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6話 告白

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太陽が西に傾き始めた頃、太郎は震える足で屋上への階段を上っていた。

(大丈夫だ...落ち着け...)

自分に言い聞かせながら、ドアノブに手をかける。

ギィ...

重たいドアが開くと、そこには既に美咲の姿があった。

「あ、鳴海くん」

美咲が振り返り、柔らかな微笑みを向ける。夕陽に照らされた横顔が、いつも以上に眩しく感じられた。

「か、神崎...」

太郎は緊張で固まったまま、美咲に近づく。

「結城さんから呼ばれたんだけど...」美咲が首を傾げる。「鳴海くんも?」

「あ、ああ...」

太郎は曖昧に頷く。花子の姿はまだ見当たらない。

(あいつ、まさか...)

不安がよぎる。しかし、もう後には引けない。

「あの...神崎」

「うん?」

美咲が真っ直ぐに太郎を見つめる。その瞳に吸い込まれそうになりながら、太郎は覚悟を決める。

「俺は...俺は神崎のことが...」

心臓が早鐘を打つ。額から汗が噴き出す。

「好きだ!」

叫ぶように告白する太郎。美咲は目を丸くして驚いた表情を浮かべる。

「え...」

沈黙が流れる。太郎は固唾を飲んで美咲の反応を待つ。

「ごめんなさい...」

美咲の言葉に、太郎の心臓が止まりそうになる。

「私...鳴海くんのこと、友達としては好きだけど...」美咲が言葉を探すように少し間を置く。「恋愛とか、よくわからなくて...」

「そっか...」

太郎は力なく呟く。予想はしていたものの、現実は残酷だった。

「ごめんね...」美咲が申し訳なさそうに頭を下げる。「私...まだ付き合うとか考えたことがないの」

「え?」

太郎は思わず顔を上げる。

「うん...」美咲が少し困ったように続ける。「みんなが恋バナとかしてるの聞くと、私だけ浮いてる気がして...」

「そうだったんだ...」

驚きのあまり、太郎は声を詰まらせる。クラスの人気者で、いつも周りに人が集まる美咲が、こんな風に感じていたなんて...。

「私、ごめんなさい」美咲が真剣な表情で太郎を見つめる。「鳴海くんの気持ち、すごく嬉しいんだけど...今の私には、どう応えていいかわからなくて...」

太郎は複雑な思いで黙り込む。悔しさ、寂しさ、そして意外な美咲の一面を知った驚きが胸の中でぐるぐると渦巻いていた。

「神崎...」

「鳴海くん...」

美咲が心配そうに太郎を見つめる。

「大丈夫だよ」

太郎は無理に笑顔を作る。

「ありがとう、神崎。正直に言ってくれて」

美咲は申し訳なさそうに頷く。

「私、鳴海くんのこと、大切な友達だと思ってる」美咲が真剣な表情で言う。「これからも...そのままでいてほしいな」

太郎は少し寂しそうに、でも優しく微笑む。

「もちろんだよ。俺たち、友達だもんな」

美咲はほっとしたように笑顔を見せる。

「じゃあ...私、行くね」

美咲が立ち去ろうとする。太郎は黙ってその背中を見送る。

ガチャ

ドアが閉まる音と共に、太郎の膝から力が抜けた。

「はぁ...」

深いため息が漏れる。

「太郎...」

突然、後ろから声がする。振り返ると、そこには心配そうな表情の花子が立っていた。

「花子...」

「ごめんね...」花子が申し訳なさそうに言う。「全部聞いちゃった...」

太郎は何も言えず、ただ俯く。

「大丈夫?」

花子が太郎の隣に座り、そっと肩に手を置く。

「...さあ」

太郎は力なく答える。

「なぁ花子」

「うん?」

「俺って...ダメなやつだよな」

「そんなことないよ!」花子が強く否定する。「太郎は優しくて、面白くて...素敵な人だよ」

太郎は小さく笑う。

「ありがとう...でも、結局振られちゃったしな」

「それは...」花子が言葉を探す。「きっと美咲がまだ恋愛に慣れてないだけだよ。太郎が悪いわけじゃない」

太郎は苦笑する。

「そうかもな...でも、やっぱり傷つくよ」

「うん...」花子が同情的に頷く。「でも、太郎は勇気を出して告白したんだよ。それってすごいことだと思う」

二人は沈黙に包まれる。夕陽が徐々に沈んでいき、辺りが暗くなっていく。

「ねぇ、太郎」

花子が静かな声で話しかける。

「なに?」

「私が...太郎を元気づけてあげる!」

「え?」

太郎は驚いて花子を見る。花子の目が決意に満ちていた。

「おっぱい揉む?」
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