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Episode2
握りしめる勇者
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『果敢な一撃』の伝達が早かったのか、それともアーコ達の足が速いのか。いずれにしても、すぐに合流が叶ったのは幸いだった。
「おいおい、何事だよ。お前らが揃って俺達を呼ぶって」
「マズイことになった。スピリッタメーバがいる」
「はあ? んな上級の魔獣がこんなところにいるわけ・・・」
アーコは言いかけた言葉を飲み込んだ。心を読んだか、オレの顔で察したのか。どちらにせよ冗談や見間違えの類ではないのだと理解したのだ。
「・・・マジみたいだな」
「ああ。しかも『果敢な一撃』のバズバが捕まった」
オレがそう告げると、今一つピンと来ていないラスキャブとピオンスコが尋ねてくる。
「あ、あの。スピリッタメーバって、なんですか?」
ラスキャブはともかくピオンスコが知らないのは意外だった。が、応戦する可能性があるので、その特徴や危険度を手短に言って聞かせる。その上で、オレは崖の上に控えているレイダァ達を指差して言った。
「眼を凝らしてみてみろ。頭から微かに糸のようなものがでているだろう? アレがスピリッタメーバの触手だ。ここから先は360℃に気を配って、アレに触れない事を最優先に行動しろ、いいな?」
「は、はい!」
ラスキャブは気を引き締めた様な返事をしたが、ピオンスコは様子がおかしかった。生返事を返してきただけでなく、スピリッタメーバに捕まったレイダァ達を見て、「んー?」と唸りながら首を傾げている。
だが、今はそんな事を問いただしている暇はない。
「ルージュ、アーコ。スピリッタメーバに捕まった奴を解放する手立てはないか?」
「いや、少なくとも俺は知らない」
「私もだ。私自身、あの魔獣を見たのは初めてだからな」
オレは歯噛みした。希望が一つ一つ、風船に針を刺すかのように潰えていく感覚が頭の中を走る。
「なら精神感応系の術師として、方法は思い付かないか?」
縋るような質問に二人は押し黙ってしまう。焦っているのも、望みが薄いのも自分で分かっている。だが、バズバを見殺しにする覚悟を決めるには、まだ足掻いていたかったのだ。
そんなオレの心を模したかのように、おどおどと不安そうに声を出したのがラスキャブだった。
「あ、あの」
「どうした?」
「そのスピリッタメーバの触手って、前にアーコさんがザートレさんに掛けてた魔法と似てると思うんですが」
「アーコがオレに掛けていた魔法?」
「あ! 『不忠の糸』か」
「そう。それです!」
オレは一向に話が見えないでいる。何のことかと尋ねると、アーコが飄々とした様子で教えてくれた。
「お前を狼に変えた時に使ってた洗脳魔法だ。下僕にしてやろうと思ってな。あの時は、すでにまともに意識がなかったから覚えてないだろ」
「ああ・・・なら、その時はどうなったんだ?」
すると今度はルージュが麗々とした笑みを浮かべた。
「その不忠の糸を私が斬ったのだ・・・なるほど、ラスキャブの話が分かった。私がピクシーズから授かった力をうっかり忘却していたな」
「そうか!」
自虐したルージュに便乗し、オレも失念したことを自責する。
ルージュには『触れないものに触る』という能力が与えられているのだ。これを併用すれば、触れないモノを斬ることも可能のはず。
オレ自身に記憶はないが、かつて洗脳された者を解放したという事実は残っている。それだけで試す価値は十分にある。
「ルージュ、剣に戻れ」
「心得た」
淡い光と共に、ルージュはすぐさま一振りの剣となる。
剣の柄を握りしめると、体中に熱い血液が流れていくのが分かった。ルージュに封じられた力を完全に取り戻し、その上で魔剣を振るうのは今回が事実上初めてになる。それも相手がスピリッタメーバとなれば、自然と武者震いが出てきた。
「行くぞ、ルージュ」
「おいおい、何事だよ。お前らが揃って俺達を呼ぶって」
「マズイことになった。スピリッタメーバがいる」
「はあ? んな上級の魔獣がこんなところにいるわけ・・・」
アーコは言いかけた言葉を飲み込んだ。心を読んだか、オレの顔で察したのか。どちらにせよ冗談や見間違えの類ではないのだと理解したのだ。
「・・・マジみたいだな」
「ああ。しかも『果敢な一撃』のバズバが捕まった」
オレがそう告げると、今一つピンと来ていないラスキャブとピオンスコが尋ねてくる。
「あ、あの。スピリッタメーバって、なんですか?」
ラスキャブはともかくピオンスコが知らないのは意外だった。が、応戦する可能性があるので、その特徴や危険度を手短に言って聞かせる。その上で、オレは崖の上に控えているレイダァ達を指差して言った。
「眼を凝らしてみてみろ。頭から微かに糸のようなものがでているだろう? アレがスピリッタメーバの触手だ。ここから先は360℃に気を配って、アレに触れない事を最優先に行動しろ、いいな?」
「は、はい!」
ラスキャブは気を引き締めた様な返事をしたが、ピオンスコは様子がおかしかった。生返事を返してきただけでなく、スピリッタメーバに捕まったレイダァ達を見て、「んー?」と唸りながら首を傾げている。
だが、今はそんな事を問いただしている暇はない。
「ルージュ、アーコ。スピリッタメーバに捕まった奴を解放する手立てはないか?」
「いや、少なくとも俺は知らない」
「私もだ。私自身、あの魔獣を見たのは初めてだからな」
オレは歯噛みした。希望が一つ一つ、風船に針を刺すかのように潰えていく感覚が頭の中を走る。
「なら精神感応系の術師として、方法は思い付かないか?」
縋るような質問に二人は押し黙ってしまう。焦っているのも、望みが薄いのも自分で分かっている。だが、バズバを見殺しにする覚悟を決めるには、まだ足掻いていたかったのだ。
そんなオレの心を模したかのように、おどおどと不安そうに声を出したのがラスキャブだった。
「あ、あの」
「どうした?」
「そのスピリッタメーバの触手って、前にアーコさんがザートレさんに掛けてた魔法と似てると思うんですが」
「アーコがオレに掛けていた魔法?」
「あ! 『不忠の糸』か」
「そう。それです!」
オレは一向に話が見えないでいる。何のことかと尋ねると、アーコが飄々とした様子で教えてくれた。
「お前を狼に変えた時に使ってた洗脳魔法だ。下僕にしてやろうと思ってな。あの時は、すでにまともに意識がなかったから覚えてないだろ」
「ああ・・・なら、その時はどうなったんだ?」
すると今度はルージュが麗々とした笑みを浮かべた。
「その不忠の糸を私が斬ったのだ・・・なるほど、ラスキャブの話が分かった。私がピクシーズから授かった力をうっかり忘却していたな」
「そうか!」
自虐したルージュに便乗し、オレも失念したことを自責する。
ルージュには『触れないものに触る』という能力が与えられているのだ。これを併用すれば、触れないモノを斬ることも可能のはず。
オレ自身に記憶はないが、かつて洗脳された者を解放したという事実は残っている。それだけで試す価値は十分にある。
「ルージュ、剣に戻れ」
「心得た」
淡い光と共に、ルージュはすぐさま一振りの剣となる。
剣の柄を握りしめると、体中に熱い血液が流れていくのが分かった。ルージュに封じられた力を完全に取り戻し、その上で魔剣を振るうのは今回が事実上初めてになる。それも相手がスピリッタメーバとなれば、自然と武者震いが出てきた。
「行くぞ、ルージュ」
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