244 / 347
Episode4
提案する勇者
しおりを挟む
「このパーティで初めての連携戦闘を試みよう」
「連携戦闘?」
「ああ。全員で力を合わせて敵を倒すという意味だ」
そんな戦闘においては当たり前の事をオレがわざわざ明言したせいで、どういう意味かと小首を傾げた。
「オレ達が今までやってきたのは多数対多数の戦いがほとんどだ。だがこれから先は全員がまとまって一人の敵を相手する必要が出てくる。特に対峙する相手に実力が劣る場合は、ほぼ必須のスタイルになる。姿かたちはそっくりで、能力は下位互換と魔王と戦うためにはお誂え向きの相手だ」
「け、けど連携なんて、そんな簡単にできるものなんですか? 私は足手まといとかに…」
ラスキャブの言う通り、言うは易く行うは難しきものの典型で一朝一夕にどうにかなる代物じゃない。かつてのパーティだって試行錯誤を繰り返して無駄や改良を重ねて形にしていったのだから。
「お前の言う通り簡単にできるものじゃない、普通ならな。だが、オレ達は普通じゃない」
そう。オレ達は条件の段階から他とは一線を画している。
連携戦闘の一番のネックはチームワーク。というよりも、課題はそれを除いて他にない。アイコンタクトやハンドサインを細かく決め、さらに個々の能力や戦闘スタイルから全員の行動を全員が予想しながら戦うというのは精神的な疲労も多く、あらゆる意味でタフにならないと長続きしない。
しかし。
「オレ達は各人がテレパシーで繋がっている。本来必要な意思伝達の訓練を積む必要が皆無だ。それだけなら勿論足りないが、幸いにもお前たち三人はさっき見せた様な見事な連携ができているだろう。それにオレが合わさるだけでいい。ルージュは剣になっているし、アーコの器用さは誰もが知るところ。それだけで熟練したパーティ程とまでは行かなくても、かなりの戦いができるはずだ。後は実践あるのみという事だな」
「中々ハードな実践ですけどね」
「けどアタシ達が揃えば敵なしって事でしょ。やっちゃおうよ、偽魔王なんてさ」
「ああ。前哨戦にはもってこいの相手だ。奴を撃破してしまえば、魔族側の士気は確実に落ちる。その隙をついてルーノズアを脱出するぞ」
オレはすぐさま作戦を頭の中に組み立てた。言葉で伝えると齟齬が生まれたり、言葉が足りずに誤解を与えたりし得る。特にオレは語彙力に自信がないせいで、かつてのパーティでは切れ者であるバトンが細くしてくれることがほとんどだった。
けれども今は細かいニュアンスも含めてオレの頭の中のイメージを文字通り、そっくりそのまま全員に伝えることができる。これが殊の外、オレから精神的なストレスを取り除いてくれたのだった。
「連携戦闘?」
「ああ。全員で力を合わせて敵を倒すという意味だ」
そんな戦闘においては当たり前の事をオレがわざわざ明言したせいで、どういう意味かと小首を傾げた。
「オレ達が今までやってきたのは多数対多数の戦いがほとんどだ。だがこれから先は全員がまとまって一人の敵を相手する必要が出てくる。特に対峙する相手に実力が劣る場合は、ほぼ必須のスタイルになる。姿かたちはそっくりで、能力は下位互換と魔王と戦うためにはお誂え向きの相手だ」
「け、けど連携なんて、そんな簡単にできるものなんですか? 私は足手まといとかに…」
ラスキャブの言う通り、言うは易く行うは難しきものの典型で一朝一夕にどうにかなる代物じゃない。かつてのパーティだって試行錯誤を繰り返して無駄や改良を重ねて形にしていったのだから。
「お前の言う通り簡単にできるものじゃない、普通ならな。だが、オレ達は普通じゃない」
そう。オレ達は条件の段階から他とは一線を画している。
連携戦闘の一番のネックはチームワーク。というよりも、課題はそれを除いて他にない。アイコンタクトやハンドサインを細かく決め、さらに個々の能力や戦闘スタイルから全員の行動を全員が予想しながら戦うというのは精神的な疲労も多く、あらゆる意味でタフにならないと長続きしない。
しかし。
「オレ達は各人がテレパシーで繋がっている。本来必要な意思伝達の訓練を積む必要が皆無だ。それだけなら勿論足りないが、幸いにもお前たち三人はさっき見せた様な見事な連携ができているだろう。それにオレが合わさるだけでいい。ルージュは剣になっているし、アーコの器用さは誰もが知るところ。それだけで熟練したパーティ程とまでは行かなくても、かなりの戦いができるはずだ。後は実践あるのみという事だな」
「中々ハードな実践ですけどね」
「けどアタシ達が揃えば敵なしって事でしょ。やっちゃおうよ、偽魔王なんてさ」
「ああ。前哨戦にはもってこいの相手だ。奴を撃破してしまえば、魔族側の士気は確実に落ちる。その隙をついてルーノズアを脱出するぞ」
オレはすぐさま作戦を頭の中に組み立てた。言葉で伝えると齟齬が生まれたり、言葉が足りずに誤解を与えたりし得る。特にオレは語彙力に自信がないせいで、かつてのパーティでは切れ者であるバトンが細くしてくれることがほとんどだった。
けれども今は細かいニュアンスも含めてオレの頭の中のイメージを文字通り、そっくりそのまま全員に伝えることができる。これが殊の外、オレから精神的なストレスを取り除いてくれたのだった。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります
ねこ鍋
ファンタジー
光の勇者として幼い頃から横暴の限りを尽くしてきたエリー。荷物持ちの俺は奴隷のように扱われていたが、それでも彼女の力になれるのだからとガマンしてきた。しかしある日、エリーの気まぐれで俺は命を落としてしまう。
その後、勇者の力で復活させられたが、それを見ていた女神様がついに愛想を尽かし、エリーから勇者の資格を剥奪してしまった。
世界最強の勇者から、一転して世界最弱の無能冒険者に成り下がったエリー。このままでは死んでしまうと怯えるエリーに、俺はこう提案した。
「俺と奴隷契約を結ぶなら助けてやろう」
こうして横暴幼馴染を奴隷にした俺は、さらに<奴隷化>という伝説のスキルが発現していたことも発覚する。これは相手を屈服させれば勇者でも魔王でも奴隷にできる最強スキル。しかも奴隷と仲良くなるほど俺も奴隷も強くなるため、エリーを愛しまくっていたらエリーも俺が好きだと発覚した。
これは奴隷にした勇者を愛しまくり、やがて嫁にするまでの物語。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる