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25話 偶然の再会

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週末の午後、太郎は一人でショッピングモールへと向かっていた。

モールの中を歩きながら、太郎はふと考えに耽る。

(花子と神崎は今頃何してるんだろう...)

二人の笑顔が頭をよぎる。そして、パーティーでの出来事が蘇ってくる。美咲がが「気になってる人」として連れていかれたこと、花子が告白されたこと。太郎の胸に、言葉にできない何かがモヤモヤと広がる。

そんな思いに浸っていると、突然小さな悲鳴が聞こえた。

「きゃっ!」

振り向くと、近くで小さな女の子が転んでいた。太郎は咄嗟に駆け寄る。

「大丈夫?」

太郎が優しく声をかけながら、女の子を抱き起こす。その瞬間、不思議な既視感に襲われた。

(あれ...こんなこと前にもあったような...)

太郎は首を傾げながらも、女の子に微笑みかける。

「大丈夫だった?怪我はない?」

女の子は目を丸くして太郎を見上げ、元気な声で答えた。

「うん!大丈夫だよ。ありがとう、お兄ちゃん」

その明るい笑顔に、太郎はほっとする。

「よかった。でも、一人なの?」

「ううん、お姉ちゃんと来たの」

「そっか。じゃあ、一緒にお姉ちゃん探そうか」

太郎が女の子の手を取ろうとした瞬間、背後から聞き覚えのある声が響いた。

「あれ?鳴海くん?」

その艶やかな声に、太郎は思わずビクリと身を震わせた。ゆっくりと振り向くと、そこには東雲翔子が立っていた。彼女はいつもの制服姿ではなく、シンプルなワンピース姿。それでも、その佇まいには変わらぬ凛とした美しさがあった。

「し、東雲先輩...!」

太郎が驚きのあまり声を上ずらせていると、女の子が嬉しそうに叫んだ。

「お姉ちゃん!」

女の子は東雲に向かって走り出し、彼女の腰に抱きついた。東雲は優しく微笑みながら、女の子の頭を撫でる。

「もう、心配したわよ。急に姿を消すんだもの」

「ごめんね、お姉ちゃん。でも、優しいお兄ちゃんが助けてくれたの!」

女の子は太郎を指差しながら、嬉しそうに報告する。東雲は意外そうな表情を浮かべ、太郎を見つめた。

「まあ、鳴海くんが妹を助けてくれたの?ありがとう」

「い、いえ...当たり前のことをしただけです」

太郎は照れくさそうに頭をかく。東雲は軽く首を傾げ、意味深な笑みを浮かべた。

「ほら、あかり。自己紹介しなさい」

「はじめまして、しののめあかりです」元気な声であかりが自己紹介をする。

太郎も自己紹介を返すと「太郎お兄ちゃん!」と言って腰に抱きついてくる。

「普段あまりなつかないのに私の知り合いってわかって安心したのかしら」

東雲はあかりを優しい目で見守りながら言った。

太郎は戸惑いを隠せない。パーティーでの東雲の言動が頭をよぎる。彼女の本当の気持ちは一体...。

「それで、鳴海くんは一人?」東雲が尋ねる。

「はい、ちょっと買い物に...」

「そう。私たちはこの前のチケットで映画を見てきたの」

東雲はあかりの手を握り、太郎に微笑みかける。

「せっかくだから、一緒に歩かない?」

その言葉に、太郎は思わず目を丸くした。東雲先輩と一緒に買い物...。そんな状況を想像もしていなかった。

「えっと...」

太郎が言葉を探していると、あかりが元気よく声を上げた。

「うん!太郎お兄ちゃんも一緒に行こう!」

その無邪気な笑顔に、太郎は断る理由を見つけられない。

「わかりました。ご一緒させていただきます」

東雲は満足げに頷いた。

「じゃあ、行きましょうか」

こうして太郎は、思いがけず東雲姉妹との買い物を楽しむことになった。モールの中をあかりを真ん中に太郎と東雲と手をつなぐ。

(まさか東雲先輩に妹がいたなんて...)

そして、太郎の胸の奥底では、新たな感情が静かに芽生え始めていた。この偶然の出会いが、彼の青春にどんな影響を与えるのか。それはまだ誰にもわからない。

夕暮れのショッピングモール。太郎の心に、期待と不安が入り混じる複雑な思いが広がっていくのだった。
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