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隼人は昨日初めて教室で一生を見た時と今、一生の隼人を見る目にゾクリと体を震わせた。ナイフのような視線とはああいうのを言うのだろう。まるで隼人を切り裂かんばかりの鋭さだった。
昨日話した感じだと、旭葵の方はドのつくのんけだ。って、ことは可哀想に番犬の一方通行ってことか。ま、でも俺は相手がのんけでもなんでも落とす自信はあるけどな。
隼人は旭葵に掴まれていた手首をペロリと舐めた。
放課後、靴箱の前で旭葵は既読になったまま返信がないメッセージを見て小さく唸る。
「ごめん隼人、ラーメンはやっぱ今日じゃなくて今度にしてくんない? 今日は一生がうちの猫洗うの手伝ってくれる約束してたからさ」
「だから、それも俺が手伝ってやるって。せっかく部活が終わるのを待ってたのにさ」
「それはホントごめん。でも一生の方が慣れてるし、ノミもすごいし」
旭葵は再びスマホに視線を落とす。旭葵は一生がなんだか怒っているように思えた。
「アサ」
振り返ると一生が立っていた。制服に着替えてはいるが一生の髪はまだ濡れていて、毛先から水が滴り落ちている。
「一生、めっちゃまだ濡れてる」
一生は自分の髪に伸びてくる旭葵の手を取ると、そのまま歩き出した。
「早く帰って、よもぎを洗うぞ」
一生がジロリと隼人を睨む。隼人も負けじと一生を睨み返した。
「あ、だから隼人、また今度な、ごめんな」
自分の頭上で散っている火花に気づきもせず、旭葵は隼人に手を振った。
旭葵は自分の横をさっきから黙って歩く一生にチラリと目をやる。
「ずいぶんよもぎ洗ってないからさ、ノミめっちゃすごいんだよ」
「湊から聞いたけどさ、あいつ、自己紹介で男もイケるとか言ったんだろ」
一生の声は不機嫌を通り越して怒っていた。
「あ、ああ、でもそれってあれだろ、ジョークだろ。早くクラスのみんなに馴染むためにっつうか」
「あいつとつるむのは止めろ」
いきなりの一生の命令口調に、さすがに旭葵は少しだけムッとした。
「隼人はいい奴だよ。隼人トライアスロンやってるんだって。なんか去年の高校の大会で優勝したらしい。今度の大会、応援に来てほしいって言われた」
旭葵の前を歩いていた一生が急に立ち止まったので、旭葵は一生の背中に鼻をぶつける。
「それで行くのか?」
威圧的な一生の態度に出てきた言葉は話とは全く関係のないことだった。
「なんだよ、自分だって女子からもらったクッキー後生大事に持って帰ったくせに」
「持って帰ってない。旭葵がトイレに行ってる間に大輝が欲しがったから袋ごとやった。なんだ、あのクッキーそんなに食べたかったのかよ」
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「あ、だから隼人、また今度な、ごめんな」
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「ずいぶんよもぎ洗ってないからさ、ノミめっちゃすごいんだよ」
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一生の声は不機嫌を通り越して怒っていた。
「あ、ああ、でもそれってあれだろ、ジョークだろ。早くクラスのみんなに馴染むためにっつうか」
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