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発(掘)進(行)!超琥珀神艦!
オーバーラップ
しおりを挟む太平洋。
笠原賀諸島沖合いの海域に展開している重深艦隊が睨む、敵だらけの水平線上。
つい先程まで空中に浮かんでいた無数のバドキャプタンだけが姿を消し、重深艦隊は困惑の最中にあった。
そしてアルオスゴロノ帝国の海上戦闘用マシン群を遮るように、水蒸気の壁が膨れ上がる。
海中から横並びに浮上して来た多数の人型機動兵器達は胸部アーマーを開き、今まさにエネルギー奔流の一斉射を敢行しようとしていた。
「撃たせるな!」
重深艦隊の旗艦、にじがねの艦長である胡桃下の号令を待つまでもなく、戦艦や戦闘ヘリの斉射が水蒸気の壁に殺到する。だが砲撃のほとんどが敵前衛部隊の手前に着弾し、連携を乱す事すら敵わない。その間にも水蒸気は噴き上げる量を増し、その冷却度合いはやがて解き放たれるであろう熱の総量を一見しただけで予想させるものであった。
胡桃下が考え込む前に、オペレーターが状況を報告する。
「砲弾の予定攻撃軌道に異常!AIは、海中に磁力誘導機雷などの存在を提唱しています!」
「···防護衝角力壁の使用を承認します。艦長···にじがねを前へ」
にじがねのブリッジ、奥座に控える環巣 晶叉 副長官代理臨時特務代行官が冷静に呟いた。
「代々殿、先程ノバ研殿に貰ったばかりの虎の子をもう使う事になるとは心外ですが、やもう得ませんな?···」
「胡桃下さん、この戦域でゴライゴ殿方々に顔向けするまで、我々の意気を見せる時です!出し惜しみは無しで行きましょう!」
晶叉の言葉にニヤリと微笑んだ胡桃下は片手に持ったマイクをカチャと口元に寄せ、全軍に指示を出す。
「にじがね、前へ出る!道を開けて後ろに廻れ!」
「···緊急!一時方向より高速移動物体!」
「!!」
飛来した琥珀色の流星は鋭い曲線を描いて海上に墜ちると、更に加速してエガスデライガの列に横から突っ込んだ。
キュバヴァヴァヴァヴァヴァァヴァヴァヴァヴァヴァーン!!
流星の先端から突き出た拳に貫かれたエガスデライガ達は即座に爆裂して弾け、次々と海上に超巨大な水柱が連続して聳え立つ。
水柱の向こうでは明らかに敵の軍団が動揺しているのが見える。
「!、今のは!?」
問題を解決して飛び去った琥珀色の流星と例えるしかない高速移動物体。
にじがねのブリッジでも、安堵よりも驚きの方が蔓延している。
あれが、ゼレクトロン···!
その中で唯一、晶叉だけが琥珀色の流星の正体を見抜いていた。
「藍罠!気付いたか?環巣さんだ!」
「はい!にじがねに乗ってましたね?」
ゼレクトロンの操玉内部。
ナキルの琥珀の中で小人の美少年と化した椎山は、ゼレクトロンの操縦を共にする相棒、藍罠に声を掛けた。
「アンバーニオンに乗ったんだろ?じゃああの人も今や立派な宝甲持ちって事?」
「だから居場所が分かったんスね?ダッタラナオサラ!情報通りにはさせないッ!!」
更に加速して何処かへ向かうゼレクトロン。するとその向かう先で、もう一体の琥珀の巨神が宙に浮かび、天を見上げている。
「···来るよ?エシュタガ!」
「···ああ」
「あっ!居たぞ藍罠!ガルンシュタエンだ!」
「!、マジか!もう来るのか?」
宙に浮かぶガルンシュタエン ティアザと、そこに合流しようとするゼレクトロン。
その時、ガルンシュタエン ティアザの直上で、ブン···!、と空間が震えた。
日本国防衛隊複合総司令部でも、その異変は観測されていた。
「!、監視衛星より報告!懸案ポイントに目標大隊再現出!数、4、5···いや!これは!」
懸案ポイントと呼ばれ、ガルンシュタエン ティアザがマークしていた座標の真上。
一度姿を消していた全てのバドキャプタンは、縦に積み重なるように再出現した。
子供が遊ぶ積み木のように乱雑に重なった機体群は、やがて均整を求めて正中に向かってスライドを始める。
「目標大隊の総数が懸案ポイント!太平洋超震災震源地直上に直列状態で結集!!最上段の機体に発光現象!!」
懸案ポイントの超高空。
積み重なったバドキャプタンズの最上段に位置する機体は、全体が紫色に目映く輝いていた。
そしてその機体が消滅すると同時に、残された輝きだけがバドキャプタンで造られた柱の内部を伝い落ち加速して行く。
「目標大隊が総力で高エネルギーを放射と推定!!このままでは、懸案ポイントに直撃します!!」
「くっ!連結式の落下エネルギー砲だと!!間に合わない!!!」
洗毬は驚愕のあまり、腰を椅子から浮かせてしまう。
頭上に浮かぶバドキャプタンの最底辺から見上げる空洞。
その空洞の向こうから落ちてくる紫色の輝きが、神霧剣を構えるガルンシュタエン ティアザの全身に反射する。
〔っっっとおおお!間にあったァ!!〕
そのガルンシュタエン ティアザの横に飛来して並ぶゼレクトロン。その腕には既に巨大な琥珀宝甲の腕。超重琥珀拳が召喚されている。
〔···いくぞ〕
〔っおお!〕
呼吸を合わせるエシュタガと藍罠。
そして彼らの視界いっぱいに閃光が広がったタイミングで、二機はそれぞれの武器を翳した。
〔〔っっっおおおおっ!!未熟者ッッ!!ゼロォッッッッ!!〕〕
ズパァアアアアアアアアアアアァァンン!!!
ガルンシュタエン ティアザとゼレクトロンの待ち技に迎撃されたバドキャプタンのエネルギー弾は砕け散り、周囲の海上に拡散されて着弾した。
分割されたエネルギー弾はそれでも凄まじい威力を誇り、水蒸気爆発で舞い上がった海水のシャワーが二機を湿らせる。そんな二機は己の武器の現状を確認し、愕然としていた。
ガルンシュタエン ティアザの神霧剣は石膏屑のように朽ち、ゼレクトロンの超重琥珀拳に至っては五本全ての琥珀柱指が欠損している。
「っうおおお!ヤッベぇ!」
「さすがは、大地を穿とうとする意思のものか?···すまないガルン、折角凝集してくれた神霧剣が···」
「パンチくん!ワリぃ!これで今日はワンストック···いや、これは···」
達観が滲む藍罠の声。彼らの頭上にはもう、ニ撃目の輝きが迫っていた。
〔いいや!まだだぁ!〕
〔面白い!〕
破損した武具を構え直すゼレクトロンとガルンシュタエン ティアザ。
そしてその一筋の光は彼らの勇気を称えるように、一瞬にして絶望の輝きを射止めて横這いに押し退けた。
バシュィンッッッッ!!!
ヴォグァアアアアァァァン!!
「!」「なんだ?!」
バドキャプタンズ最下部の数機がエネルギー弾と共に爆裂し、横方向へと吹き飛んだ。
藍罠達とエシュタガは、マッハを超えてエネルギー弾そのものを発射前に狙い撃った者の正体を見定めようと、その推測の弾道を探った。
「命中!目標は戸惑ってる。次弾チャージだ!須舞 宇留!」
「了解!疑似黒宝甲のお陰でちゃんと当たったよ!」
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