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20 その令嬢、彼を想う
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「わ、私がアーサーと!?」
突然の提案に驚き、思わず立ち上がっってしまった。
アーサーと、私が、婚約だなんて。
「ははは、そんなに慌てるなミリアよ」
伯父が少々苦笑いを浮かべながら私を諫める。まあ掛けなさいと促され、ふう、と息を吐く。
落ち着いてミリア。落ち着きましょう。とりあえず伯父様の話を聞くのよ。
「ごめんなさい。なんだか、その、驚いちゃって」
「これはどうやら、詳しい話をせずとも決まりということで良さそうではあるな?」
「ちょ、ちょっと伯父様っ!」
「はははははっ! いや、からかうのも良くないな! 実は、この提案は大公からのものでな。ここ数年、隣国との小競り合いも増えてきた。我々のような決して大きくない領地間でも、より強い関係を作っていくべきではないか、と仰られたのだ」
「ええ」
私の住むサザントリアを中心としたこの領地と、その西に位置する伯父のランバート領は他国と面した地域がほとんどない。だから、他国との争いと言われても、正直言ってピンと来ない部分があるのだけど…。
「今後、国王がどういったこと考えているのか、それは我々領主でもわからん。が、やはりガゼルフライデ次期大公ロバート殿下が戦地に出ていることからも、大きな領地の者こそ戦地での結果が求められるのかもしれん。生憎、ワシも争いに関してはあまり経験がないし、こうして片田舎の領主として務めを果たすことこそ我が人生だという自負もある。が、お前たちの世代はそうも言ってはおられんのかもしれぬ」
「それは、確かにそうかもしれません」
「レギウス家としても手柄を重視しいずれはアーサーが戦地に向かうこともあろう。そういった中で、ワシは後継ぎもおらんしな。ミリア、お前の婚礼如何によって、ランバートの一族の扱いが大きく変わる可能性もある。そこで、今まで良好な関係であったレギウス家との婚姻を以て、より結びつきを強めるとともに、お互いの家がは繁栄できる道を築くための礎になるのではないか、とワシも思ってな。もちろん話はこれからではあるが、どうだミリア、受け入れてくれるか」
「…。お話はとてもよくわかるし、胸が高鳴っているのも本当よ、伯父様。でも、その…」
「…ふむ、エレナのことか」
「はい…」
「トーマスからも、二人の関係が良好だとは多少聞いてはいるがな。こういう言い方は悪いとは思うが、エレナは正式にはランバートの者ではなくなった。もちろん、今すぐにでも帰って来るなら思い切り抱きしめてやりたいとは思っておるよ。しかしその、まさに大公家との今後の関係という意味ではだな」
「…ええ、お姉様より、今の私の方が適任、よね」
「ふむ、まあ、運命の悪戯とでも言えば良いのかな。ワシとしては婚約破棄の件でもっと責め立てられるものかと思っていたが、こうして次の展開を提案されては、慌ただしくなる一方だ」
「ふふふ、ごめんなさい伯父様。姉妹揃ってお世話をかけちゃって」
「いやあ、良い。良いのだよミリア。トーマスの兄として、エステリアの古くからの友人として、二人の宝はワシにとってもかわいいに決まっている」
「ありがとう。…その、私は、前向きに考えてみたいと思うわ」
「おお、そうか! いやあ、ありがとうミリア。よし、そうと決まればレギウス家に正式に提案をさせてもらおう。エレナが戻った時には、ワシからしっかりと話をする。ミリア、其方は何も心配することはないぞ」
「はい…」
その後、私は伯父とともに父の寝室を訪ね、改めてエレナのこと、そして伯父の話を伝えた。
父は目を閉じ、私たちの言葉に耳を傾けた後、ゆっくりと答えてくれた。
「話はよくわかった。兄上、ミリア、エレナ、私がしっかりしなくてならない時に、迷惑をかけてすまない」
「そんなことを言うなトーマス。今後のことは逐一報告するからな、ワシに任せておけ」
伯父は気丈に振る舞っていたけれど、だんだんと弱っていく父を見て、やっぱり寂しそうだった。
だから…。
お姉様、ごめんなさい。私も、家族の役に立ちたい。
アーサーと、エレナ。私も含めて3人で過ごす時間が多かったけれど、それでも二人の気持ちは二人で補い合っていたように、私には見えていた。
でも、今なら、どうなのだろう?
私のこの想いが、アーサーの気持ちを補うことは…。
突然の提案に驚き、思わず立ち上がっってしまった。
アーサーと、私が、婚約だなんて。
「ははは、そんなに慌てるなミリアよ」
伯父が少々苦笑いを浮かべながら私を諫める。まあ掛けなさいと促され、ふう、と息を吐く。
落ち着いてミリア。落ち着きましょう。とりあえず伯父様の話を聞くのよ。
「ごめんなさい。なんだか、その、驚いちゃって」
「これはどうやら、詳しい話をせずとも決まりということで良さそうではあるな?」
「ちょ、ちょっと伯父様っ!」
「はははははっ! いや、からかうのも良くないな! 実は、この提案は大公からのものでな。ここ数年、隣国との小競り合いも増えてきた。我々のような決して大きくない領地間でも、より強い関係を作っていくべきではないか、と仰られたのだ」
「ええ」
私の住むサザントリアを中心としたこの領地と、その西に位置する伯父のランバート領は他国と面した地域がほとんどない。だから、他国との争いと言われても、正直言ってピンと来ない部分があるのだけど…。
「今後、国王がどういったこと考えているのか、それは我々領主でもわからん。が、やはりガゼルフライデ次期大公ロバート殿下が戦地に出ていることからも、大きな領地の者こそ戦地での結果が求められるのかもしれん。生憎、ワシも争いに関してはあまり経験がないし、こうして片田舎の領主として務めを果たすことこそ我が人生だという自負もある。が、お前たちの世代はそうも言ってはおられんのかもしれぬ」
「それは、確かにそうかもしれません」
「レギウス家としても手柄を重視しいずれはアーサーが戦地に向かうこともあろう。そういった中で、ワシは後継ぎもおらんしな。ミリア、お前の婚礼如何によって、ランバートの一族の扱いが大きく変わる可能性もある。そこで、今まで良好な関係であったレギウス家との婚姻を以て、より結びつきを強めるとともに、お互いの家がは繁栄できる道を築くための礎になるのではないか、とワシも思ってな。もちろん話はこれからではあるが、どうだミリア、受け入れてくれるか」
「…。お話はとてもよくわかるし、胸が高鳴っているのも本当よ、伯父様。でも、その…」
「…ふむ、エレナのことか」
「はい…」
「トーマスからも、二人の関係が良好だとは多少聞いてはいるがな。こういう言い方は悪いとは思うが、エレナは正式にはランバートの者ではなくなった。もちろん、今すぐにでも帰って来るなら思い切り抱きしめてやりたいとは思っておるよ。しかしその、まさに大公家との今後の関係という意味ではだな」
「…ええ、お姉様より、今の私の方が適任、よね」
「ふむ、まあ、運命の悪戯とでも言えば良いのかな。ワシとしては婚約破棄の件でもっと責め立てられるものかと思っていたが、こうして次の展開を提案されては、慌ただしくなる一方だ」
「ふふふ、ごめんなさい伯父様。姉妹揃ってお世話をかけちゃって」
「いやあ、良い。良いのだよミリア。トーマスの兄として、エステリアの古くからの友人として、二人の宝はワシにとってもかわいいに決まっている」
「ありがとう。…その、私は、前向きに考えてみたいと思うわ」
「おお、そうか! いやあ、ありがとうミリア。よし、そうと決まればレギウス家に正式に提案をさせてもらおう。エレナが戻った時には、ワシからしっかりと話をする。ミリア、其方は何も心配することはないぞ」
「はい…」
その後、私は伯父とともに父の寝室を訪ね、改めてエレナのこと、そして伯父の話を伝えた。
父は目を閉じ、私たちの言葉に耳を傾けた後、ゆっくりと答えてくれた。
「話はよくわかった。兄上、ミリア、エレナ、私がしっかりしなくてならない時に、迷惑をかけてすまない」
「そんなことを言うなトーマス。今後のことは逐一報告するからな、ワシに任せておけ」
伯父は気丈に振る舞っていたけれど、だんだんと弱っていく父を見て、やっぱり寂しそうだった。
だから…。
お姉様、ごめんなさい。私も、家族の役に立ちたい。
アーサーと、エレナ。私も含めて3人で過ごす時間が多かったけれど、それでも二人の気持ちは二人で補い合っていたように、私には見えていた。
でも、今なら、どうなのだろう?
私のこの想いが、アーサーの気持ちを補うことは…。
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