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27話 思い出の一枚と思い出の...

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夕暮れが近づき、ショッピングモールの照明が徐々に明るさを増していく。長い時間を過ごした三人の間に、なんとも言えない一体感が生まれていた。

「あら」東雲が気づいたように言った。「あかり、もううとうとし始めてるわね」

太郎も目を向けると、確かにあかりは頻繁に瞼を閉じては開いている。疲れが出てきたのだろう。

「そうですね」太郎も頷く。「そろそろ帰りましょうか」

東雲は優しく微笑んだ。「そうね。今日は本当にありがとう、鳴海くん。あかりも楽しかったみたいで」

その言葉に、太郎は照れくさそうに頭をかく。「いえ、僕こそ楽しかったです」

東雲があかりの肩を軽く叩いた。「あかり、もう帰るわよ。太郎お兄ちゃんにさよならは?」

あかりは眠そうな目をこすりながらも、急に元気を取り戻したように飛び上がった。

「えー!もう帰るの?」あかりが不満そうな声を上げる。「でも、その前に...写真!写真撮りたい!」

太郎と東雲は驚いた表情で顔を見合わせた。

「写真?」太郎が尋ねる。

「うん!太郎お兄ちゃんと一緒の写真!」

あかりの無邪気な要求に、太郎は戸惑いながらも柔らかな笑みを浮かべた。「まあ、それくらいなら...」

東雲はくすっと笑い、スマートフォンを取り出した。「じゃあ、私が撮りましょうか」

三人は壁際に立ち、東雲がカメラを構える。

「あら」東雲が首を傾げる。「鳴海くん、もう少し近づかないと入らないわよ」

「え?あ、はい...」

太郎が恐る恐る東雲に近づく。二人の間にあかりが立ち、嬉しそうに笑っている。

「もう少し...」

東雲の声に導かれるように、太郎はさらに一歩踏み出した。その瞬間、

「わーい!」

あかりが突然飛び跳ねて、太郎の腕を引っ張った。

「うわっ!」

バランスを崩した太郎は、思わず東雲の方に倒れこみ手を付く場所を探す。

「きゃっ!」

東雲の声が響く。太郎の手が、柔らかな感触に触れた。

(まさか...)

太郎は慌てて手を離す。東雲も頬を赤らめ、目を逸らしている。

「ご、ごめんなさい!」太郎が必死に謝る。

「い、いえ...」東雲も動揺を隠せない。

二人の間に、言いようのない空気が流れる。

「もー!」あかりの声が、その空気を破った。「早く写真撮ってよー!」

我に返った二人は、ぎこちない笑顔を浮かべる。

「そうね...」東雲が咳払いをして、再びカメラを構えた。

今度は慎重に、でも自然な距離感で三人は並ぶ。

「はい、チーズ!」

カシャッという音と共に、思い出の一枚が撮影された。

「やったー!」あかりが喜び跳ねる。

「よかったわね」東雲が優しく微笑む。「鳴海くん、写真送りましょうか?」

「え?あ、はい...」

太郎は戸惑いながらもスマートフォンを取り出す。

「じゃあ、LINEを交換しましょう」

東雲の言葉に、太郎の心臓が高鳴る。まさか、東雲先輩とLINE交換するなんて...。

QRコードを読み取り、友達追加が完了する。すぐに、写真が送られてきた。

「これで、いつでも連絡できるわね」

東雲がからかうように言う。その言葉に、太郎は思わずドキリとした。

「は、はい...」

太郎は送られてきた写真を見つめる。中央で無邪気に笑うあかり、そしてその両脇で微笑む自分と東雲。なんだか不
思議な組み合わせだけど、妙に自然に見える。

「じゃあ、そろそろ本当に帰りましょうか」東雲が優しく言う。

太郎は頷きながら、どこか名残惜しい気持ちを感じていた。「はい、お疲れ様でした」

あかりは眠そうな目をしながらも、太郎に向かって手を振る。「太郎お兄ちゃん、またね!」

「ああ、またね」太郎も笑顔で手を振り返す。

東雲は太郎に向かって微笑んだ。「今日は本当にありがとう。また学校で会いましょう」

「はい、ありがとうございました」

三人は別れの挨拶を交わし、それぞれの道へと歩み始めた。太郎は振り返り、東雲とあかりの後ろ姿を見送る。

帰り道、太郎の胸の中には温かな感情が広がっていた。そして手を見つめる、新しい何かが芽生え始めているような、不思議な高揚感も感じていた。

スマートフォンに保存された写真。それは、この日の偶然の出会いと、かけがえのない時間の証だった。太郎は、この思い出がこれからの学校生活にどんな影響を与えるのか、期待と不安が入り混じる複雑な気持ちで家路についた。
青春の1ページが、また新たに刻まれた瞬間だった。
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