそう言って巨大斧を振り回す。
その巨大斧はオーガの手にした大槌とぶつかり合い弾かれる。
弾かれた巨大斧をその膂力で踏ん張り止めると、そのまままたオーガに向けて叩きつける。
オーガも大槌を弾かれてバランスを崩していた為、その巨大斧はオーガの腰に入る。
が、腰骨に当たり食い込まず、そこまでダメージを与えられていない。
「ちっ!まだまだ、これからだ!」
ライオネルは吼えつつ巨大斧を振り回す。
がまた巨大斧が弾かれ出来た隙をついてオーガの拳がライオネルに迫った。
顔面を守るように片腕を上げる。
その拳の威力はライオネルを易々と吹っ飛ばす。
「へへへっ。やるじゃねーか。」
ライオネルは立ち上がりゆっくりとオーガに近付く。
「ニンゲン、シネー!」
片言て言うオーガ。半魔人だ。
「お前が死ねぇー!」
ライオネルと半魔人のオーガの打ち合いは続く。
「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃え盛れ、燃え盛れ魔素よ。我が目前の敵達に数多の火球となりて打倒し給え!ファイアショット!!」
魔術師ドリストルの詠唱によりその手にした短杖の先に魔法陣が描かれ、直径3cm程度の小さな火球が数十個生み出され、魔物達へと向かう。
小さい火球の為、その全身を焼くことは出来ないが体の一部を燃え上がらせる事は出来た。
「今だ!」
勇者バッシュは体の一部を焼かれ慌てふためくゴブリン、ホブゴブリンの首を刎ねていく。
また、帝国軍兵士と戦っているホブゴブリンの後ろに回ってその背中を斬りつける。
勇者バッシュの周りにはゴブリン、ホブゴブリンの死体が積み上がっていた。
「勇者様!」
「ありがとうございます勇者様!」
兵士達からかけられる声も賞賛に満ちている。
「ふふっ。僕の手にかかればこんなもんさ。」
勇者バッシュは兵士達に向かって言う。
そこへ棍棒を手にしたオーガが迫る。
「魔素よ集まれ、集まれ魔素よ。火炎の力へとその姿を変えよ。魔素よ燃えろ、燃えろよ魔素よ。我が目前の敵を火炎となりて打倒し給え!ファイアボール」
ドリストルが呪文を唱え終えると短杖の先に描かれた魔法陣より直径30㎝程度の大きさの火球が生まれ、オーガの顔面に命中。
「今だ!」
バッシュはオーガの元へと走り、その足元を斬りつける。
しかし一撃では切断に至らず何度も斬りつける。
顔面を燃え上がらせたオーガの足元を十数回斬りつけようやく切断、足を斬られバランスを崩して倒れ込むオーガ。
まだ顔面を火炎に包んでいる。
その首をまた何度も斬りつけるバッシュ。
拳を振り回し暴れるオーガ。
その手にあたり転がさせるバッシュ。
「よくもやってくれたな!」
バッシュは怒りを覚えて再度オーガに斬りつける。
ドリストルの魔術でダメージを与えた上で足を斬りつけて転ばせたのだ。
後はその首を落とすだけ。
「さっさと死ねよ!」
バッシュの剣戟を何十と受けたオーガはやがて息絶えた。
「はぁーはぁー、やっとか。」
息を切らせて肩で息をするバッシュ。
バッシュは基本的に誰かが攻撃して弱ったところにトドメを刺すと言う戦い方だ。
いいとこ取りがしたい。
こんなに肩で息をするほどがむしゃらに剣を振るったのはいつぶりだろうか。
いつもはライオネルが敵前方で注意を引きつけ、後方からバッシュが斬り込むのである。
つまり1人での戦闘経験はあまりない。
こんな混戦になるとライオネルとはぐれてしまい1人で敵を相手にしなければいけなくなる。
「ちっ!ライオネルは何処に行った?」
いつもの必勝パターンに戻す必要がある。
そう考えライオネルを探し始めるバッシュであった。
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帝国軍の後を追う形で侵攻してきた俺達。
そんな俺達がその村を見つけるのと帝国軍兵士と村から出てきた鬼種達との戦闘が始まったのはほぼ同時だった。
今回の相手にはトロールの姿も見えた為、帝国軍兵士では荷が重いだろうと言う事で皆で相談の上、俺、銀狼、緑鳥以外の面々は戦闘に参加する事になった。
「申し訳ございません、黒猫様。いつも私の護衛をお願いしてしまって。」
「気にするなよ。あんたがいるから皆全力で戦えるんだから。あんたを守るのは当然さ。」
申し訳なさそうに言う緑鳥に向けて俺は言う。
「ありがとうございます。銀狼様も、ありがとうございます。」
「いいんだ。オレはこんな状態だからな。それでも貴女を守る分には問題ないさ。」
緑鳥に礼を言われ、無くした右肩を擦りながら銀狼が言う。
見れば皆、王化してトロールに挑んでいる。
トロールと言えばAランクの魔物だ。
魔人化している可能性もあるから皆王化したのだろう。
皆1対1でトロールと対峙しているが、特に問題はなさそうである。
金獅子がその大剣でトロールの上半身と下半身を分断する。
蒼龍が三つ叉の槍でトロールの首元を突き刺す。
紅猿が燃え盛る棍でトロールの腹を突き破る。
黄豹が手にした刃付トンファーでズタズタに切り裂く。
白狐が光速の速さで抜刀しトロールの首を刎ねる。
紫鬼がその剛腕でトロールの顔を殴り180度回転させる。
灰虎が両腕の鉤爪でトロールの顔を縦横無尽に切り裂く。
そんなこんなで皆トロールを無事に倒し、帝国軍兵士達も負傷者は出しつつも見事に鬼種の集団を殲滅したのだった。
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