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49話 二人の水着①

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土曜日の午後1時、5分前に太郎は約束の場所に到着するとすでに花子と美咲が待っていた。

「おはよう」太郎が声をかける。

「おはよう、鳴海くん」美咲が優しく微笑む。

「遅いよ、太郎!」花子が元気よく言う。

太郎は少し焦った様子で言う。「ごめん、5分前じゃ遅かった?」

花子はくすくすと笑う。「冗談だよ。私たちが早く着きすぎただけ」

太郎は安堵の表情を見せる。

「ねえねえ、美咲」花子が突然言い出す。「さっきからあの人たち、美咲のこと見てるよ」

美咲は驚いて周りを見回す。「え?そんなことないよ...」

花子はニヤリと笑う。「いやいや、絶対見てる。美咲かわいいもんね」

「も、もう...結城さんったら」

太郎は困惑した表情で二人を見ている。

美咲は少し考えてから「でも、結城さんこそ目立ってるよ。さっきから何人もの人が振り返ってたし」

花子は得意げに胸を張る。「そう?まあ、私も負けてないからね!」

太郎は呆れたように言う。「お前ら、本当仲よすぎ」

花子は太郎の肩を軽く叩く。「太郎も褒めてあげようか?」

「いや、いい」太郎は慌てて断る。

三人は笑いながら、ショッピングセンターに向かった。

ショッピングセンターに到着すると、太郎は少し考え込むような表情を見せた。

「あのさ」太郎が言う。「やっぱり俺は別行動の方がいいんじゃないか?女性の水着売り場に男が入るのは...」

花子は即座に首を横に振る。「ダメダメ!せっかく三人で来たんだから、一緒に選ぼうよ」

美咲も小さな声で言う。「私も...鳴海くんの意見も聞きたいな」

太郎は少し困った表情を見せる。「でも、変に思われるかもしれないし...」

花子は太郎の腕をつかむ。「もう決まりだから!行くよ!」

「おい、ちょっと待...」

太郎の言葉が途切れたのは、花子の胸が腕に当たったからだ。

「う...」太郎は言葉につまる。

花子はニヤリと笑い「どうしたの、太郎?顔真っ赤だよ」

「べ、別に...」太郎は目をそらす。

美咲は二人の様子を見て、少し複雑な表情を浮かべる。

花子は太郎の腕を引っ張りながら歩き始める。「さあ、水着売り場はこっちだよ!」

太郎は慌てて花子のペースについていく。「ちょっと、そんなに引っ張るなよ...」

美咲も二人の後を追いかける。

水着売り場に近づくにつれ、太郎の表情がみるみる曇っていく。

「やっぱり俺は...」太郎が言いかける。

花子は太郎の腕をさらに強く引っ張る。「もう!太郎ったら意気地なし!」

「そうじゃなくて...」太郎は必死に説明しようとする。

「女性の水着売り場に男が入るなんて、変に思われるだろ」

美咲も少し心配そうな表情を見せる。

「確かに...少し目立つかもしれないね」

花子は二人の様子を見て、少し考え込む。「うーん、そっか...」

太郎はほっとした表情を見せる。「だろ?だから俺は...」

しかし、花子の表情が突然明るくなる。「よし、決めた!」

「え?」太郎と美咲が同時に声を上げる。

「太郎は私の彼氏ね!」花子が宣言する。

「はぁ!?」太郎は驚きのあまり声が裏返る。

美咲も目を丸くする。「え、えっと...」

花子は得意げに説明を始める。「大丈夫だって!太郎が私たちの彼氏ってことにすればいいんだよ」

太郎は顔を真っ赤にする。「な、何言ってるんだよ!」

美咲も少し赤面しながら「そ、そんな...」と小さな声で言う。

花子は楽しそうに続ける。「冗談だよ。でも、どっちかの彼氏として来てるなら問題ないでしょ?」

太郎は頭を抱える。「いや、それはそうかもしれないけど...」

美咲は小さく笑みを浮かべる。「確かに、彼氏が彼女の水着を選ぶのはおかしくないよね」

「よし、決まり!」花子が太郎の腕を引っ張る。「さあ、行くよ!」

太郎は諦めたような表情で言う。「はぁ...わかったよ」

三人は水着売り場に向かって歩き始める。太郰の表情には不安と期待が入り混じっている。

花子は楽しそうに言う。「ねえねえ、どんな水着がいいかな?」

美咲も少し興奮気味に答える。「うん、楽しみだね」

太郎はため息をつきながらも、内心では少しワクワクしていた。

(まあ、これも青春の1ページってことか...)

そう思いながら、太郎は二人の後について歩いていった。

水着売り場に到着すると、花子が勢いよく中に入っていく。

「わー!かわいい水着がいっぱい!」

美咲も目を輝かせながら、「本当だね。どれも素敵...」

一方、太郎は入り口で立ち止まってしまう。

「おい、太郎!何してるの?」花子が声をかける。

太郎は恥ずかしそうに答える。「いや、やっぱり俺が入るのは...」

花子はため息をつく。「もう!さっきも言ったでしょ。あんたは私の彼氏なんだから」

「そうだけど...」太郎は周りの視線が気になって仕方がない。

美咲が優しく言う。「鳴海くん、大丈夫だよ。一緒に見よ」

太郎は深呼吸をして、意を決したように一歩を踏み出す。

「よし!その調子!」花子が応援する。

三人で水着売り場に入ると、周りの客が少し驚いた様子で見ている。

太郎は小さな声で言う。「やっぱり目立つよ...」

花子は構わず前に進む。「気にしない気にしない!さあ、どんな水着がいいかな?」

美咲も少し緊張した様子だが、真剣に水着を見始める。

太郎は周りの視線を気にしながらも、二人についていく。そして、花子が手に取った水着を見て、彼の顔が真っ赤に染まる瞬間、この水着選びの珍道中が本格的に始まったことを誰もが悟ったのだった。
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