切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる

第2話 切り抜き師の一歩

次の日の朝、冴木陽斗はいつもより少し早めに家を出た。昨晩アップロードした切り抜き動画が気になって、寝不足気味だったが、その分期待と興奮が彼を支えていた。家を出ると、すぐに友達の中村亮太に出会った。

「おはよう、陽斗！眠たそうだな、大丈夫か？」

「おはよう、亮太。昨日、夜遅くまで動画編集してたからさ」

「動画編集って陽斗なにか始めるのか？」

「ソラちゃんの魅力を伝えるために切り抜き動画を作ってみたんだ。」

亮太の目が輝いた。星野ソラを応援している友達の一人であり、彼自身もVtuberが大好きなオタク仲間だ。

「まだ初めてだから、正直出来はどうかなって思うけど、一応アップしたよ。ソラちゃんのカラオケ配信の面白い部分をまとめてみた」

「それは楽しみだな！今見ていいか？」

「もちろん！」

亮太はスマートフォンを取り出し、YouTubeアプリを開いた。陽斗の切り抜き動画が再生されると、二人は歩きながら画面を覗き込んだ。

「これ、いいじゃん！編集もなかなか上手くできてるし、ソラちゃんの魅力が伝わるね」

「ありがとう、亮太。正直、不安だったけど、そう言ってもらえると安心するよ」

「これからどんどん切り抜き動画を作って、ソラちゃんのファンを増やしていこうぜ！」

陽斗は亮太の励ましに勇気づけられ、学校に向かう足取りも軽くなった。教室に入ると、いつも通りの賑やかな朝の風景が広がっていた。陽斗は自分の席に座り、周囲の様子を眺めた。

ふと目を向けると、大森美優紀が友達と一緒に教室の隅で話していた。美優紀は黒髪ストレートの美少女で、クラスの中心的存在だった。彼女の周りにはいつも友達の川崎真由と藤田夏美がいた。

「美優紀さん、相変わらず人気だな…」

陽斗は心の中でそう呟きながらも、自分が彼女に声をかける勇気はなかった。彼はただ、自分の机に向かって今日の授業の準備を始めた。

授業が始まり、陽斗は一生懸命にノートを取っていた。途中で亮太から小さなメモが渡された。そこには「休み時間に話したいことがある」と書かれていた。陽斗は頷き、授業に集中し続けた。

休み時間になると、亮太がすぐに陽斗の席にやってきた。

「陽斗、実はさっき見たんだけど、君の切り抜き動画がちょっとずつ再生数を伸ばしてるぞ！」

「本当に？どれくらい？」

「今のところ、50回くらい再生されてる！」

陽斗は驚きと喜びが入り混じった表情を見せた。彼はすぐにスマートフォンを取り出し、自分の動画の状況を確認した。確かに再生数は増えていた。

「やった…これで少しずつだけど、ソラちゃんの魅力を広められる」

「そうだな。これからも頑張ろうぜ、切り抜き師！」

亮太の励ましに、陽斗はさらにやる気を出した。これからもソラのために動画を作り続ける決意を新たにし、彼は次の授業に向けて心を落ち着かせた。

その日の放課後、陽斗と亮太は再びソラの配信を見ながら、次の切り抜き動画のアイデアを練った。陽斗はこれからもソラの魅力を伝えるために、日々努力を重ねるつもりだ。