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Episode2
叱る剣
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ようやく状況を飲み込み、体勢も立て直せたオレ達は再び崖を登りラスキャブとピオンスコの元へ駆けつける。ルージュも剣から人の姿に戻っていた、自分の足で駆けつけたいほど気持ちが急いているんだろう。オレも同じだったから、よく分かった。
ラスキャブに支えらているバズバは、やがて溺れた者が息を吹き返すように意識を取り戻した。それでも肩で息をして曖昧に視線を動かしているので自身に何が起こったのかまでは分かっていないようだが、オレは彼が無事であることにひとまず安心した。
達成感溢れる二人の元に辿り着くなり、ルージュは烈火の如く怒り出した。実際のルージュの心情はオレの予想とは少しずれていたらしい。その場の全員が、ルージュの様子に大なり小なり驚いてしまった。
「この愚か者どもっ! 何を考えておるのだっ」
「ひぃっ」
ラスキャブの短い悲鳴が聞こえる。オレはオレで声を荒げるルージュに驚いた。冷酷に怒ることはあっても、火が付いたように怒りを露わにするルージュが意外だったからだ。
そんな様子にピオンスコはラスキャブを庇うように前に出て弁明してくる。
「違うんだよ。アタシ達はアイツの倒し方を知ってたんだ。『螺旋の大地』で偶に見かけてたから」
「ピオンスコ。お前があのスピリッタメーバの事を熟知し、尾の毒が有効だと知っていた事は動きを見れば分かる」
「え、そうなの?」
「当たり前だ。不安要素のある者の動きではない。明確な確信があればこその行動だった」
「じゃあ、何で・・・」
自分とラスキャブは怒られているのだろう。と、そう顔に出ていた。ルージュは続ける。
「その情報を主に報告もせず、勝手に動いたから責めているのだ」
「でも、アイツの名前がスピリッタメーバだって知らなくて・・・姿が見えてピンときたから」
「ならば尚更だ。我らが協力すれば、アレを倒せる確率はさらに上がったし、危険もより確実に回避できた。現にお前は躊躇いなく動けたかもしれないが、ラスキャブは探り探りの動きだったぞ。二人のポテンシャルと運が良かったに過ぎん。戦いとは結果がこそが全てだが、勝てれば何でもいいという訳ではないのだ」
「ご、ごめんなさい・・・」
素直に謝った二人を見て、ルージュは目くばせをしてから身を引いた。
そこでオレは気が付いた。確かに二人の行動は結果としてうまく行ったから良かったものの、一パーティの戦いとしては決して褒められたものではない。下手に賞してしまっては今後も独自で判断して動くかもしれない。
パーティでの連携に不慣れな二人にはそれを諭すために、誰かが二人に敬遠されるのを覚悟して嫌な役を買って出なければならない。ルージュはそれを率先してやってくれた。オレに目配せをしたのは、ムチの後には飴をくれてやれと言う意味だろう。単独行動は確かに軽率だったが、スピリッタメーバを倒し、バズバを洗脳から解放できたこともまぎれもない事実なのだから。
オレは二人に近づいて言った。
「だが、スピリッタメーバを討てたのは二人のお陰だ。直接殺す事が出来れば、洗脳された奴も解放されると知っていたんだろう?」
「うん・・・」
「バズバを救う事に執着して、オレもいくつか見誤った。全員のできることや能力も失念するほどにな。だからこそ、さっきのラスキャブみたいに、思ったことや気付いた事は提案してくれ。あの町でも言ったが、オレはお前らを仲間だと思っているんだから」
「は、はい・・・」
ラスキャブはバズバの介抱をオレに任せると、崖から滑り落ちないようにルージュに近づいた。それはピオンスコも同様だ。二人はルージュを見ると、ペコリと頭を下げて謝った。
「ごめんなさい」
「・・・分かればいい」
きつく叱咤した自分にいきなり素直になるとは思っていなかったルージュが、少々同様しながら答えた。するとピオンスコがルージュの懐に飛び込んでギュッとしがみ付いた。
「お、おい。何故抱きつく? 離れんか」
するとラスキャブもおっかなびっくりした様子で、それでもピオンスコに誘われるままルージュに抱きついた。そして三人は足場の悪い中、崖から落ちないように器用にじゃれ合っていた。
ラスキャブに支えらているバズバは、やがて溺れた者が息を吹き返すように意識を取り戻した。それでも肩で息をして曖昧に視線を動かしているので自身に何が起こったのかまでは分かっていないようだが、オレは彼が無事であることにひとまず安心した。
達成感溢れる二人の元に辿り着くなり、ルージュは烈火の如く怒り出した。実際のルージュの心情はオレの予想とは少しずれていたらしい。その場の全員が、ルージュの様子に大なり小なり驚いてしまった。
「この愚か者どもっ! 何を考えておるのだっ」
「ひぃっ」
ラスキャブの短い悲鳴が聞こえる。オレはオレで声を荒げるルージュに驚いた。冷酷に怒ることはあっても、火が付いたように怒りを露わにするルージュが意外だったからだ。
そんな様子にピオンスコはラスキャブを庇うように前に出て弁明してくる。
「違うんだよ。アタシ達はアイツの倒し方を知ってたんだ。『螺旋の大地』で偶に見かけてたから」
「ピオンスコ。お前があのスピリッタメーバの事を熟知し、尾の毒が有効だと知っていた事は動きを見れば分かる」
「え、そうなの?」
「当たり前だ。不安要素のある者の動きではない。明確な確信があればこその行動だった」
「じゃあ、何で・・・」
自分とラスキャブは怒られているのだろう。と、そう顔に出ていた。ルージュは続ける。
「その情報を主に報告もせず、勝手に動いたから責めているのだ」
「でも、アイツの名前がスピリッタメーバだって知らなくて・・・姿が見えてピンときたから」
「ならば尚更だ。我らが協力すれば、アレを倒せる確率はさらに上がったし、危険もより確実に回避できた。現にお前は躊躇いなく動けたかもしれないが、ラスキャブは探り探りの動きだったぞ。二人のポテンシャルと運が良かったに過ぎん。戦いとは結果がこそが全てだが、勝てれば何でもいいという訳ではないのだ」
「ご、ごめんなさい・・・」
素直に謝った二人を見て、ルージュは目くばせをしてから身を引いた。
そこでオレは気が付いた。確かに二人の行動は結果としてうまく行ったから良かったものの、一パーティの戦いとしては決して褒められたものではない。下手に賞してしまっては今後も独自で判断して動くかもしれない。
パーティでの連携に不慣れな二人にはそれを諭すために、誰かが二人に敬遠されるのを覚悟して嫌な役を買って出なければならない。ルージュはそれを率先してやってくれた。オレに目配せをしたのは、ムチの後には飴をくれてやれと言う意味だろう。単独行動は確かに軽率だったが、スピリッタメーバを倒し、バズバを洗脳から解放できたこともまぎれもない事実なのだから。
オレは二人に近づいて言った。
「だが、スピリッタメーバを討てたのは二人のお陰だ。直接殺す事が出来れば、洗脳された奴も解放されると知っていたんだろう?」
「うん・・・」
「バズバを救う事に執着して、オレもいくつか見誤った。全員のできることや能力も失念するほどにな。だからこそ、さっきのラスキャブみたいに、思ったことや気付いた事は提案してくれ。あの町でも言ったが、オレはお前らを仲間だと思っているんだから」
「は、はい・・・」
ラスキャブはバズバの介抱をオレに任せると、崖から滑り落ちないようにルージュに近づいた。それはピオンスコも同様だ。二人はルージュを見ると、ペコリと頭を下げて謝った。
「ごめんなさい」
「・・・分かればいい」
きつく叱咤した自分にいきなり素直になるとは思っていなかったルージュが、少々同様しながら答えた。するとピオンスコがルージュの懐に飛び込んでギュッとしがみ付いた。
「お、おい。何故抱きつく? 離れんか」
するとラスキャブもおっかなびっくりした様子で、それでもピオンスコに誘われるままルージュに抱きついた。そして三人は足場の悪い中、崖から落ちないように器用にじゃれ合っていた。
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