上 下
5 / 46

第5話 星野ソラを紹介

しおりを挟む
冴木陽斗は朝から自分の切り抜きチャンネルと星野ソラの登録者数をチェックするのが日課になっていた。

「よし!切り抜きチャンネルも少しずつだけど伸びてるし、ソラちゃんの登録者数がもうすぐ1000人だ!少しでも貢献できてたら嬉しいな。記念配信とかしてくれるかな・・・。」

学校へ向かう陽斗の足取りは軽い。

教室に入るといつも通りの賑やかな朝の風景が広がっていた。陽斗は自分の席に座り、今日の授業の準備を始めた。

午前中の授業が終わり、昼休みになるといつものように亮太が陽斗の席にやってきた。

「陽斗、今日もまた動画作るのか?」

「うん、もちろん。次はどのシーンを切り抜こうか考えてるんだ」

「ソラちゃんの配信はどれも面白いもんなー」

「そういえば、ソラちゃんの登録者数がもうすぐ1000人行きそうなんだけど記念配信とかあるかな?」

「記念配信かー。やってくれたら嬉しいけど特別なことって・・・耐久配信とか?」

「料理配信とかも面白そうだけど身バレとかもあるし難しいよな。」

その会話を、少し離れた場所で大森美優紀が聞き耳を立てていた。美優紀は心の中で動揺しながらも、冷静を装って川崎真由と藤田夏美と話を続けていた。しかし、耳は陽斗と亮太の会話に集中していた。

その時、真由が陽斗たちの会話に気づき、興味を持った。

「ねえ、何の話してるの?」

陽斗と亮太は一瞬驚いたが、すぐに笑顔で答えた。

「Vtuberの星野ソラの話をしてるんだ。最近、彼女の切り抜き動画を作ってアップしてるんだよ」

「Vtuber?星野ソラって誰?」夏美も興味を示す。

美優紀は内心焦りながらも、顔には出さずに聞き耳を立てていた。

「ソラちゃんはね、俺たちの推してる個人勢のVtuberで、歌が上手くて、英語もペラペラで、歌配信や雑談配信とかが面白いんだ。」

「へえ、面白そうね。ちょっと見てみようかな」と真由が言い

「じゃあ、休み時間に少しだけ見せるよ」と陽斗はスマートフォンを取り出し、自分が作った星野ソラの切り抜き配信を再生した。

5人は陽斗のスマートフォンを囲んで動画を見始めた。陽斗と亮太はスクールカースト上位の女子たちに話しかけられ、少し緊張していた。

「これ、ソラちゃんの最近の歌配信なんだ。英語の曲も歌ってて、すごく上手いんだよ」

美優紀は内心で自分の配信が友達にどう受け取られるのか不安だった。しかし、その反応はあまり芳しくなかった。

「うーん、なんかちょっと違うかも」と真由が言い

「そうね、確かにかわいいけど…」と夏美も続ける。

美優紀はその言葉を聞いて内心悔しさを感じた。自分が一生懸命に取り組んでいる活動が友達に認められないことに、心の中で複雑な感情が渦巻いた。

陽斗は女子たちの微妙な反応に動揺しながらも、続けて説明した。

「でも、ソラちゃんは本当に魅力的なんだ。配信中のトークも面白いし、リスナーとのやり取りも楽しいんだよ。いろんな動画を見てもらえれば、もっと彼女の良さが伝わると思うんだけど…」

「でも、陽斗がこんなに熱心に応援してるのはすごいと思うよ」と亮太がフォローした。

「ありがとう、亮太。とにかく、もっと多くの人にソラちゃんの魅力を伝えたいんだ」

真由と夏美は少し興味を持ちながらも、完全に引き込まれることはなかった。

「まあ、今度また時間があったら見てみるよ」と真由が言い、夏美も同意した。

「そうね、また今度ゆっくり見てみるわ」

美優紀は友達にバレなかったことに安堵しながらも、反応が良ければカミングアウトする機会もあったのではないかと少し残念に思っていた。

そして陽斗は、せっかく少し興味をもってくれた女子達に星野ソラの良さを伝えきれなかったことを残念に思いながら、オタク全開で話してしまったことにすこし後悔していた。

「ちょっと早口になって必死だったけど、それだけ星野ソラが好きってことだろ。自信持てって!」

陽斗は亮太に慰められながらも切り替えて次の動画のアイデアを亮太と相談した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

漫才部っ!!

育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。 正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。 部員数は二名。 部長 超絶美少女系ぼっち、南郷楓 副部長 超絶美少年系ぼっち、北城多々良 これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

不撓導舟の独善

縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。 現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。 その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。 放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。 学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。 『なろう』にも掲載。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...