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第23話 DM

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ある日、美優紀のもとに虹ライブ9期生の天音カレンからDMが届いた。カレンは、歌ってみた系の動画を多く出しており、箱外コラボも積極的に行うライバーで、登録者数は12万人を超えている。

「こんにちは、星野さん。はじめまして、天音カレンといいます。突然のDM失礼します。もしよければ一緒に歌ってみたを出しませんか?」と、カレンからのメッセージが表示されていた。

美優紀は目を見開き、驚きと興奮を隠せなかった。

「天音カレンさんからDMが…!?え、本当に…?」

心臓がドキドキと高鳴る。星野ソラとして活動してきた中で、他のライバーからのDMは初めてだった。

「ぜひ、やりたいです!よろしくお願いします!」と美優紀はすぐに返事を送り、詳細を詰めるために連絡を取り合い始めた。

「本当に、嘘じゃないよね。公式マークもついてるし…」


DMをもらった日、美優紀はその興奮と驚きから頭がいっぱいだった。

その興奮が収まらないまま次の授業を迎える。次の授業は化学で、教室を移動するため席を立ったが、ノートと筆記用具だけを持ち教科書を忘れてしまった。

教室を移動してから、教科書がないことに気づいた。

「あれ、教科書がない…」

友達の真由が心配そうに声をかけた。「どうしたの、美優紀?教科書忘れたの?」

「うん…取りに戻らなきゃ。」

美優紀は急いで元の教室に戻り、教科書を取ってきた。戻る途中もカレンからのDMが頭から離れず、ぼんやりしてしまっていた。


その次の授業は国語だったが、美優紀の頭の中はまだカレンとのコラボのことでいっぱいだった。授業中、先生が質問を投げかけた時、美優紀はぼんやりと窓の外を見つめていた。

「大森さん、これについてどう思いますか?」

美優紀は一瞬現実に引き戻されたが、何も答えられずに口をパクパクさせるだけだった。クラスメイトたちが見つめる中、先生は優しくもう一度質問を繰り返した。

「もう一度聞きますね。物語のテーマについて、どう考えますか?」

美優紀は焦りながらも、何とか答えようとしたが、頭が混乱して上手く答えられなかった。

「えっと…その…」

真由がこっそり助け舟を出してくれたが、美優紀はそれすらも聞き取れず、先生が次の生徒に質問を変えた。

その日の授業が終わる頃には、美優紀はようやく少し落ち着きを取り戻していた。だが、カレンからのDMが頭を離れないことには変わりなかった。



数日後、美優紀とカレンはボイスチャットで打ち合わせをすることになった。

「星野さん、初めまして。天音カレンです。お時間を取っていただき、ありがとうございます!」

「こちらこそ、お声かけいただいてありがとうございます!私で大丈夫ですか?」

「もちろんです!星野さんの歌、前から素敵だと思っていて、ぜひ一緒にやりたいと思っていたんです。」

カレンの温かい言葉に、美優紀は少し照れながらも嬉しさを感じた。

「今回は『わたしの最高に可愛いところ』という曲を歌いたいと思っています。これはアイドルグループが歌っている曲で、可愛らしい感じが星野さんにぴったりだと思うんですがご存じですか?」

「いい曲ですよね!私もこの曲、大好きです。」

「よかった。知らない曲だったら一から覚えてもらわないとだったので知っててくれて安心しました。今回の企画は絡みのない個人勢のライバーさんと一緒に歌おうという企画でして、後数名、個人勢のライバーさんに声をかけさせていただいてます。」

「そうなんですね!全然大丈夫です。コラボ自体初めてなのでご迷惑をおかけするかもしれませんが、一生懸命がんばります。よろしくお願いします。」

「あまり緊張しなくても大丈夫ですよ。みんなでそれぞれのパートを歌う形にしようと思っています。最終的な編集は、私が依頼している業者さんが仕上げてくれるので、星野さんは歌うだけで大丈夫ですよ。」

「わかりました!精一杯歌わせていただきます。」

美優紀は後日、カレンから送られてきた音源と歌詞をもとに、自分のパートの練習を始めた。練習中、彼女はカレンや他のライバーたちとのコラボに対する期待と不安を感じながらも、持ち前の集中力で歌い込んでいった。

「コラボで有名なライバーさんと一緒に歌えるなんて、本当に嬉しい…。絶対に良い作品にするぞ!」

美優紀は何度も何度も練習を繰り返し、完璧なパフォーマンスを目指した。学校への通学や自宅でも曲を聴いて自分の物にしようと努力をし、期限に余裕をもって収録を終えた。

「これでいいかな…。頑張ったから、大丈夫だよね。」

録音を終えた美優紀は、音源をカレンに送信し、仕上がりを楽しみに待った。



そして、ついに完成しカレンから動画が送られてきた。

「星野さん、ありがとうございました。みなさんのご協力ですばらしい動画が出来上がりました。また機会があれば、歌ってみた以外でも何か一緒にやりましょう。」

動画を見てみると流石はプロといった仕上がりで美優紀は感動した。歌のMIXからイラスト、細部にまでこだわり作成されており、素人ではマネのできないレベルのクオリティーだった。

「こちらこそありがとうございました。コラボに参加させていただけてすごく嬉しかったです。そして素敵な企画と動画ありがとうございました!またぜひよろしくお願いします。」

カレンとの連絡を終えた美優紀は何度も何度も動画を見直し表情を緩める。

「早くファンのみんなにこの動画みてもらいたいな。」


カレンとの初めてのコラボを果たしたことで、美優紀の心には新たな自信と意欲が芽生えた。彼女は、これからも自分のペースで星野ソラとしての活動を続け、多くのファンに喜んでもらえるよう努力を惜しまないと誓った
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