261 / 347
Episode4
喜ぶ勇者
しおりを挟む
しかしその場合、懸念も生まれてしまう。
「ここから先は移動手段が同じなだけで目的は変わってくる。そちらの決定にとやかく言うつもりはないが…些か人数が少なくないか? 船仕事にオレ達を当てにされると困る。戦闘以外は門外漢なんだ」
「大丈夫だ。アンタたちにそんな負担は強いらないさ。こちらにも用意がある」
ジェルデはそう言ってツカツカと船室の窓の方へ歩いていった。そして窓の外の景色を指さしながら言った。
「見えるか? あれをこの船に積み込む」
「アレは…?」
オレ自身も初めて見る代物だった。
遠目には一瞬馬車に見えた。中央の鉱石を大きな車輪で挟み込んでいるからだ。ただよく見るとそれは車輪ではなく、巨大な歯車だった。全てが金属製の謎の装置は見た目からして重量感があり、屈強な体つきの男たちが何人も集まって慎重に運んでいる。
「残っていてくれて助かりました」
ジェルデの期待に満ち満ちた声を聴くに、アレが今回ジェルデ達が打ち立てた作戦の要になるものだという事は間違いない。しかしそれが何であるのか知れぬうちは、オレ達はその安心感を共有することができないでいた。
だが、すぐにオテムメトが細くするように種明かしをしてきてくれたので助かった。
「あれはルプギラと呼ばれている装置です」
「ルプギラ?」
「はい。仕掛けはいたって簡単です。中央に固定している緑色の鉱石に魔力を注ぎ込むと、両脇にある歯車が回転します。あれを船尾に取り付けた上で使えば、凪いだ湖ででも大きな推進力が得られます」
そんな説明を聞いている途中、アーコがぼそりと呟いた。
「にしても大げさな機械だな。運んでる連中を見てるとむさ苦しくていけねえや」
「何分、中央の緑色の鉱石が不可思議な品でして…水には浮かぶのに陸に上げるととてつもない重さになってしまうのです。元々備え付けてあった船に乗れれば都合が良かったのですが、そちらは戦火に巻き込まれて半壊してしまい、急ぎこの船につけ直しているので」
「まあいずれにせよ。確かに帆船が風の影響を無視できるというのは大きいな」
「うむ。幸いなことに儂にはトマスが付いてきてくれる。こやつに動力を任せ、儂は操舵を請け負う。『螺旋の大地』なら一日でつく計算だ。ズィアル殿たちにはなるたけ不便は掛けぬつもりだから安心してほしい」
それはありがたい話だ。てっきり十数年前と同じく二、三日は船に揺られるのを覚悟していた。船上での生活は想像以上にストレスになるし、そうでなくとも時間はいくら短縮できたところで困らない。嬉しい誤算と言う奴だった。
「ここから先は移動手段が同じなだけで目的は変わってくる。そちらの決定にとやかく言うつもりはないが…些か人数が少なくないか? 船仕事にオレ達を当てにされると困る。戦闘以外は門外漢なんだ」
「大丈夫だ。アンタたちにそんな負担は強いらないさ。こちらにも用意がある」
ジェルデはそう言ってツカツカと船室の窓の方へ歩いていった。そして窓の外の景色を指さしながら言った。
「見えるか? あれをこの船に積み込む」
「アレは…?」
オレ自身も初めて見る代物だった。
遠目には一瞬馬車に見えた。中央の鉱石を大きな車輪で挟み込んでいるからだ。ただよく見るとそれは車輪ではなく、巨大な歯車だった。全てが金属製の謎の装置は見た目からして重量感があり、屈強な体つきの男たちが何人も集まって慎重に運んでいる。
「残っていてくれて助かりました」
ジェルデの期待に満ち満ちた声を聴くに、アレが今回ジェルデ達が打ち立てた作戦の要になるものだという事は間違いない。しかしそれが何であるのか知れぬうちは、オレ達はその安心感を共有することができないでいた。
だが、すぐにオテムメトが細くするように種明かしをしてきてくれたので助かった。
「あれはルプギラと呼ばれている装置です」
「ルプギラ?」
「はい。仕掛けはいたって簡単です。中央に固定している緑色の鉱石に魔力を注ぎ込むと、両脇にある歯車が回転します。あれを船尾に取り付けた上で使えば、凪いだ湖ででも大きな推進力が得られます」
そんな説明を聞いている途中、アーコがぼそりと呟いた。
「にしても大げさな機械だな。運んでる連中を見てるとむさ苦しくていけねえや」
「何分、中央の緑色の鉱石が不可思議な品でして…水には浮かぶのに陸に上げるととてつもない重さになってしまうのです。元々備え付けてあった船に乗れれば都合が良かったのですが、そちらは戦火に巻き込まれて半壊してしまい、急ぎこの船につけ直しているので」
「まあいずれにせよ。確かに帆船が風の影響を無視できるというのは大きいな」
「うむ。幸いなことに儂にはトマスが付いてきてくれる。こやつに動力を任せ、儂は操舵を請け負う。『螺旋の大地』なら一日でつく計算だ。ズィアル殿たちにはなるたけ不便は掛けぬつもりだから安心してほしい」
それはありがたい話だ。てっきり十数年前と同じく二、三日は船に揺られるのを覚悟していた。船上での生活は想像以上にストレスになるし、そうでなくとも時間はいくら短縮できたところで困らない。嬉しい誤算と言う奴だった。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います
あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。
チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。
さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる!
仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる