上 下
44 / 52

43話 カラオケの誘惑

しおりを挟む
土曜日の昼過ぎ、太郎は家を出た。今日は花子と美咲とカラオケに行く約束の日だ。待ち合わせ場所に向かう途中、太郎の頭の中では様々な想像が駆け巡る。

(三人でカラオケか。楽しみだな)

駅前に着くと、すでに花子と美咲が待っていた。

「おはよう!」太郎が声をかける。

「太郎、遅い!」花子が怒ったふりをする。「こんな可愛い女の子二人を待たせるなんて!」

太郎は慌てて謝る。「ご、ごめん。そんなつもりじゃ...」

「冗談よ」花子が笑う。「ほら、いう事あるでしょ、ほら!」

花子は謝る太郎に迫り、褒めろ褒めろとアピールする。

それを察した太郎は少し照れくさそうに花子を見る。花子は可愛らしいワンピース姿。

「え、えっと...花子、すごく可愛いよ。そのワンピース、似合ってる」

花子は満足げに微笑む。「うんうん!次は美咲も褒めなきゃダメだよ」

太郎は美咲の方を向く。美咲は白いブラウスにスカート姿で、普段よりも大人っぽく見える。

「美咲も...すごく綺麗だよ。大人っぽくて」

美咲は顔を赤らめて俯く。「ありがとう...」

花子は嬉しそうに二人を見る。「よし、これでOK!カラオケに行こう!」

三人でカラオケ店に向かう。受付している間、太郎は周りの視線を感じた。

「ねえねえ、太郎。見られてるよ」花子が小声で言う。

「え?」

「ほら、あそこの人たち。太郎のこと見てる」花子がニヤリと笑う。

「両手に花で、羨ましがられてるんじゃない?」

「ちょっとこっち見ただけでしょ」太郎は気づかないフリをする。

部屋に入ると、三人は早速歌い始めた。流行りの曲やアニソンなど、次々と歌を選んでいく。

花子が流行りのアニソンを熱唱すれば、太郎はロックを叫ぶように歌う。美咲も少し恥ずかしそうにしながらもアイドルソングを優しく歌った。

「美咲、歌上手いじゃん!」花子が感心する。

美咲は照れくさそうに笑う。「そんなことないよ...」

太郎も頷く。「うん、すごく綺麗な声だった」

しばらく歌って喉が渇いてきた頃、美咲が立ち上がる。

「ドリンクバーに行ってくるね」

美咲が部屋を出ると、花子がにやりと笑って太郎に近づいた。

「ねえ、太郎。今密室に二人きりだよ」花子が意味ありげな口調で言う。

「え?」太郎は戸惑いの表情を見せる。

花子は続ける。「私がドリンクバーに行ってる間に美咲を襲っちゃダメだからね」

太郎は驚いて声を上げる。「そ、そんなことするわけないだろ!」

花子はくすくすと笑う。「暗がりに乗じてとか...冗談冗談」

その時、ドアが開き、美咲が戻ってきた。

「お待たせ」美咲が飲み物を持って入ってくる。

花子は急に明るい声で言う。「じゃあ、私も入れてくるね!」

太郎と美咲が二人きりになる。太郎の心の中では、花子の言った『二人きり』が繰り返されていた。

太郎は時折、歌う美咲の横顔を見つめていた。その度に、胸の奥で何かが熱くなるのを感じる。

「俺も飲み物入れてくる」花子が戻ってくると太郎は逃げるように部屋を出た。

太郎が出ていくと花子が言う「こうやって三人で出かけるの楽しいね」

「うん。違うところも行ってみたいな」美咲は頷き次もまたどこかへ行きたいと続けた。

カラオケの部屋に歌声が響く中、今日の日の出来事が彼らの関係にどんな影響を与えるのか。それはまだ誰にもわからない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

広くて狭いQの上で

白川ちさと
青春
ーーあなたに私の学園の全てを遺贈します。   私立慈従学園 坂東和泉  若狭透は大家族の長男で、毎日のように家事に追われている。  そんな中、向井巧という強面の青年が訪れて来た。彼は坂東理事長の遺言を透に届けに来たのだ。手紙には学園長と縁もゆかりもない透に学園を相続させると書かれていた――。  四人の学生が理事長の遺した謎を解いていく、謎解き青春ミステリー。

内弟子物語 ー捨てきれない夢、武術の究極「活殺自在」を求める5名の青春群像ー

KASSATSU
青春
夢を捨てた人生に意味はないと考え、空手に魅力を感じた青年たちが純粋に若い時を駆け巡る青春群像。個性豊かな登場人物が織りなす毎日を綴る。試合を意識した空手ではなく、武術の究極と言われる活殺自在の境地を目指す過程をそれぞれの視点から描く。若いゆえの悩みを抱えつつも、自身が信じたことについて突き進む様子をユニークなエピソードごと紹介。 謎の過去を持つ師、藤堂真人のところに集まった高山誠、御岳信平、龍田真悟、松池進、堀田賢が武術と癒しという両極を学ぶ中で気付き、成長していく。

坊主頭の絆:学校を変えた一歩【シリーズ】

S.H.L
青春
高校生のあかりとユイは、学校を襲う謎の病に立ち向かうため、伝説に基づく古い儀式に従い、坊主頭になる決断をします。この一見小さな行動は、学校全体に大きな影響を与え、生徒や教職員の間で新しい絆と理解を生み出します。 物語は、あかりとユイが学校の秘密を解き明かし、新しい伝統を築く過程を追いながら、彼女たちの内面の成長と変革の旅を描きます。彼女たちの行動は、生徒たちにインスピレーションを与え、更には教師にも影響を及ぼし、伝統的な教育コミュニティに新たな風を吹き込みます。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

青空ベンチ ~万年ベンチのサッカー少年が本気で努力した結果こうなりました~

aozora
青春
少年サッカーでいつも試合に出れずずっとベンチからみんなを応援している小学6年生の青井空。 仲間と一緒にフィールドに立つ事を夢見て努力を続けるがなかなか上手くいかずバカにされる日々。 それでも努力は必ず報われると信じ全力で夢を追い続けた結果…。 ベンチで輝く君に

愛さずにはいられない

松澤 康廣
青春
 100%の確実性をもって私たちは未来の行動を選ぶことは出来ません。愛もまた同様です。どれだけ考え抜いたとしても、不確実は確実に存在し、それが私たちを苦しめます。それでも私たちは(私たちの一部)は愛こそが全てであるかのように愛さずにはいられません。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

俺と(従姉)姉ちゃんの良くある『今日から俺は?』の話だ。

かず斉入道
青春
この物語の時代背景は昭和……。 主人公の新作は春の入学式も終わり、高校生活にも少しなれた頃の、春の終わり。 二階の自身の部屋で、進学に向けて自習勉強中の頭の余り賢くない主人公山本新作の耳へと両親のヒソヒソ声が聞こえてくるのだが。 その内容と言うのが? 父親の経営する会社の業務拡大に伴って、他県へと会社を移転するから、皆で引っ越そうと言う話しで。 新作を他県の高校へと転校させようと言った話しなのだが。 その話しを聞いた当の本人である新作は顔色を変えてしまう。だって彼は、自身の担任のピチピチした女性教師の久美ちゃん先生に憧れと恋心、想いを寄せているからだ。 だって主人公は大学卒業後に、先生を自身の嫁にしたいと心から思い、願っているから進学に向けて猛勉強。 先生からも個人レッスンを受けているから。 彼は安易に転校をしたくはない。 でも新作が通う高校は県内一の不良学校、悪の巣窟だから。 新作の父親は、この機会に真面目な新作を転校させたいからと妻に相談する。 でも新作の母親は、父親の想いとは裏腹の意見を述べてくるのだ。 新作が通う高校には近所の幼馴染がいる。 その彼が悪の巣窟。県内ワーストワンの学園で、上級生達も恐れるような、広島市内でも凶悪、関わりたくない№1のサイコパスな人間なのだが。 そんな幼馴染と新作は大変に仲が良いのと。 素行が真面目な新作のことを担任の久美ちゃん先生が目をかけてくれて。大学進学をサポートしてくれている。 だから母親が新作の転向を反対し、彼を父親の兄の家に居候をさせてもらえるように嘆願をしてくれと告げる。 でも新作の父親の兄の家には一人娘の美奈子がいるから不味いと告げるのだが。美奈子は、幼い時に新作の嫁にくれると言っていたから。 二人の間に何かしらの問題が生じても、もう既に姪は家の嫁だから問題はないと。主人公が今迄知らなかった事を母親は父親へと告げ、押し切り。 新作は伯父の照明の家から学校へと通うことになるのだが。 でも主人公が幼い頃に憧れていた従姉の姉ちゃんは、実は伯父さんが夫婦が手に余るほどのヤンキーへと変貌しており、家でいつも大暴れの上に。室内でタ〇コ、シ〇ナーは吸うは、家に平然と彼氏を連れ込んで友人達と乱交パーティーするような素行の悪い少女……。 だから主人公の新作は従姉の姉ちゃん絡みの事件に色々と巻き込まれていく中で、自分もヤンキーなる事を決意する。 主人公が子供から少年……。そして大人へと移り変わっていく物語で御座います。

処理中です...